出版社を探す

地域共生の開発福祉

制度アプローチを越えて

編:日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター

紙版

内容紹介

人口減少が現実のものとなり、地方消滅論が現実味を帯びて迫ってきている現在、地方が再生する方法はないのか。本書は、従来途上国で行われてきた「開発」という視点と福祉を融合し、既存の制度や支配的な市場に依拠しない問題解決の方法を提案する。そして既存の福祉制度が機能しなくなった領域で、すでにある資源(人びとの関係、地域の産業など)を再生させながら改めて支え合う仕組みづくりを、具体的な事例を元に探っていく。

目次

はじめに


 第Ⅰ部 開発福祉とは何か

第1章 開発福祉への接近、開発福祉による接近(平野隆之)
 1 開発福祉への接近
 2 福祉分野に開発福祉が求められる背景・理由
 3 開発福祉の構成要素
 4 開発福祉による接近

第2章 開発福祉の視点(穂坂光彦)
 1 自由と参加の福祉へ
 2 制度のギャップと開発福祉
 3 方法としての「中間的社会空間」
 4 開発福祉の枠組み


 第Ⅱ部 集落福祉への挑戦——高知県にみる生産と福祉を結ぶ実践

第3章 地域をつなげる重層的な拠点の形成——土佐町社会福祉協議会による集落支援(山首尚子・上田大)
 1 地域の拠点づくり・つぶやき拾い・つぶやき返し
 2 福祉実践を媒介とした集落再生の例——南川地区の取り組み
 3 集落支援の横断的チーム体制づくり

第4章 集落が生き続けるためのしくみづくり——土佐町の生産と福祉を結ぶ集落活動センター(雨森孝悦)
 1 中山間地域対策の要としての集落活動センター
 2 なぜ石原地区につくられることになったのか
 3 設立に至る意思決定のプロセス
 4 成果、課題および展望

第5章 社会参加をすすめ地域課題を解決する「しごとづくり」——中土佐町の包括的な取り組み(小木曽早苗)
 1 高知県における地域福祉推進モデルと中土佐町の独自モデル
 2 地域アクションプランと地域支え合い活動への発展
 3 社会参加をすすめ地域課題を解決するしごとづくりへの模索
 4 見出される新たな専門性

第6章 「考える農民」としての暮らしを支える多機能ワーク——生活改善と庭先集荷から学ぶ(小國和子)
 1 共通の視点——数値化しづらい「態度の変化」へのこだわり
 2 農村支援とは「主体的な生」を支えること
 3 「自ら考え続けられる暮らし」の支援に向けて 
 4 プロセスにおける創造の豊かさ


 第Ⅲ部 福祉とまちづくりの融合——地域で福祉をつくる方法と人材

第7章 「たつせがある」まちづくりの推進——長久手市(吉村輝彦)
 1 長久手市におけるまちづくりの政策展開
 2 長久手市における取り組み事例
 3 市民の主体性を育み「自分ごと」のまちづくりを展開 

第8章 まちづくり住民組織による福祉の地域展開——高浜市(朴兪美・平野隆之)
 1 市政策としての「福祉でまちづくり」の展開 
 2 まちづくり協議会による「福祉でまちづくり」の可能性——南部の取り組み
 3 まちづくり協議会による開発福祉の条件
 4 「福祉でまちづくり」の展望——選別主義を超えるまちづくり型福祉の開発

 〔コラム1〕 「健康自生地」を核にした生涯現役のまちづくりの推進——高浜市における取り組み事例から(吉村輝彦)


第9章 コミュニティマネジメントによる福祉とまちづくりの融合|——韓国城東〈そんどん〉住民会と箕面市北芝(朴兪美)
 1 実践交流に基づいた2事例の相対化
 2 城東住民会の展開——貧民運動に根ざした「地域疎通」のまちづくりへ
 3 北芝の展開——部落解放運動に根ざした地域セーフティネット構築へ
 4 2事例の相対化からみるコミュニティマネジメント
 5 中間組織によるコミュニティマネジメント

第10章 被災地発の開発福祉の実践—「福祉開発マネジャー」のリアリティ(平野隆之・穂坂光彦)
 1 福祉開発マネジャー養成への挑戦
 2 福祉開発マネジャーのリアリティ——CLCによる被災地支援の展開
 3 被災地発の開発福祉の普及——生活支援コーディネーター養成への展開


 第Ⅳ部 共生空間の創造——当事者性を地域へと開く開発福祉

第11章 「しごと開発」からの地域づくり——高島市「ぎょうれつ本舗」(田村きよ美・井岡仁志・朴兪美)
 1 移動商店街「ぎょうれつ本舗」——障害のある人たちの働きを通した地域支援
 2 「ぎょうれつ本舗」の活動にみる地域福祉実践と社会福祉協議会の役割
 3 地域的展開を求める開発福祉の持続可能性

第12章 地域共生社会をめざす持続的な開発実践——西宮市社会福祉協議会 青葉園(藤井博志・清水明彦)
 1 青葉園の成立と理念
 2 かけがえのない主体と主体が向き合うことからはじまる地域自立生活実践
 3 本人中心の計画から障害福祉計画に架橋する施策推進ネットワーク
 4 共生のまちづくり

第13章 地域共生に向かう作業療法——ニカラグアと福島の経験(田中紗和子)
 1 作業療法と障害の社会モデル
 2 ニカラグアの障害児支援施設にて
 3 福島県二本松市の仮設住宅集会所にて
 4 ニカラグアと福島の比較から

 〔コラム2〕 障害平等研修がもたらす地域の変容——東京都大田区での取り組みから(久野研二・曽田夏記)

第14章 共生空間をひろげる共生型ケア拠点の政策化——富山・熊本・高知三県の試み(平野隆之)
 1 共生型ケア拠点の政策化
 2 共生型ケア拠点=多機能型福祉拠点のモデル
 3 共生型ケア拠点にみる開発福祉の視点


おわりに
索 引

ISBN:9784623080076
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:244ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2017年03月
発売日:2017年03月30日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS