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北欧学のフロンティア

その成果と可能性

編著:岡澤 憲芙

紙版

内容紹介

北欧研究の意義を問い、その今後を展望

目次

はじめに

序 章 北欧:ペリフェリーはニュー・フロンティアののぞき窓(岡澤憲芙)
 1 ビグディス・フィンボガドッテル元大統領――雪解けへむけて
 2 前例がない、前に進むしかない
 3 雪解け後の風景
   ――グローバリゼーション下の《統合力》と《分裂力》、《排除の論理》と《包摂の論理》
 4 【北欧の豊かな福祉・工業国家】の時代
   ――ノスタルジーなのか変動対応の柔軟性こそが《スウェーデン・モデル》なのか
 5 2014年選挙は転換点の一つ――政党政治の真価が問われる時代へ
 6 本書の構成と狙い

 第1部 北欧学の思想
第1章 市場と民主主義(神野直彦)
 1 市場と民主主義への財政学的アプローチ
 2 スウェーデン・モデルの生成過程
 3 スウェーデン・モデルの展開過程
 4 「未来への曙光」としてのスウェーデン・モデル

第2章 もう一つのスウェーデン・モデル(宮本太郎)
    ――G.レーン「自由選択社会」構想再論
 1 福祉国家のスウェーデン・モデル
 2 スウェーデン・モデルとワークフェア・ベーシックインカム
 3 レーンの「自由選択社会」構想
 4 「自由選択社会」構想とレーン・メイドナーモデル
 5 スウェーデン・モデルのゆくえ

第3章 成熟福祉国家形成と成長確保戦略(藤井 威)
    ――スウェーデンの挑戦
 1 福祉国家形成戦略のあゆみ
 2 ペール・アルヴィン・ハンソンの時代――福祉社会の枠組みの形成
 3 ターゲ・エランデルの在任前半の時代――成長促進と福祉国家建設準備
 4 ターゲ・エランデルの在任後半とその後継者の時代
   ――漸進的増税と福祉水準引き上げ
 5 民主開放経済の時代――福祉国家成熟と持続性追求
 6 フレドリク・ラインフェルト中道右派内閣の時代
   ――福祉国家持続性確保のため安定成長の確保と効率性追及
 7 成熟福祉国家における税制改革
 8 スウェーデン・モデルの将来

 第2部 北欧の市民生活
第4章 「北欧」の境界地域における国民形成(小森宏美)
    ――フィンランドとエストニアの国民観を事例として
 1 北欧とロシア帝国の間で
 2 国民形成期のフィンランド
 3 国民形成期の「エストニア」
 4 「国民」とは何か

第5章 北欧社会と児童文学(三瓶恵子)
 1 北欧の児童文学の歴史
 2 リンドグレーンの意義
 3 スウェーデンの子どもはいつどこでどのように本を読むか
 4 社会における児童書の重要性

第6章 イプセンと漱石(安倍オースタッド玲子)
    ――ロマンチックラブ・イデオロギーと恋愛結婚の行方
 1 イプセンと漱石の今日においてのアクチュアリティー
 2 イプセンの『棟梁ソールネス』(1892)と漱石の『こころ』(1914)
   ――夫婦間の確執
 3 近代のロマンチックラブ・イデオロギー
 4 『こころ』――恋愛結婚と見合い結婚の狭間で
 5 イソップ童話のすっぱい葡萄
 6 良心の病気?――残されたすっぱい葡萄の問題
 7 イプセンと漱石が残してくれたヒントとは
 8 イプセンのその後、北欧での展開
 9 漱石のその後、日本での展開

第7章 ルイジアナ近代美術館(木下 綾)
    ――アーツ・マネジメントの視点から
 1 「アーツ・マネジメント」からのアプローチ
 2 ルイジアナ近代美術館
 3 持続可能な美術館へ

第8章 自律と自立へのスウェーデンの生涯学習(中間真一)
 1 未来社会への「ケア」
 2 パラダイムシフトの中の生涯学習論
 3 よりよく働くための学び
 4 生涯学習社会の歴史
 5 生涯学習社会の学校教育システム
 6 成人教育の現状
 7 生涯学習社会を支える安心のシステム
 8 生涯学習を生きる人々
 9 チャレンジできる安心社会

第9章 北欧市民と国際社会(渡邉芳樹)
 1 国際報道に囲まれた市民生活
 2 北欧の中核スウェーデン
 3 移民に開かれたスウェーデン
 4 比較的若い人口構成のスウェーデン
 5 脱高齢・次世代未来志向のスウェーデン
 6 「過激なまでの個人主義」と「社会に対する強い信頼」のスウェーデン
 7 開かれた情報社会と技術革新による活力
 8 国際社会の中のスウェーデン

第10章 スウェーデンにみる「ワーク・ライフ・バランス」(篠田武司)
 1 「ワーク・ライフ・バランス」とは
 2 「ワーク・ライフ・バランス」政策の歴史
 3 新しい改革
 4 スウェーデン社会の理念と「ワーク・ライフ・バランス」

 第3部 北欧の政治と行政
第11章 北欧デモクラシー論再考(小川有美)
 1 北欧デモクラシーはなぜ作動するか
 2 デモクラシーの北欧文化はあるか
 3 政治民主主義としての北欧デモクラシー
 4 社会民主主義としての北欧デモクラシー
 5 市民民主主義としての北欧デモクラシー

第12章 北欧学派の社会科学理論(白鳥 浩)
     ――ロッカンの「凍結仮説」・ガルトゥングの「構造的暴力」・ネスの「ディープ・エコロジー」をつなぐ視座
 1 北欧学派の社会科学理論――オスロを中心として
 2 シュタイン・ロッカン(Stein Rokkan)の政治学理論
 3 ヨハン・ガルトゥング(Johan Galtung)の平和学理論
 4 アルネ・ネス(Arne Næss)の哲学理論
 5 北欧学派の社会科学理論の視座――「中心―周辺」構造

第13章 スウェーデンの議会政治(渡辺慎二)
 1 スウェーデン議会の意思決定と政党
 2 議会政治の歴史
 3 選挙制度と選挙権
 4 国民投票
 5 新たな政治風景

第14章 P. A.ハンソンと「国民の家」(木下淑恵)
 1 スウェーデン・モデルと「国民の家」
 2 1920年代のスウェーデン
 3 政治家P. A.ハンソン
 4 「国民の家」
 5 「国民の家」への一歩

第15章 オンブズマン制度の政治経済学(川野秀之)
 1 オンブズマン制度の政治経済学とは
 2 オンブズマン制度の発展
 3 日本における変化と現状の問題点
 4 EUとオンブズマン制度
 5 民主政治を支えるオンブズマン制度

第16章 女性と政治参加(藪長千乃)
     ――フィンランドにおける女性参政権の実現プロセス
 1 女性の政治参加と参政権の実現
 2 1906年議会改革への道程――議会改革をめぐる対立構造
 3 女性参政権実現の背景
 4 議会改革プロセスにおける女性参政権をめぐる議論
 5 クリーヴィッジを越えて

第17章 ノーベル賞の国際政治学(吉武信彦)
     ――ノーベル平和賞研究の課題
 1 ノーベル賞と国際政治
 2 歴代受賞者の「平和」から見える国際政治
 3 ノルウェー・ノーベル委員会の選考から見える国際政治
 4 日本人候補・推薦者から見える国際政治
 5 ノーベル平和賞研究のゆくえ

 第4部 北欧の経済と財政
第18章 EUと北欧経済(阿部 望)
 1 激動期におけるEUと北欧経済
 2 北欧経済の一般的特徴
 3 北欧の産業競争力
 4 北欧の社会・福祉システムの持続可能性
 5 北欧経済の行方

第19章 北欧と企業経営(猿田正機)
    ――スウェーデンを素材として
 1 スウェーデンの経済・産業・企業
 2 スウェーデン的経営
 3 生産・労働システム
 4 人的資源管理
 5 雇用・労働時間・賃金管理
 6 モチベーション・インセンティブ
 7 労使関係
 8 企業経営の行方

第20章 スウェーデンの地方自治と経済産業政策(穴見 明)
 1 地方自治体の役割変化
 2 「空間的ケインズ主義」から「都市立地政策」へ
    ――ネイル・ブレナーの所説
 3 コミューンの経済政策
 4 「地域政策」から「地域発展政策」へ
 5 マルメの経済産業政策

第21章 北欧の労働市場(福島淑彦)
 1 完全雇用と柔軟な労働市場
 2 北欧諸国の労働市場の特徴
 3 労働市場分析のための理論的枠組み
 4 北欧の労働市場の経済分析
 5 完全雇用実現のために

第22章 スウェーデンの税・財政(馬場義久)
    ――勤労所得税の役割
 1 本章の課題
 2 勤労所得税制の特徴
 3 国と地方の役割分担と負担構造
 4 租税論における論点

第23章 財政再建の政治経済学(秋朝礼恵)
    ――痛みの分かち合い方
 1 負債のある者に自由はない
 2 「痛みの分かち合い」への合意形成型政治
 3 財政再建への視座
 4 揺らぎの90年代を経て

第24章 高齢者介護の比較政治経済学(斉藤弥生)
    ――ダイバーシティ・ウェルフェア・マネジメントへの挑戦とその原点
 1 高齢者介護とダイバーシティ・ウェルフェア・マネジメント
 2 高齢者介護の市場化と「選択の自由」
 3 国民老齢年金論争にみる普遍主義的福祉の萌芽
 4 高齢者介護における在宅介護主義の確立
 5 ダイバーシティ・ウェルフェア・マネジメントの基盤

寄 稿 歴史から見たヤルマール・ブランティング (Hjalmar Branting i historisk perspektiv)(アグネ・グスタフソン[斉藤弥生訳])

おわりに
人名索引/事項索引

著者略歴

編著:岡澤 憲芙
2014年現在早稲田大学社会科学総合学術院教授

ISBN:9784623072002
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:434ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2015年01月
発売日:2015年01月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB