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18歳で学ぶ哲学的リアル

「常識」の解剖学

著:大橋 基

紙版

内容紹介

私たちが経験する「生きづらさ」や「決めがたさ」を糸口として、実際に起こった事件や私たちが遭遇しうる事例のなかに哲学的な「論点」を見出し、哲学者の「考え方」をわかりやすく平易に紹介。試行錯誤する場として「自分なりに考える」コーナーを設け、考えを身につけることもできる。哲学をはじめて学ぶ若い人びとに、「常識」に含まれる道徳観や価値観を見直し、哲学の基礎知識や推論能力を習得させる。

目次

凡  例

序 章 大学には「非日常」が隠れている


 第Ⅰ部 もう「アイデンティティ」はいらない?

第1章 人生には「失われた1日」がある 
 1 「君の気持ちは分かる」と言えるヤツほど信頼できない
 2 「私が何ものか」証明できるのは「身体」か「記憶」か
 3 「相互承認」に基づいて成立する「アイデンティティ」
   自分なりに考える:「ハゲワシと少女」は正当化可能か?

第2章 「話せば分かる」では分からない
 1 「自己紹介」って,いったい何を話せばいいんだろう?
 2 日本の「風土」が生んだ穏やかな連帯感と狡猾な処世術
 3 「罪の文化」のなかに「恥の文化」は隠れていないのか
   自分なりに考える:「罪」でなくても「恥」になるのは?

第3章 もろく曖昧な「善/悪」の境界線
 1 身に覚えがないのに「殺人犯」として裁かれたとしたら
 2 「平凡な役人」が「法外な犯罪」に加担したのはなぜか
 3 「善/悪」の道徳的な区別などフィクションにすぎない
   自分なりに考える:「ネット民」はいつも「上から目線」


 第Ⅱ部 「恋」に悩むより「平穏無事」がいい?

第4章 「毛づくろい」なら猫でもできる
 1 自分の「身体」を取り戻すための武器としての「服飾」
 2 「精神が身体を操る」という「常識」はどこからきたか
 3 「理性」に従う社会生活を通して生み出された「他者」
   自分なりに考える:「洋服選び」のとき何を考慮するか?

第5章 好きだの嫌いだの,愛だの恋だの
 1 きっと「哲学者」より私たちの方が「愛」を知っている
 2 「恋愛」は「夫婦愛」を通して「家族愛」へと発展する
 3 「愛」を育むには,「人格への尊敬」と「愛する技術」
  自分なりに考える:あなたの「胸がときめく」条件は何?

第6章 「優しい嘘」は残酷な傷跡を残す
 1 「禁断の恋」に落ちたままで「良妻賢母」を続けた過去
 2 「虚言の禁止」という義務は「道徳法則」とみなせるか
 3 「正直」だからこそ,逆に「嘘つき」になることもある
   自分なりに考える:「暴力の禁止」は「絶対的義務」か?


 第Ⅲ部 今はまだ「死」について実感できない?

第7章 孤独な僕らの「メメント・モリ」
 1 安堵と不安が絶え間なく交錯する密室としての「病室」
 2 医学は進歩し続け,その結果,「治せない病」が残った
 3 「無縁社会」のなかで「死」を迎える単身者の「孤独」
   自分なりに考える:延命を停止できる「家族」とは誰か?

第8章 「不便」が「不幸」とは限らない
 1 生命倫理学者に告ぐ,「人殺しに加担するのはやめろ」
 2 子供の生死を左右する「大人の事情」をのぞいてみよう
 3 親が「障害児を避けたい」と願うのは「偏見」なのか?
   自分なりに考える:「同性の夫婦」は「親」になれるか?

第9章 「リビング・デッド」のつくり方
 1 その人生は他人に奉仕すること以外何も許されていない
 2 「無慈悲で残酷な世界」の中で繰り広げられる試行錯誤
 3 自分の身体が「臓器の貯蔵庫」にされることへの違和感
   自分なりに考える:ドーピングと義肢使用との境界線は?


 第Ⅳ部 世界を正すのは「権力」か「抵抗」か?

第10章 「正義の天秤」の設計図を紐解く
 1 「先生」は「職業に貴賎はない」と言い張るのだけれど
 2 「自由主義社会」が前提する「平等な競争」という虚構
 3 万人を「平等」にする「正義」なんて実現できるのか?
   自分なりに考える:奨学金は学生を「平等」にするか?

第11章 「リヴァイアサン」は目覚めかけ
 1 「善良な市民」から「潜在犯」を区別する基準は何か?
 2 「疑惑」や「恐怖」を「安心」に変換する「管理社会」
 3 何をすべきか分からないけど,「異文化共生」には賛成
   自分なりに考える:「安全」なら「監視」されていい?

第12章 「復讐の連鎖」に楔は打てるか?
 1 「テロル」と「戦争」の区別が失われかけた「新世紀」
 2 「永遠平和」の理想から「正義の戦争」という妥協策へ
 3 「戦争」の「正/不正」を判断すべきは「道徳」である
   自分なりに考える:テロリストが語る「不都合な真実」


 第Ⅴ部 ゲリラ豪雨対策に「こまめな節電」を?

第13章 人間が「精霊」と共に暮らす条件
 1 今夜もまた「名前を返せ」と「妖怪たち」がやって来る
 2 「自然」のなかで「自然」を支配しようとした「動物」
 3 「人類」のためなら「動物」を犠牲にしても仕方ない?
   自分なりに考える:イルカ漁は「日本の食文化」なの?

第14章 「ディストピアの救世主」の資格
 1 「過去」を書き換えて「未来」を救う「孤独な観測者」
 2 「凍結保存」という「時限装置」を起動させない予防策
 3 2030年,「子供たち」が笑い合うために何が不可欠か
   自分なりに考える:「環境保護法」における奇妙な翻案

第15章 「人間」という厄介な「生き物」
 1 ベルリン上空高く,「天使」はおのれの「無力」を嘆く
 2 殺人が「罪悪」であることすら,人間は忘れかけている
 3 「善/悪」を決め難い時代に「対話」を継続するために
   自分なりに考える:「ネット世代」のアイデンティティ



終 章 「教室」という「異空間」の闘い

あとがき
用語集
索引

著者略歴

著:大橋 基
2017年4月現在法政大学文学部・社会学部兼任講師

ISBN:9784623079377
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:306ページ
定価:2800円(本体)
発売日:2017年04月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDX