なぜならそれは言葉にできるから
証言することと正義について
著:カロリン・エムケ
訳:浅井 晶子
内容紹介
暴力をうけた人は、それを話すことができるだろうか。周囲の人はそれを聞くことができるだろうか。
暴力は、日常の「こうであるはずだ」という約束を壊す。世界で生きていく前提が崩れてしまうのだ。だから、何が起こったのかを認識するのにとても時間がかかる。その話を聞いた人も、言われたことを即座に理解することはできない。
けれども、暴力は世界中で蔓延し、ある日突然被害者になる人は増え続けている。世界への信頼を打ち砕かれた人が、ふたたび世界へと戻って来られるために、私たちは何ができるだろうか。
著者エムケは戦地を取材し、さまざまな人と出会う。そこから、「語ること」「聞くこと」「聞いたことを伝えること」について考えていく。
語ることを強いるのではなく、言葉にできないとするのでもなく、「それでもなお語る」ことを探ること。口ごもりながら、断片的に語るとき、そこには空白があり、謎があるかもしれない。だからこそ「それ」は言葉にできる。
語りの首尾一貫性ではなく、聞く人が「それ」を聞けるかが、世界への信頼を取り戻す鍵となる。
出会った人々の言葉とともに、旅するエムケの生活や思い出が、普遍的な考察へとつながっていく。温かく、深みのあるエッセイ。
目次
「なぜならそれは言葉にできるから」――証言することと正義について
序章/1 さまざまな証人、または――我々に語るのは誰か?/2 精神的打撃、または――「理解しようと試みない」/3 「物体」への変身/4 二重化、または――リズム、儀式、物、脱出/5 去る、または――沈黙の時/6 信頼、または――それでも語る
他者の苦しみ
拷問の解剖学的構造
リベラルな人種差別
現代のイスラム敵視における二重の憎しみ
故郷――空想上の祖国
民主主義という挑戦
旅をすること 1
旅をすること 2――ハイチを語る
旅をすること 3――旅のもうひとつの形について
初出
訳者あとがき
ISBN:9784622088530
。出版社:みすず書房
。判型:4-6
。ページ数:248ページ
。定価:3600円(本体)
。発行年月日:2019年10月
。発売日:2019年10月18日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LNF。