内容紹介
「史上もっとも偉大な科学予測の試み」(アーサー・C・クラーク)。イギリスの生物・物理学者バナールが1929年、弱冠27歳の折に発表した先駆的な人類未来論。書名の「宇宙・肉体・悪魔」は、これまで人類の妨げとなってきた物理的、生理的、心理的な3つの制約を指している。これらのくびきを解き放つため、未来人はロケットを開発して宇宙に進出、その過程で自らの肉体を工学的に改造しつつ機械と融合し、従来の生物を超越した存在へと進化していくだろうと予言する。1世紀近く前の小著ながら、宇宙開発、遺伝子工学、AIによるシンギュラリティー問題など、先端的なテーマがすでに内包されており、その先見性を裏付けている。また、本書が説く宇宙植民島(スペースコロニー)や改造人間(サイボーグ)、群体頭脳などのアイディアは、ステープルドンやクラークらを通じて、小説から映画に至るのちのSF作品に多大な影響を与えたことでも知られる。いまなお読む者を刺激してやまない科学史に残るラディカルな古典。巻末に「新版への解説」(瀬名秀明)を収録。
目次
第一章 未来
第二章 宇宙
第三章 肉体
第四章 悪魔
第五章 総合
第六章 可能性
訳者あとがき
J・D・バナール略歴
新版への解説 瀬名秀明
著者略歴
著:J・D・バナール
1901-1971。アイルランドに生まれる。1922年ケンブリッジ大学卒業。デーヴィ・ファラデー研究所に入りブラッグ卿の下でX 線解析による結晶構造の研究を専攻。1927-34年ケンブリッジ大学講師。1934-37年同大学結晶学研究室副主任。1937年英国学士院会員となる。1938-63年ロンドン大学バーベック・カレッジ物理学教授。1963年同カレッジ結晶学教授、1968年病気のため退職。他方ブリュッセル国際平和会議科学部会議長を務め、大戦中は英国治安省および航空省顧問として防空対策に当たり、統合作戦本部科学顧問としてケベック会談に参加。1947-9年イギリス科学労働者協会会長。1948年世界科学労働者協会副会長。1950年世界平和評議会副会長。1958-65年同評議会代表委員会議長。著書に『科学の社会的機能』(1951、創元社)『生命の起原』(1952、岩波書店)『科学と産業』(1956、岩波書店)『歴史における科学』(第3版、1966、みすず書房)『戦争のない世界』(1959、岩波書店)『宇宙・肉体・悪魔』(1972、みすず書房)『人間の拡張』(1976、みすず書房)など。
訳:鎮目 恭夫
1925年東京に生まれる。1947年東京大学理学部物理学科卒業。科学思想史専攻。科学評論家。2011年歿。著書『性科学論』(1975)、『自我と宇宙』(1982)、『科学と読書』(1986)、『人間にとって自分とは何か』(1999)、『ヒトの言語の特性と科学の限界』(2011、以上みすず書房)、『心と物と神の関係の科学へ』(1993、白揚社)ほか。訳書 シュレーディンガー『生命とは何か』(1951、岩波新書、2008、岩波文庫)、バナール『歴史における科学』(1956)『宇宙・肉体・悪魔』(1972、新版2020)、ウィーナー『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994)、メダワー『若き科学者へ』(1981、新版2016)、ダイソン『多様化世界』(1990、以上みすず書房)ほか多数。
解説:瀬名 秀明
1968年静岡県生まれ。東北大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。小説『パラサイト・イヴ』(1995、角川書店、2007、新潮文庫)で第2回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。SF小説をはじめ、ロボット学や生命科学など科学に関する著作多数。小説作品に『BRAIN VALLEY』(1997、角川書店、2005、新潮文庫。第19回日本SF大賞受賞)、『ポロック生命体』(2020、新潮社)など、ノンフィクション作品に『パンデミックとたたかう』(2009、岩波新書。押谷仁との共著)、『ロボットとの付き合い方、おしえます。』(2010、河出書房新社)などがある。
ISBN:9784622089230
。出版社:みすず書房
。判型:4-6
。ページ数:136ページ
。定価:2700円(本体)
。発行年月日:2020年07月
。発売日:2020年07月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PDZ。