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いと高き貧しさ【新装版】

修道院規則と生の形式

著:ジョルジョ・アガンベン
訳:上村忠男
訳:太田綾子

紙版

内容紹介

もしもふるまいや言葉において、生と規則が区別できないとしたら。そして物の使用が所有と無関係で、法の外にある生活が可能だとしたら、どうだろう。
神的なものと人間的なものが織りなす修道院の規則は、教義や掟ではなく、生の次元に位置する体験であった。それは西洋の政治と倫理に影響を与えつづけてきたが、現代はその遺産を考察さえできないでいる。
砂漠の聖者アントニオス。東西教会の代表的教父・バシレイオスとアウグスティヌス。アッシジのフランチェスコと後継の理論家たち。神秘家オリヴィ。イエスの〈貧しさ〉に従う修道者たちは、異端の疑いと背中合わせの中で、清貧の思想を鍛えぬいてきた。
とりわけフランシスコ会の兄弟たちは、所有権を拒否するだけでなく、「いかなる権利ももたない権利」を掲げて、法の外で生きようとした。アガンベンは彼らの言論に、大量消費社会を超える可能性を見る。
生きることがたんなる事実ではなく、生の可能性であるような生。国家という形態をとらない政治の可能性を考えるべく、アガンベンがかねて予告していた〈生のかたち〉、すなわち分離できないほど形式と固く結びつき、「生政治」に回収されない生を構築する探求が、ここに手がけられた。「ホモ・サケル」シリーズの一冊。

目次

序文

I 規則と生
1 規則の誕生
2 規則と法律
3 俗世からの逃亡と創憲


II 典礼と規則
1 生の規則
2 口述と書記
3 典礼のテクストとしての規則


III 〈生の形式〉
1 生の発見
2 法権利を放棄する
3 いと高き貧しさと使用


解説 所有することなき使用  上村忠男
訳者あとがき


人名索引

著者略歴

著:ジョルジョ・アガンベン
(Giorgio Agamben)
1942年ローマ生まれ。ヴェネツィア建築大学教授を務めたのち、現在はズヴィッツェラ・イタリアーナ大学メンドリジオ建築アカデミーで教えている。主要著書に《ホモ・サケル》シリーズのほか、『中味のない人間』(1970)『スタンツェ』(1977)『幼児期と歴史』(1980)『言葉と死』(1982)『到来する共同体』(1990)『目的なき手段』(邦訳『人権のかなたに』1995)『残りの時』(2000)『涜神』(2005)『イタリア的カテゴリー』(2010)など。
訳:上村忠男
(うえむら・ただお)
1941年兵庫県尼崎市に生まれる。1968年、東京大学大学院社会学研究科(国際関係論)修士課程修了。東京外国語大学名誉教授。学問論・思想史専攻。著書『ヴィーコの懐疑』(みすず書房、1988)『バロック人ヴィーコ』(同、1998)『歴史家と母たち——カルロ・ギンズブルグ論』(未來社、1994)『グラムシ 獄舎の思想』(青土社、2005)『カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まってしまった』を読む——ファシズム期イタリア南部農村の生活』(平凡社、2010)『ヘテロトピア通信』(みすず書房、2012)『ヴィーコ論集成』(同、2017)ほか。訳書 G・アガンベン『アウシュヴィッツの残りのもの』(共訳、月曜社、2001)『瀆神』(共訳、月曜社、2005)『残りの時 パウロ講義』(岩波書店、2005)『幼児期と歴史』(岩波書店、2007)『例外状態』(共訳、未來社、2007)『言葉と死』(筑摩書房、2009)『身体の使用——脱構成的可能態の理論のために』(みすず書房、2016)『哲学とはなにか』(みすず書房、2017)、など多数。
訳:太田綾子
(おおた・あやこ)
1947年東京生まれ。フィレンツェ大学教育学部イタリア語・イタリア文学科卒業、教皇庁立ウルバノ大学マーテル・エクレシエ短期大学(宣教カテケーシス専攻)卒業。教皇庁グレゴリアン大学聖書学院でヘブライ語・ギリシア語を学ぶ。滞伊26年、1991年に帰国。日伊協会講師(1989-97)。1993年イタリア語通訳翻訳会社「アド・イタリア」設立。訳書 アガンベン『いと高き貧しさ——修道院規則と生の形式』(共訳、みすず書房、2014)。

ISBN:9784622095170
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:256ページ
定価:4800円(本体)
発行年月日:2022年05月
発売日:2022年05月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QRMB