東京は遠かった
改めて読む松本清張
著:川本 三郎
内容紹介
中央と地方、格差社会、転落する男と女ーー時代を超えて清張ミステリは読み継がれる。昭和文化や都市論、映画に造詣の深い評論家が、「東京」「昭和」「映画と小説」「旅」など、さまざまな切り口から不世出の作家の魅力に迫る。これまでに書かれた清張にまつわる文章に書き下ろしを加えた決定版・松本清張ガイド。
「一億総中産階級と言われた一九八〇年代のバブル経済期に誰が、その先に格差社会が来ると想像しただろう。しかし、いま、松本清張の初期の作品を読むと、日本の社会は、いまもむかしもそれほど変わっていないのではないかと思ってしまう」(本書より)
目次
第1章 東京へのまなざし
初期作品に見る敗れゆく者たちーー「西郷札」「或る「小倉日記」伝」
風景の複合ーー『Dの複合』『渡された場面』
地方から東京を見るまなざしーー「再春」「空白の意匠」「投影」
抑留された夫の帰りを待つ女ーー「地方紙を買う女」
物語の生まれる場所、甲州ーー「絵はがきの少女」に始まる
第2章 昭和の光と影
東京地図から浮かび上がる犯罪ーー『歪んだ複写』
昭和三十年代の光と影ーー『点と線』『砂の器』「声」
働く女性の殺人ーー「一年半待て」
小説が書けなくなった作家、時代から忘れられた作家ーー『蒼い描線』「影」「古本」
第3章 清張映画の世界
ミステリを越えた物語ーー『砂の器』
戦後の混乱がもたらした事件ーー『ゼロの焦点』
悲劇に終わった少年の性の目ざめーー『天城越え』
弱い女性による復讐の悲しさーー『霧の旗』
絶望と罪悪感に揺れる父の姿ーー『鬼畜』
「明るい悪女」とエリートの対決ーー『疑惑』
詐欺事件の謎を追う素人探偵の旅ーー『眼の壁』
子供の姿に過去の自分を見た男ーー『影の車』
思わぬ偽証で破滅する男ーー『黒い画集 あるサラリーマンの証言』
第4章 清張作品への旅
松本清張の「地方性」
映画『張込み』の面白さ
『張込み』の風景を追って