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アメリカにおけるタバコ戦争の軌跡

文化と健康をめぐる論争

著:岡本 勝

紙版

内容紹介

タバコは、イングランド人入植直後から現在にいたるまでアメリカ合衆国の経済を支えてきたにもかかわらず、喫煙は次第に否定的に見られるようになった。
本書は、19世紀末にすでにあった反紙巻きタバコ運動から、この形態のタバコが大衆消費社会を象徴するようになった経緯、さらに広告が果たした役割まで、これまで十分に語られることのなかった論点を取り上げ、「タバコ戦争」とも呼ばれるようになる歴史的展開を詳述する。

目次

序 章 アメリカ・タバコ戦争の概観
    ——主要先行研究との関連で

第1章 初期反紙巻きタバコ運動
    ——社会文化的秩序の維持をめざして
 はじめに
 1 初期の反タバコ言説
 2 紙巻きタバコと「アメリカン・タバコ会社」
 3 反紙巻きタバコ運動のはじまり
 4 特定の社会集団を標的にした紙巻きタバコ規制
 5 シガレット・プロヒビションの成立とその執行状況
 6 第一次世界大戦後の州CP法
 おわりに

第2章 女性によるタバコ使用
 はじめに
 1 「ヴィクトリア時代の道徳観」と「領域」
 2 喫煙の広がりとそれへの対応
 3 第一次世界大戦と紙巻きタバコ
 4 男女平等の象徴としての喫煙
 おわりに

第3章 紙巻きタバコの流行と広告
    ——大衆消費社会の出現を背景として
 はじめに
 1 初期の紙巻きタバコ広告
 2 紙巻きタバコの全国ブランド化
 3 新しいメディアによるタバコ広告
 4 女性をターゲットにした広告
 おわりに

第4章 健康に関するタバコ言説の変遷
 はじめに
 1 初期タバコ不健康言説
 2 肺ガンとの関係
 3 第二次世界大戦後の研究成果
 4 1964年の「公衆衛生局医務長官諮問委員会報告書」
 おわりに

第5章 「連邦紙巻きタバコ表示広告法」の成立をめぐる攻防
 はじめに
 1 プラザホテル会合への経緯
 2 「タバコ産業調査研究委員会」の設立とその活動
 3 「連邦取引委員会」と議会での公聴会
 4 紙巻きタバコ業界の対応
 5 「連邦紙巻きタバコ表示広告法」の成立とその問題点
 おわりに

第6章 「現代タバコ戦争」の転換点としての1980年代
     ——ニコチンの依存性と受動喫煙の危険性
 はじめに
 1 「自発的で自由な行為」としての喫煙
 2 ニコチンの依存性
 3 迷惑行為としての喫煙
 4 受動喫煙と肺ガンの関係
 おわりに

第7章 喫煙の政治問題化
    ——タバコ増税と「屋内清浄空気法」
 はじめに
 1 タバコ増税政策
 2 住民投票による州タバコ税の引きあげ
 3 連邦レベルでの喫煙規制
 4 州レベルの「屋内清浄空気法」
 5 自治体レベルの「屋内清浄空気法」
 おわりに

第8章 「現代タバコ戦争」における個人訴訟
 はじめに
 1 「第一波」のタバコ訴訟
 2 攻めの被告側と守りの原告側
 3 「第二波」を象徴するチポロン訴訟
 4 原告勝訴の事例
 おわりに

第9章 集団訴訟と医療費求償訴訟
 はじめに
 1 「第三波」のタバコ訴訟としての集団訴訟
 2 州政府による医療費求償訴訟
 3 1997年6月の「包括的和解合意」
 4 「マケイン法案」の不成立と「一括和解合意」の成立
 おわりに

終 章 生きのこりをかけた戦い

あとがき
主要参考文献/索引

著者略歴

著:岡本 勝
2016年5月現在広島大学大学院総合科学研究科教授

ISBN:9784623075737
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:444ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2016年05月
発売日:2016年05月18日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC