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王女物語

エリザベスとマーガレット

著:マリオン・クローフォード
訳:中村 妙子

紙版

内容紹介

本書の前に、王族のありのままの姿やなにげない日常を、彼らの肉声やよろこびとかなしみを、城門の外へ伝えた本はなかった。この本を書いたのは〈クローフィー〉。生まれた時は誰ひとり予想しなかった女王の位に25歳でつくことになるエリザベスと、妹マーガレットの家庭教師として、国王ジョージ6世一家と17年を宮殿でともに暮らし、女王の若き日の重要なシーンのすべてに立ち会った女性であった。
王女エリザベスのご成婚とともに家庭教師の任を離れて数年後、彼女は筆を執り、二人の王女と過ごした日々をなつかしく書き綴った。現代からみれば、暴露本などという括りには入りようもない本書の刊行直後、王室は、17年間家族同然に遇し、ともに暮らしたクローフィーとの関係を、静かに、永久に、絶った。彼女がおかした、たったひとつの〈罪〉は、国王一家とともに過ごした年月を、王族との健全な距離感を保ちつつ、誠実に、愛情こめて書き綴ったことだったのだが……
「リリベットは私の誇り、マーガレットは私のよろこび」――父王ジョージ6世の言葉が伝えるとおり、まったく異なる個性をもった、二人の王女。結婚によって、いずれは王室を出ていくはずだった王女たちは、兄エドワード8世に代わる突然の父の即位にともない、バッキンガム宮殿での新たな生活を踏み出す。
戦前の古風でやさしい子ども部屋の世界から、第二次大戦下のウィンザー城での疎開生活、終戦、社会や値観の急激な変化をとげた戦後へ――特別な時代を、特別な場所で、特別な人々とともに生きた家庭教師、マリオン・クローフォードによる回想録。

目次

1 ご一家に加わる
2 ロイヤル・ロッジとピカデリー一四五番地のお住まい
3 ジョージ五世陛下の治世の終わり
4 バッキンガム宮殿へ
5 国王陛下のご政務
6 開戦
7 「田舎の家」
8 ガスマスクとパントマイム
9 Vデーとロンドンへの帰還
10 エリザベスとフィリップ
11 ご成婚
12 マーガレット王女の幼い甥

著者略歴

著:マリオン・クローフォード
1909-1988。スコットランド、イーストエアシャーに生まれる。父の死と、母の再婚によって、少女時代をダンファームリンで過ごし、エディンバラ大学モレーハウス教育学部へ進む。卒業後、実家に戻り、児童心理学者となる勉強を続けるかたわら、貴族の子女の家庭教師を勤めていたとき、国王の第二王子ヨーク公(のちのジョージ6世)夫妻に紹介され、1932年、二人の王女の家庭教師となる。エリザベス王女の成婚と時を同じくして、銀行支店長ジョージ・ビュースリーと結婚。家庭教師としての功労に対して、ジョージ6世よりケンジントン宮殿のノッティンガム・コテージに終生居住の権利を賜る。退職の翌年、1950年に本書が出版されたことで、王室との関係は絶え、コテージの権利も失った。スコットランドのアバディーンで引退後の人生を送り、夫の死から11年後の1988年2月にアバディーンの老人施設にて没した。
訳:中村 妙子
1923年東京に生まれる。1954年東京大学文学部西洋史学科卒業。翻訳家。著書に『旧約聖書ものがたり』(日本キリスト教団出版局、2012)、共著に『三本の苗木――キリスト者の家に生まれて』(みすず書房、2001)。訳書 ルイス『愛はあまりにも若く』(1976)、『別世界にて』(1978、いずれもみすず書房)、ウィルソン『C・S・ルイス評伝』(新教出版社、2008)、リンドバーグ『翼よ、北に』(2002)『聞け!風が』(2004、いずれもみすず書房)、ラヴィン『砂の城 新版』(みすず書房、2007)、ヒスロップ『封印の島』(みすず書房、2008)、クリスティー『春にして君を離れ』(ハヤカワ文庫、2004)、バーネット『消えた王子』(岩波少年文庫、2010)『白い人びと ほか短篇とエッセー』(〈大人の本棚〉みすず書房、2013)、C・S・ルイス『影の国に別れを告げて』(新教出版社、2016)、クローフォード『王女物語――エリザベスとマーガレット』(みすず書房、2020)他多数。

ISBN:9784622089414
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:296ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2020年10月
発売日:2020年10月12日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB