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福祉+α 9

正義

編著:後藤 玲子

紙版

内容紹介

本書は、不正義の視点を通して、福祉国家の忘れものを問う。その福祉国家の忘れものから、法律、社会保障制度そして、個人などにまつわる現代正義論を俯瞰する。ロールズの「無知のヴェール」を乗り越え、センのいう社会的選択と不偏性による「ケイパビリティ・アプローチ」によって捕捉する試みである。

目次

はしがき

総 論 福祉国家の忘れもの――契機と敬意(後藤玲子)
 1 協力の契機
 2 現代福祉国家とリベラリズム
 3 政治的リベラリズムの理論化と人々の規範意識
 4 ロールズ正義理論の再編と社会的協同システムの拡張
 5 公共的相互性
 6 新たな社会的協同に向けて
 7 各章の解説(齊藤 拓)

第1章 正義の不穏(後藤 隆)
 1 有限生身実体と正義
 2 正義のコード化
 3 ドミナント・ストーリー、そしてスモール・ストーリー
 4 結果の説明的再構成

第2章 家族の法と個人の保護(水野紀子)
 1 日本家族法の無力さ
 2 イエ制度と「家」制度
 3 家族とケア労働
 4 家族の多様化と家族の法的保護

第3章 不利な立場の人々の人権(横藤田 誠)
 1 希望としての「人権」
 2 不利な立場の人々にとっての人権・自由の諸相
 3 「自由」の制約と「保護」――精神障害者の治療強制をめぐって
 4 不利な立場の人々の視線から見えるもの

第4章 住所・住民登録・居住(長谷川貴陽史)
 1 住所及び住民登録の意義――法制度の概要
 2 住所・住民登録と社会的排除――社会システム理論からの考察
 3 日本の事例――公園内テント所在地は住所になるか
 4 米国の有権者登録に係る判例
 5 近年のホームレスの現状と排除の動向
 6 対 応――安定した居住環境の提供へ向けて

第5章 自尊の理念(長谷川 晃)
 1 社会秩序の目的
 2 自尊の理念とその現代的意義
 3 二つの構成的批判――「潜在能力」と「イマジナリーな領域」
 4 自尊・福祉・法

第6章 差別・貧困と障害者の権利(内野正幸)
 1 法律と憲法
 2 憲法と正義論の関係
 3 平等の捉え方
 4 障害者問題へのアプローチ
 5 障害児の教育を受ける権利
 6 貧困との関係

第7章 人権としての生存と自立(秋元美世)
 1 生存に対する権利としての基本的人権
 2 市民法と自立
 3 社会法と自立
 4 自立概念の展開
 5 福祉の評価とその視点――アマルティア・センの議論

第8章 社会保険制度の効率と公平(小塩隆士)
 1 リスク分散の装置としての社会保険
 2 社会保険はなぜ「社会」保険なのか
 3 社会保険と税とはどこが違うのか
 4 問い直すべき社会保険の役割

第9章 借りて生きる福祉の構想(角崎洋平)
 1 貸付と福祉
 2 給付vs 貸付
 3 フローの生活保障とストックの生活保障
 4 資本と負債
 5 負債が福祉につながるために

第10章 フリーライディングする福祉制度?(宮崎理枝)
 1 変わりゆく福祉の境界とメンバーシップ
 2 越境者(移民)への政策作用
 3 イタリアにおける移民介護労働と制度施行の実態
 4 フリーライディングされる移民介護労働者?
 5 福祉的正義と自由――日本とイタリアの対照性

第11章 死刑制度と正義(櫻井悟史)
 1 死刑の担い手問題
 2 死刑廃止論の立場
 3 死刑と正義
 4 死刑存廃論と死刑肯定/否定論

第12章 運の平等と個人の責任(井上 彰)
 1 運の平等論のバックグラウンド
 2 運の平等論の端緒――ロールズとドゥオーキン
 3 運の平等論の本格的展開
 4 運の平等論批判
 5 運の平等論からの反論

第13章 いかにして未来の他者と連帯するのか?(大澤真幸)
 1 未来の他者――互酬性の限界?
 2 古代ローマ/現代日本の風呂
 3 余剰的同一性
 4 黙示録の合理的活用

文献案内
索  引

ISBN:9784623075720
出版社:ミネルヴァ書房
判型:B5
ページ数:204ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2016年04月
発売日:2016年04月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS