政府はどこまで医療に介入すべきか
イギリス医療・介護政策と公私ミックスの展望
著:堀 真奈美
内容紹介
NHS制度改革の来歴と最新状況を検証する
目次
はじめに
第Ⅰ部 イギリス医療保障の基本的枠組みと成り立ち
第1章 NHS制度の基本的特徴
1 NHS制度の概要
2 ゲートキーパー、ゲートオープナーとしてのGP
3 医療機能の分化と連携
4 NHS傘下病院主流の医療提供体制
5 自律的な専門職集団としての医師
Column イギリスの税金
第2章 NHS誕生小史
1 公立病院とチャリティ病院
2 GPのルーツと国民保険法の成立
3 社会保障制度の体系的整備と福祉国家の誕生
4 厳しい財政運営と待機者問題
Column 社会保障、福祉という用語の使用法
国民保険と保険料
第3章 サッチャー改革――内部市場の創設
1 サッチャー政権の誕生
2 購入機能と提供機能の分離
Column サッチャー政権のコミュニティケア改革
第4章 ブレア改革――NHSの現代化
1 ブレア政権の誕生
2 維持された内部市場の枠組みと組織・機構改革
3 予算の大幅な拡大
4 NHSの現代化に向けた改革
5 改革のインパクト
Column 看護師の資格と収入
医師の確保:外国人医師と女性医師の増加
第5章 ブラウン改革――量から質へ
1 ブラウン政権の誕生
2 ダルジ報告
3 幻のナショナルケアサービス構想
Column ケア・プログラム・アプローチ
第Ⅱ部 変わりゆくNHS:キャメロン改革の行方
第6章 キャメロン政権の組織・機構改革
1 キャメロン政権の誕生
2 大規模な組織・機構改革
3 モニターの権限・機能強化
4 NHSコミッショニング委員会の設置
5 CCGの創設
6 地方自治体への権限移譲
7 組織・機構改革で何が変わるのか
8 従来路線上の改革
Column キャメロン政権の歳出計画の見直し
福祉改革:ユニバーサル・クレジット
緊急入院の防止と統合ケアの推進
第7章 公衆衛生における地方分権
1 もう一つの組織・機構改革
2 公衆衛生の責任主体としての地方自治体
3 健康・福祉向上委員会の活動
4 改革をどのように評価するか
Column イギリスの喫煙対策
第8章 キャメロン政権のNHS組織・機構改革の賛否
1 反対派の見解
2 賛成派の見解
3 GPのジレンマ
4 CCG創設への不安と期待
第9章 NHSスキャンダルと改革
1 不祥事報道と厳しい世論
2 スタフォード病院における不祥事
3 スタフォード病院事件の余波
4 組織の問題か、制度の問題か
Column イギリスの高齢者とエイジズム
第Ⅲ部 NHSにおける公私の境界
第10章 NHSの給付と適正化
1 NHSの給付範囲の設定
2 給付の適正化
第11章 NHSと民間保険の役割分担
1 NHSと私費医療の相違
2 民間医療保険のタイプ
3 民間医療保険の役割
4 NHS改革と民間医療保険の関係性
第12章 NHS傘下病院の経営主体の変遷
1 NHSトラストからファンデーショントラストへ
2 移行できない病院
第Ⅳ部 診療報酬・規制による政策誘導
第13章 診療報酬支払方式による政策誘導
1 経済的なインセンティブの付与
2 プライマリケア(GP診療所)への診療報酬
3 二次医療(病院)への診療報酬
Column P4Pの有効性
第14章 医薬品市場に対する規制と産業促進
1 規制産業としての医薬品産業
2 MHRAによる薬事承認
3 NICEによる償還
4 先発医薬品への自主価格規制
5 後発医薬品に対するドラッグ・タリフ
6 医薬品規制の方向性
第Ⅴ部 高齢者介護と終末期ケアに関する政策
第15章 ケア改革
1 財源、運営主体の異なる医療と介護
2 介護制度改革の必要性
3 ディルノット報告
4 ケア法の概要
5 残された課題
Column エイジ・コンサーン・ノーフォークの取り組み
第16章 認知症国家戦略
1 認知症高齢者の対策
2 「認知症に対する首相の挑戦」
3 ケアのコストと質
第17章 終末期ケアとリビングウィル
1 タブー視される「死」
2 終末期ケア戦略
3 日常生活を営む場所での死の増加
4 緩和ケアと終末期ケア
5 臨床現場における支援ツール
6 終末期ケアの質
第Ⅵ部 バリュー・フォー・マネーとアカウンタビリティ
第18章 英国会計検査院の取り組み
1 英国会計検査院NAOによるVFM調査
2 VFM調査の手順
3 VFM調査の報告と勧告
第19章 オーディット・コミッションの取り組み
1 オーディット・コミッションのVFM検査の方法
2 PbRの監査
Column 国家的不正摘発イニシアティブ
第20章 英国保健省の取り組み
1 保健省の業務
2 ブレア政権時代の業績評価の流れ
3 保健省による政策評価研究
Column 効率化によるコスト節約
第21章 アカウンタビリティの確保をどうすべきか
1 アカウンタビリティの実際
2 アカウンタビリティのモデル
第Ⅶ部 イギリス医療保障をみる視座
第22章 市場指向の改革
1 市場の失敗、政府の失敗
2 マネジド・コンペティション論とは
3 二つの競争
4 スポンサー、保険者の介入
5 内部市場における疑似保険者
6 代理人となるべき主体
Column 医療は公共財か
スコットランドのNHS
ルグランの準市場
第23章 競争原理は機能するのか
1 1990年代における検証
2 2000年代における検証
3 実証研究の限界
第24章 医療保障における公私ミックス
1 福祉多元主義
2 福祉ミックス論
Column ボランタリー・セクターの役割
終 章 イギリス医療保障はどこに向かうのか
1 考察1:時代によって変わるもの、変わらないもの
2 考察2:公私役割のあり方
3 政策的示唆
参考文献一覧
あとがき
索 引
ISBN:9784623074983
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:288ページ
。定価:4000円(本体)
。発行年月日:2016年03月
。発売日:2016年03月20日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MBN。