果報者ササル
ある田舎医者の物語
著:ジョン・バージャー
著:ジャン・モア
訳:村松 潔
内容紹介
ブッカー賞作家ジョン・バージャーと写真家ジャン・モアが、一人の田舎医者の姿を通して人間と医療の本質を浮彫にした傑作ドキュメント。
舞台はイングランド南西部の小村。階級社会の最下層に生きる村人たちは、貧困やそれに伴うさまざまなスティグマに絡めとられている。医師ササルはその村に住みつき、傷を負った者、死に瀕する者、孤独な者のケアに当たる。ササル医師が村人との間に築いた稀有な関係性を、二人のアーティストが透徹した視線で描写する。本書の観察は、人間の生の価値の観念を押し広げるような数々の気づきを含んでいる。
治療者とはいかなる存在なのか。他人を癒すことで癒される生、それを限界を設けずに探究する者の幸福とその代償について、ササル医師は美しくも戦慄すべき事例を提供しており、読後も一巻全体から受けた衝撃が後を引く。
「本書を読んで心を動かされない者は、医師になるべきではない。」(The Nation 誌)
原著は1967年刊。以来読み継がれ、今日の極度にマニュアル化された医療に対してますます深く問いかける。静謐でありながら強烈なメッセージを放つ一冊。写真73点。
◆傑作。この本が1967年に刊行されたとき、それは作家と写真家のコラボレーションとして『名高き人たちをほめたたえん』(1941)以降もっとも重要な一歩を刻んだ本だった。信じられないことに、現在も同じ形容が当てはまる。──ジェフ・ダイヤー、1997年の評
◆私が世界中でもっとも好きな本の一つであり、常に、本がどのように書かれるべきか(そして写真はどのように使われるべきか)についてのインスピレーションであり続けている。──アラン・ド・ボトン
◆いたわりについて語ることで、読む者をして他人をいたわらせる本、深い癒しについて語ることで、読む者の魂を癒す本である。しかも、すでに50年近くを経ていながら、気味が悪いほどにタイムリーだ。──サイモン・ガーフィールド、2015年の原著新版への評
◆ジョン・バージャーは私にとって比類のない存在である──ロレンス以降、この世界の官能について、良心の要請を引き受けながらこれほどの注意力をもって書ける作家はほかにいない。──スーザン・ソンタグ