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原理

ハイゼンベルクの軌跡

著:ジェローム・フェラーリ
訳:辻 由美

紙版

内容紹介

「その秘密の場では、それはすでに場でさえないのだが、矛盾が矛盾でなくなり、同時に、図というものが、なじみぶかい触感とともに消えうせる。人間の言葉がえがける世界は、あとかたもなく消えうせ、あるのはただ、無言にして有無をいわせぬ、色彩のない数式、不動の行列力学の抽象的な壮大さで、その想像をこえる美しさは、あなたの目に見抜かれるのをずっと前から待ちつづけていたのだ。」

1920年代、それまで不動のものとされてきた古典物理学の理論と相反する現象がつぎつぎと見つかり、盛んな論争が展開されていた。そこに「不確定性原理」をもって登場した若きハイゼンベルクは、量子力学の確立への功績でノーベル物理学賞を受ける。「あなたは何気なくポケットに両手をつっこみ、色彩のない空を前にして、無用にして感動を禁じえないほどの若さを保ったまま、可能と現実のはざまに立っていた。」しかし、その後の現実世界は、ナチスの台頭、戦争、アメリカによる原爆投下にむかって進んでいった。
量子力学に魅せられたゴンクール賞作家が、過去と現在を往還しながら、言葉にするのが困難な世界のうちに、これまでにないハイゼンベルクの姿を幻視する精密な小説。

目次

位置
速度
エネルギー
時間

著者覚書
訳者あとがき
本書の人物

著者略歴

著:ジェローム・フェラーリ
1968年パリ生まれの作家・翻訳家。両親ともフランス南部コルシカ島の出自。パリ第一大学で哲学教授資格を取得後、コルシカ島の高校で哲学を教えるかたわら同島バスティアで哲学カフェを主催。以後、アルジェ(アルジェリア)やアジャクシオ(コルシカ)で2012年まで、アラブ首長国連邦のアブダビで2015年まで、教員を続ける。2001年に短篇集『死の多様性』でデビュー、それ以降の創作活動により、ランデルノー賞、フランス・テレビ小説賞のほか、2012年の小説『ローマ陥落についての説教』でゴンクール賞を受賞。最新作はエッセー『何かが起こっている』(2017年)。
訳:辻 由美
翻訳家・作家。著書『翻訳史のプロムナード』(1993、みすず書房、日本出版学会賞)『世界の翻訳家たち』(1995、新評論、日本エッセイストクラブ賞)『カルト教団太陽寺院事件』(1998、みすず書房)『図書館で遊ぼう』(1999、講談社現代新書)『若き祖父と老いた孫の物語 東京・ストラスブール・マルセイユ』(2002、新評論)『火の女シャトレ侯爵夫人 18世紀フランス、希代の科学者の生涯』(2004、新評論)『街のサンドイッチマン 作詞家宮川哲夫の夢』(2005、筑摩書房)『読書教育』(2008、みすず書房)ほか。訳書 ジャコブ『内なる肖像 一生物学者のオデュッセイア』(1989、みすず書房)ポンタリス『彼女たち』(2008、みすず書房)アラミシェル『フランスの公共図書館 60のアニマシオン』(2010、教育史料出版会)チェン『ティエンイの物語』(2011、みすず書房)同『さまよう魂がめぐりあうとき』(2013、みすず書房)ドゥヴィル『ペスト&コレラ』(2014、みすず書房)ドルーアン『昆虫の哲学』(2016、みすず書房)フェラーリ『原理』(2017、みすず書房)ほか。

ISBN:9784622086109
出版社:みすず書房
判型:4-6
ページ数:192ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2017年05月
発売日:2017年05月06日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB