出版社を探す

自殺の思想史

抗って生きるために

著:ジェニファー・マイケル・ヘクト
訳:月沢李歌子

紙版

内容紹介

自殺をしてはいけない。この言葉は、どのように根拠づけられるのだろうか?
この問いへの答えを求めて、古代ローマの歴史的資料や古代ギリシャの哲学者たちの思索をはじめ、戯曲や芸術、キリスト教やイスラム教といった宗教思想、宗教から距離を置いた哲学、社会学的な取り扱いまでをも含んだ広い視野で「自殺」がどう考えられてきたのかをまとめ上げる。
古くは宗教的な罪とされていた自殺は、精神医学の発展に伴って倫理的に中立なものになり、現代では選択肢や権利として肯定する立場さえある。このような思想の変遷の中にも、自殺を肯定しない考え方が確かに生き残ってきた。
誰もが納得する答えを出すことがむずかしい問いである。それでも、生きることをやめないでほしい、という切実な思いに向き合い、生きることをやめるべきではない理由とその論理をたどることが、この生に踏みとどまる助けになりうるし、切実な悩みに応えるためのヒントになりうるだろう。

「生き続けるべきだという主張と証拠について考え、それを選ぶことがはじめの一歩になる。そのあとはどんなことも起こりうる。まず、生き続けることを選んでほしい」(本文より)

目次

まえがき
謝辞

はじめに
第一章 古代の世界――聖書、ギリシャ、ローマ
第二章 宗教は自殺を認めない――キリスト教、イスラム教、ユダヤ教
第三章 生きるべきか死ぬべきか――モダニズムの新興における新たな疑問
第四章 非宗教的な哲学による自殺の擁護
第五章 共同体の議論――古代ギリシャから現代まで
第六章 コミュニティと影響に関する現代の社会科学
第七章 未来の自分に対する希望
第八章 自殺について考察した二〇世紀のふたりの人物――デュルケームとカミュ
第九章 苦しみと幸せ
第十章 現代の哲学的対話――シオラン、フーコー、サズ
おわりに

原注
索引

著者略歴

著:ジェニファー・マイケル・ヘクト
(Jennifer Michael Hecht)
科学史、文化史を専門とする歴史学者、詩人、コメンテーター。ディスカバリーチャンネルなどのテレビ番組、各種ラジオ、ポッドキャストに出演。『ニューヨーク・タイムズ』『ワシントン・ポスト』などへの寄稿や、講演活動を精力的に行う。著書にThe Happiness Myth (HarperOne, 2007)、The End of the Soul: Scientific Modernity, Atheism, and Anthropology (Columbia University Press, 2005)、Doubt: A History (Harper Collins, 2004) などがある。
訳:月沢李歌子
(つきさわ・りかこ)
翻訳家。マクリスタル他『LEADERS』(日経BP、2019)ピリウーチ『迷いを断つためのストア哲学』(早川書房、2019)トゥーズ『暴落』全2巻(共訳、みすず書房、2020)ホフマン『時間』(共訳、みすず書房、2020)ウィリアムズ『14歳から考えたいアメリカの奴隷制度』(すばる舎、2022)ほか。

ISBN:9784622090694
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:296ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年10月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP