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ジャコメッティ エクリ

新装版

著:アルベルト・ジャコメッティ
他訳:矢内原 伊作

紙版

内容紹介

形をなしている文章においても、走り書きのメモにおいても、アルベルト・ジャコメッティは、その造型作品において様式を目ざしたりしてはいないのと同様に、文体というものを目ざしたりしてはいない。彼がしようとしているのはただ、何かをとらえること、言うべきことをつかむことだけだ。今、死の暗いサロンの高い暖炉の上に身を置いて、頭も体もないジャコメッティは、ここに集められた文章と対話を通して語っている。渦をまいて燃える火であることをやめない彼の言葉を。
――ミシェル・レリス

この本を開いて現れる頁のどの片隅においても、アルベルト・ジャコメッティの作品と生をつかさどっていった三つの主な欲動の競合と連動とが疑う余地なく見えてくる。この彫刻家のエネルギーと輝きが、それらの欲動を突き動かし、引っぱり、方向を与え、明確な形を与える。三つの、そのひとつひとつが全きものである源。幼年期、女性、そして死。決してひとつに結ばれたことはなく、決して本当にはばらばらにほどかれたこともない……。書かれた文の一つ一つに、空虚の存在が緊張を、息を、絶えず疑いを忘れぬ力を、そして無限に開かれてゆくその動きを与えている。
――ジャック・デュパン

目次

  読者に
語るジャコメッティ、書くジャコメッティ………ミシェル・レリス
終わりなきエクリチュール………ジャック・デュパン
ジャコメッティ年譜

  既刊の文章
物いわぬ動くオブジェ
七つの空間の詩
褐色のカーテン
灰となった草
昨日、動く砂は
実験的研究
アンケートへの回答
1934年の対話
私は私の彫刻については間接にしか語れない
アンリ・ローランス
ジャック・カロについて
夢・スフィンクス楼・Tの死
ピエール・マティスへの手紙(一)
作品の補足リスト
ピエール・マティスへの手紙(二)
盲人が夜の中に手をさしのべる……
物いわぬ動くオブジェ(新版)
灰色、褐色、黒……
ドラン
私の現実
自転車と彫刻
ディドロとファルコネは考えが同じだった
私の芸術の意図
『脚』について
今日絵についてどのように語ればよいのか?
ジョルジュ・ブラック
終わりなきパリ
模写についてのノート
イエドリカ教授の訃に接し
そんなものはみな大したことでない

  手帖と紙葉
子供時代の思い出/「芸術」のための…/魂と肉体は…/ぼくは今カフェに…/ぼくは同じ道を…/全身像と二つの…/彫像の作り方/彫刻/「すべての事物の…/純粋芸術/昨日1925年…/ぼくは散歩して…/「いかなる統御も…/光の中の金の…/水がきしる/帰ってきたら…/ぼくには哲学は…/あらゆるものの…/ぼくは、オブジェ…/問題/女が息子を…/決してフォルムの…/男と女/私達は、裸/生まれたのだ/オブジェか/批評、否/おれはすべての/リュリュ、リュリュ!/まだ九時だ/アルゴ船の乗組員/ぼくはもうこわく…/やさしい/すべてが夢の…/鐘が鳴る/批評、否/おぞましい/曖昧さが…/髪、剃った/三次元にわたる…/ブルトンは詩に/またAEARについて/無理だ、できない/もっと先まで…/ふぅ、ふぅ/いささかも調整…/女に対しての…/ウ、ア/フォルムの精神/ぼくは自分の…/すべてを歪曲する…/過去に作られた…/書くべきことは…/外の世界と…/あ、いたた!/実物を写して…/だが終わりという…/書く、何頁も…/ここで括弧に…/一覧表。何の…/奇妙な生/ぼくは絵や…/骨と化して…/空間を現実に…/ぼく、君/風景! 風景/ユーラシア/「G」多面体の…/テリアードのための…/ひと月のうちに…/これらのちょっと…/瞬間/ローマに旅行…/ぼくにはもう…/言う? 何を?/この部屋で…/まったく常軌を…/来週の初めに…/ディエゴがそのうち…/起きたら…/もし仕事をしたいなら…/ぼくは自分が…/このコワールの…/明日の朝は…/ぼくの手は…/そのことが起きて…/ぼくは状況を…/ぼくは今晩チューリヒを…/A. I. OU

  対話
ジョルジュ・シャルボニエとの対話
ゴットハルト・イエドリカ博士との対話
矢内原伊作との対話
ピエール・シュネーデルとの対話
アンドレ・パリノとの対話
ピエール・デュマイエとの対話
ダヴィッド・シルヴェステルとの対話

原題・初出一覧
あとがき

著者略歴

著:アルベルト・ジャコメッティ
1901年、スイス、グリゾン州ボルゴノーヴォに生まれ、隣村スタンパで幼年期を過ごす。早くから彫刻と絵画を始め、1920-21年イタリアを旅行、22年にパリに出、以後終生同地に住む。最初はキュビスム風の彫刻を、ついで想像によるオブジェを作る。1930年、シュルレアリスム運動に加わりグループの活動、雑誌や展覧会に参加。1935年、写生による仕事に戻る。42-45年ジュネーヴに住む。彫刻は次第に小さくなり、最後にはほとんど消えるところまでゆく。47年まで作品の発表は行なわない。48年ニューヨークのピエール・マティス画廊で個展、以後各地で展覧会。62年ヴェネツィア・ビエンナーレで彫刻大賞を受ける。1966年急逝。死後69-70年、パリのオランジュリー美術館で回顧展、以後いよいよ声価が高まり各国で個展。日本では1983年に巡回展、また1991-92年にはパリ市立近代美術館で彫刻・油彩・デッサンを集めた大規模な回顧展が開かれている。
他訳:矢内原 伊作
1918年、愛媛県に生まれる。京都大学文学部哲学科卒業。哲学者、元法政大学文学部教授。1989年歿。著書『顔について』(河出書房1948)『海について』(創元社1949)『芸術家との対話』(美術出版社1958/彩古書房1984)『サルトル』(中公新書1967)『ジャコメッティとともに』(筑摩書房1969)『歩きながら考える』(1982)『たちどまって考える』(1984)『話しながら考える』(1986)『ジャコメッティ』(1996)『矢内原忠雄伝』(以上みすず書房1998)ほか。訳書J・モディリアニ『モディリアニ』F・クレー『パウル・クレー』(共訳)H・ペリュショ『セザンヌ』ネルーダ『マチュピチュの高み』『ジャコメッティ エクリ』(共訳、以上みすず書房)ほか。

ISBN:9784622086222
出版社:みすず書房
判型:A5
ページ数:464ページ
定価:6400円(本体)
発行年月日:2017年05月
発売日:2017年05月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:WFS
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:AGA