フロイトとアンナ・O
最初の精神分析は失敗したのか
著:リチャード・A・スクーズ
訳:岡元 彩子
訳:馬場 謙一
内容紹介
「治療中断の一年後、ブロイアーはフロイトに、彼女はすっかり錯乱している、彼女は死んだほうがよいのではないか、そうすれば苦しみから解放されるのにとさえ思う、と打ち明けた」
ヨーゼフ・ブロイアーとジークムント・フロイトの『ヒステリー研究』(1895)において提示された「症例アンナ・O」。この症例は、のちにアーネスト・ジョーンズによって書かれたフロイトの伝記が発表されて以来、「『ヒステリー研究』の記述にあるような輝かしい成功ではなく、治療は失敗だった」と見なされるようになった。
ジョーンズによれば、アンナはブロイアーによる治療ののち、重篤なモルヒネ依存に苦しみ、毎日幻覚状態に陥っていたという。そしてこの事実は後年、治療後のアンナの足取りを追った医学史家アンリ・エランベルジェの研究によって追認されることとなるのである。
はたして、症例アンナ・Oの治療は本当に失敗だったのか? 本書は、『ヒステリー研究』の治療記録、アンナの入院先の医師による記録、関係者の書簡、追跡研究などの膨大な資料を掘りおこし、その治療結果の真実に迫るものである。精神分析学の始まりとなった症例の謎が、いま解き明かされる。
目次
序
緒論 アンナ・O症例の来歴
第1部 症例の展開
第一章 一八八二年の症例報告
第二章 その後の証言
第三章 症例研究の出版
第四章 フロイトの説明――再構成
第五章 防衛と性愛
第六章 転移とファウスト的命題
第2部 伝説の生成
第七章 伝説の誕生――アーネスト・ジョーンズ
第八章 伝説の発展――アンリ・エランベルジェ
第九章 伝説の成熟――諸説の派生
結 論
原 注
年 譜
文 献
索 引
ISBN:9784622079385
。出版社:みすず書房
。判型:A5
。ページ数:272ページ
。定価:5500円(本体)
。発行年月日:2015年10月
。発売日:2015年10月09日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MKM。