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精神医学 1

精神分裂病

新装版

著:エーミール・クレペリン
訳:西丸 四方
訳:西丸 甫夫

紙版

内容紹介

フロイトとならんで現代精神医学の基礎を築いた著者の主著であり、精神医学の古典中の古典。
モレルが1860年に初めて用いたフランス語の早発性痴呆という言葉のラテン語訳Dementia praecoxに疾病単位としての概念規定を行なったのはクレペリンの本書第5版(1896)であった。20世紀初頭の多数の精神病患者たちが医師の診断の混乱に悩まされた状態は、つぎのようなブロイラーの記載からも知られよう。「……このようにして多数の患者は、いろいろな病院で受診するたびに、その病院の数だけの診断を背負わされた……次のような出来事は普通のことであった。ある病院では大きな一つの壺にデメンチアと書いてあった。ところが医師が代わって新任の医師になると、その大きな壺のそばにあった、パラノイアというレッテルを貼った壺を大きくして、入院患者をつぎつぎと、この壺のなかに入れかえた。彼は前任者の錯誤を訂正するつもりであった」と。そして「このような混乱に対して、クレペリンによる早発性痴呆の概念の樹立は、明瞭さと秩序とをもたらした。これは真実な疾病概念である」と。ブロイラーは『早発性痴呆あるいは精神分裂病群』1911を著わし、クレペリンの概念をほぽ全面的に継承した。しかしそれは、新しい呼称として〈精神分裂病〉と呼ばれることになる。
精神分裂病の診断の大きな里程標としての本書は、現在にいたるDSM(「精神疾患の診断・統計マニュアル」)にまで影響を及ぼし続けている。
「私はただ彼を尊敬する。学問に対する彼のひたむきな良心的な態度を尊敬する。彼ほどに豊かな資料を集め、詳しい記述につとめ、尽きることのない熱情と執念とをもって精神病の追究に取組んだ人が、彼以外に果たしてあったであろうか」(内村祐之)

目次

内因性鈍化
第一章 早発性痴呆
精神症状
個々の精神病像/把握力/注意/妄覚/妄聴/思考化声/思考被影響/妄視/臭いと味/一般感覚/性感覚/見当識/意識/記憶/記銘力/作話/思路/支離滅裂/常同/パラロギー/自由喪失/阻止・断絶/被影響/作為・伝達/精神的能力/判断力/妄想/罪過妄想/迫害妄想/誇大妄想/性的妄想/関係妄想/感情障害・感情鈍麻/共感欠如/感情爆発/感情失調/錯表情/感情伝播/意志障害/意志発動低下/命令自動/蝋屈/反響言語・反響行為/衝動行為/緊張性興奮/常同/運動常同/衒奇/錯行為/拒絶/意志阻害/自閉/昏迷/両面価値/意志の自由の喪失/させられ/実地能力低下/伝達欲喪失・寡言/談話促迫/支離滅裂/常同/語唱/拒絶/言語脱線/内言語/言語新作/アカタファジー/文章構造/思路脱線/全般的精神病像/感情活動減弱/精神内部の失調

身体症状
頭痛/瞳孔/腱反射/筋運動障害/発作/歪顔/血管運動障害/血圧/呼吸/唾液/体温/血液像/代謝/甲状腺/睡眠/摂食/体重

臨床諸型
単純痴呆
児戯性鈍化・破瓜病
抑鬱性鈍化・昏迷性鈍化
妄想形成性抑鬱性鈍化
循環型早発性痴呆
激越型早発性痴呆
周期型早発性痴呆
緊張病
妄想型
重い妄想性痴呆/穏やかな妄想性痴呆
言語錯乱・分裂言語症

経過
寛解と不治

転帰
予後/欠陥治癒/末期状態/単純な痴呆/幻覚性鈍化/妄想性痴呆/滅裂性鈍化/鈍感な鈍化/児戯性鈍化/衒奇的鈍化/拒絶性鈍化/予後の手がかり/転帰/生命と死

解剖所見

頻度

原因
年齢/破瓜病/接枝破瓜病/白痴/最早発性痴呆/幼児痴呆/晩発緊張病/退行期の精神病/遅発性痴呆/男性と女性/人種・文明/遺伝的素質/胚種毀損/変質/精神病質的偏倚/外的原因/生殖作業/性生活/代謝障害/素質/フロイトのコンプレクス

鑑別
妄想型/緊張病/単純痴呆/幼児痴呆/その他の型/緊張病的症状/精神病質/精神薄弱/躁鬱病/混合状態/ヒステリー/拘禁者/佯作/癲癇/進行麻痺/アメンチア/脳梅毒/妄想性疾患

治療

第二章 妄想性鈍化(パラフレニーエン)
概念

体系性パラフレニー
迫害妄想/妄覚/被影響/誇大妄想/把握力/病感/追想錯誤/気分/行為/被迫害者‐迫害者/誇大妄想/作業能力/経過/転帰/性別/治療

誇大性パラフレニー

作話性パラフレニー

空想性パラフレニー

文献

偏執症(パラノイア)
パラノイア概念の歴史/パラノイアとパラノイド/パラノイアの概念規定/フランス人の見解

病像
幻影体験/追想錯誤/関係妄想/被害妄想・誇大妄想/体系化/軽微型パラノイア/頓挫性パラノイア/気分/行為/臨床諸型/迫害妄想/嫉妬妄想/心気妄想/誇大妄想/発明妄想/血統妄想/宗教性誇大妄想/色情的偏執症/経過と転帰/頻度/原因・本性/異常な発展か病的過程か

鑑別・診断
頓挫型/パラノイド人格/躁病との区別/診断/早発性痴呆/パラフレニー/躁鬱病/精神病質

治療

文献

あとがき

著者略歴

著:エーミール・クレペリン
1856-1926。ドイツのノイシュトレリッツに生まれる。1874年、ヴュルツブルグとライプチヒ大学で医学を学び始め、その後ヴント、グッデンの教えを受ける。1883年『精神医学提要』Compendium der Psychiatrie(384頁)を出版。著者27歳のときであり、これが後年の『精神医学』の初版である。いらい版をかさね第8版(1909-1915)では4巻3048頁となった。第9版の第2巻が出版されたのは1927年で、これで中絶した。30歳のとき精神医学の教授となり、ドルパト(エストニア、今日のタルトゥ)、ハイデルベルク、ミュンへン大学を歴任した。フロイトとならぴ、現代精神医学の基礎を築いた一人である。
訳:西丸 四方
1910年生。1936年東京大学医学部卒業。都立松沢病院、東京女子医専講師を経て、信州大学・愛知医科大学名誉教授、北信総合病院顧問。2002年歿。主な著書『傑出人脳の研究』(長与又郎・内村祐之と共著、岩波書店)『精神医学入門』『臨床精神医学辞典』『やさしい精神医学』(以上南山堂)『異常性格の世界』『心の病気』(以上創元社)『病める心の記録』(中央公論社)『臨床精神医学研究』『精神医学の古典を読む』『精神医学の臨床から』『精神医学の人と書物』(「西丸四方の本」1-2)(以上みすず書房)『精神医学彷徨記』(金剛出版)『彷徨記 狂気を担って』(批評社)『西丸四方著作集』(全3巻、丸の内ハイデ出版社)。訳書 ヤスペルス『精神病理学総論』(共訳、岩波書店)クレッチマー『医学的心理学』(共訳)ヤスパース『精神病理学原論』チュルン『ジャスミンおとこ』シュナイダー『臨床精神病理学序説』クレペリン『精神分裂病』『躁うつ病とてんかん』『精神医学総論』(共訳)ランゲ‐アイヒバウム『ヘルダリン』(以上みすず書房)ハインロート『狂気の学理』(中央洋書出版部)ほか。
訳:西丸 甫夫
1945年生。1968年岩手医科大学卒業。愛知医科大学講師、北信総合病院医長を経て、1998年より西丸医院院長。訳書 クレペリン『精神医学臨床講義』(共訳、医学書院)クレペリン『精神分裂病』『躁うつ病とてんかん』(共訳、みすず書房)。

ISBN:9784622089735
出版社:みすず書房
判型:A5
ページ数:412ページ
定価:8000円(本体)
発行年月日:2020年11月
発売日:2020年11月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ