近代日本メディア人物誌
ジャーナリスト編
編著:土屋 礼子
編著:井川 充雄
内容紹介
メディアは人である。ジャーナリストが時代と向き合い、格闘し、栄光と挫折を積み重ねてきたことで今日のメディアが存在する。本書は、『近代日本メディア人物誌??創始者・経営者編』の続刊であり、日本のメディアの歴史を、時代を代表するジャーナリストたちの活躍から見ていくものである。言論はいかに世の中を動かしてきたか。メディアが多様化し、グローバル化の中でそのあり方を問われている今日にあって、その源流を改めて考え直すことを提言する一冊である。
目次
はしがき
第Ⅰ部 明治期 「言論の自由」をめぐる攻防
第1章 末広鉄腸——言論の自由と輿論政治の理想を求めて
1 新聞記者になるまで
2 新聞記者としての名声と活躍
3 演説家および民権運動家として
4 政治小説の執筆と大同団結運動
5 理想主義者の若すぎる死
第2章 中江兆民——恩賜的民権から恢復的民権へ
1 兆民の言論活動
2 兆民の政治活動
3 兆民が後世に託したこと——『一年有半』
第3章 木下尚江・松本英子——足尾鉱毒事件の解決を目指して
1 新聞記者・教師として
2 足尾鉱毒事件の追及
3 社会主義者・小説家、在米文筆家として
第4章 宮武外骨——古来無類の筆禍者
1 讃岐の凹凸亭
2 操觚者としての出発
3 社会主義と浮世絵
4 20世紀の外骨
第5章 三宅雪嶺——「敵なき記者」として三代の論壇を闊歩
1 「因循なる加賀藩」から東京大学へ
2 「敵なき記者」への歩み
3 雑誌記者として生涯を全うする
第6章 志賀重昂——雑誌『日本人』主筆から政友会代議士へ
1 札幌農学校に学び南洋航海へ
2 雑誌『日本人』の主筆として
3 記者から党人へ
第7章 島田三郎・山路愛山——キリスト教改良主義からジャーナリズムへ
1 クリスチャンとしての出発
2 島田三郎における二つの転機
3 社会を論じるジャーナリズムを目指して
4 キリスト教に目覚めた維新の敗残者
5 人民の歴史とナショナリズムの間で
6 言論による社会改革という理想と限界
第8章 池辺三山——東京朝日新聞を飛躍・発展させたサラリーマン主筆
1 ジャーナリストになるまで
2 ジャーナリストとしての出発
3 東京朝日新聞発展の立役者
第Ⅱ部 大正期 デモクラシーとジャーナリズムの発展
第1章 松崎天民——社会探訪の名手
1 流転の日々
2 大阪での記者時代
3 東京での記者時代
4 風俗・食通ジャーナリストとしての後半生
第2章 村嶋 歸之——「労農記者」と呼ばれたジャーナリスト
1 大阪毎日新聞社への入社
2 賀川豊彦と友愛会
3 再び「ドン底」へ
4 結核への挑戦
第3章 山川 均・山川菊栄・荒畑寒村——社会主義ジャーナリズムの展開
1 初期社会主義と社会主義ジャーナリズム
2 山川均——初期社会主義から労農派への軌跡
3 山川菊栄——社会主義とフェミニズムの論跡
4 荒畑寒村——叛*骨の論陣
第4章 杉村楚人冠——多彩な国際派ジャーナリスト
1 紆余曲折の日々
2 聚星泊時代
3 朝日新聞社の国際派記者として活躍
4 一管の筆に託した半生
第5章 鳥居素川・長谷川如是——閑自主独立の言論を目指した二人のジャーナリスト
1 『日本』時代までの二人——ジャーナリストとしての原点
2 『大阪朝日新聞』時代の二人
3 「独立新聞」の再興の試み
第6章 恩田和子——戦前期を代表する女性記者
1 初期の女性新聞記者として
2 大阪における婦人運動の中心人物に
3 終生新聞記者として
第7章 大正期の女性記者——奥むめおと先達大沢豊子・竹中繁子・小橋三四子
1 女性記者たち
2 速記者から『時事新報』記者へ、そして放送へ——大沢豊子
3 『東京朝日新聞』の女性記者第一号——竹中繁子(繁)
4 機関紙から読売新聞へ、さらに『婦人週報』を主宰——小橋三四子
5 普選運動(前衛)から生活を旗印(後衛)へ——奥むめお
6 大正の女性記者たち
第Ⅲ部 昭和前期 「帝国の戦争」に対して
第1章 石橋湛山——小日本主義者の見識とその孤高
1 小日本主義の思想的背景
2 小日本主義の提唱
3 言論人としての限界
第2章 中野正剛——民権派ジャーナリストから朝野の政治家へ
1 生い立ち
2 ジャーナリストとして
3 政治家に転じて
4 「戦時宰相論」とその結末
第3章 笠信太郎——最後の論説記者
1 経済学者となるまで
2 大新聞社の論説記者へ
3 戦時の滞欧時代
4 戦後の論説主幹として
第4章 水野広徳——兵は凶器なり
1 海軍軍人を目指して
2 海軍での生活
3 平和主義者への転換
4 評論家として
5 言論統制下の活動と晩年
第5章 桐生悠々——反骨のジャーナリスト
1 新聞記者になるまで
2 『信濃毎日新聞』主筆
3 『他山の石』
第6章 清沢 洌——戦時下の理想主義ジャーナリスト
1 生誕から渡米時期まで
2 大正デモクラシーと帰国
3 フリーランサーの道とロンドン軍縮会議の取材旅行
4 準戦時、戦時下の平和希求の取り組み——『暗黒日記』の時期
5 第二次世界大戦後を展望する
6 その教育観と国際平和の思想
第7章 馬場恒吾——あるリベラリストの戦前と戦後
1 迷える学生時代
2 新聞記者として
3 評論家時代
4 戦後の混乱のなかで
5 リベラリストとしての生涯
第8章 鈴木東民——不屈のジャーナリスト
1 デモクラシーとの出会い
2 ドイツ留学
3 読売新聞社での日々
4 その後の東民
第9章 正木ひろし——権力への抵抗を貫いた人権派弁護士
1 『近きより』発刊以前
2 戦時下の抵抗
3 表現の自由を求めて
4 冤罪事件の弁護
5 刑事被告人のまま死去
第Ⅳ部 昭和後期 戦後とは何だったのか
第1章 大宅壮一——二つの大衆社会化状況を生きた、「無思想」の「マスコミの王様」
1 誕生からデビューまで
2 戦前における活動
3 「マスコミの王様」へ
4 大宅壮一の生涯と近現代メディア史
第2章 田 英夫——ニュースキャスターの草分け
1 原体験としての戦争
2 ニュースキャスターの誕生
3 「ハノイ・田英夫の証言」の波紋
4 生涯ジャーナリストとして
第3章 沢田教一——ベトナム戦争報道写真でピュリツアー賞を受賞した日本人カメラマン
1 青森から東京へ
2 ニュース通信社UPI東京支局(アジア総局)
3 1965年2月 サイゴン
4 従軍取材の日々
第4章 大森 実——‘エンピツ一本’の国際事件記者・評論家
1 敗戦の日に決めた新聞記者への転職
2 米国特派員から外信部長へ
3 ベトナム戦争報道
4 エンピツ一本で、一人で「書く」
第5章 本多勝一——探検家・民族学者・国際派社会部記者
1 報道の世界に新境地を開いた民族学的探訪ルポ
2 ベトナム戦争から見えてきたアメリカの正体
3 日本は本当に過去の戦争責任を償ったのか
4 みずから新しいメディアをつくる取り組み
5 むすび
第6章 立花 隆——永遠に未完の文明批評家
1 科学ジャーナリストとしての出発
2 政治ジャーナリストへの変身
3 つくり上げられた“知の巨人”
4 本領発揮は科学・技術の啓蒙
5 むすび
第7章 江川紹子——心と社会をつなぐジャーナリスト
1 ふつうの学生から地方紙記者に
2 フリー時代の仕事——「人権」と「メディアのあり方」を問う
3 坂本弁護士一家拉致殺害事件
4 ジャーナリストとしての立ち位置
〈コラム〉
浅野七之助——日本にも影響を与えた日系人ジャーナリスト
賀川 浩——日本代表よりも早く世界に評価されたサッカー記者
藤倉修一——「マイクの職人」
年 表
人名索引
事項索引
ISBN:9784623074822
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:328ページ
。定価:2500円(本体)
。発行年月日:2018年01月
。発売日:2018年01月22日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KNTP2。