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うつ病と躁病(新装版)

現象学的試論

著:ルートウィヒ・ビンスワンガー
他訳:山本 巖夫
他訳:宇野 昌人

紙版

内容紹介

ビンスワンガーは1881年スイスのクロイツリンゲンに生れ、1966年に84歳の生涯を終えたが、幼い日から精神病の患者と共に過ごした長い豊かな臨床経験と、つねに若々しい情熱をもって研究を進めてきた。『夢と実存』『精神分裂病』など、精神医学に新しい方向を切りひらこうとする意欲的な名著として、広く世界に紹介されている。本書は『精神分裂病』から3年後に発表され、前著がハイデッガーの理論を基礎においた現存在分析の方法で、分裂病者の世界を分析しているのに対し、フッサールの先験的現象学にさかのぼって現象学的方法で、うつ病と躁病者の世界を把握しようとする試みである。それは「精神医学的〈実存形式〉の〈人間学的構造〉の性格づけのみでは不十分であって、その世界の特性を、その構成に基づいて研究すること」であった。1920年代以後のフッサールの現象学が、精神医学に対してもつ意義を明確に示している。

目次

緒言

序論

うつ病
うつ病の過去視
  1 症例 セシル・ミュンヒ
  2 症例 ダフィート・ビュルゲ
  歴史的附説
うつ病の未来視
  うつ病の妄想
うつ病の苦悩、うつ病の不安、うつ病の自殺衝動
  1 テレンバッハの患者 M・B・K
  2 作家レト・ロース
  3 学者ブルーノ・ブラント
  附説

躁病
まえおき
代表象と相互主観性に関するフッサールの学説
共同世界の構造のなかで、躁病者において機能を停止した諸契機の現象学的分析――代表象の障害にもとづいて
  1 症例 エルザ・シュトラウス
  2 症例 医師アムビュール
躁病における、代表象の一貫性と思考の一貫性の機能停止
  1 症例 オルガ・ブルム
  (a) ゲーテのファウスト (b) 奇蹟が起った (c) 両親との関係(躁病の場合) (うつ病の場合)

躁病とうつ病
躁うつの背反性
フッサールの純粋自我論の、躁‐うつ背反性の本質了解に対して持つ意義

躁病、うつ病、精神分裂病の経験様式

原注
訳者あとがき

著者略歴

著:ルートウィヒ・ビンスワンガー
1881-1966。スイス、クロイツリンゲンに生れる。家は代々高名な内科医や精神科医を送り出している名家。コンスタンツのギムナジウムを経て、1904年以後ローザンヌ、ハイデルベルク、チューリヒの各大学で医学を学ぶ。学生時代思想的にはカント、ナートルプ、リッケルト、精神医学に関してはボンヘッファー、E・ブロイラー、ユング、フロイトの影響を受ける。1911-56年私立精神病院の院長。フッサールの現象学、ハイデガーの現存在分析論に立脚した人間学を研究。主な著書に『精神分裂病』I・II(みすず書房、1960-61)『現象学的人間学』(みすず書房、1967)『うつ病と躁病』(みすず書房、1972)『思い上がり ひねくれ わざとらしさ』(みすず書房、1995)がある。
他訳:山本 巖夫
1927年福島県に生れる。1954年東京大学医学部卒業、精神科医。現在 代々木の森診療所勤務。
他訳:宇野 昌人
1931年愛媛県に生れる。1956年京都大学医学部卒業。1960年東京大学文学部哲学科卒業。精神科医。元式場病院院長。2014年歿。

ISBN:9784622089056
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:176ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2020年02月
発売日:2020年02月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:MJ