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幸せつむぐ障がい者支援

デンマークの生活支援に学ぶ

著:小賀 久

紙版

内容紹介

「自立とは目標でなくプロセス、生き方の自由度の獲得であり、その拡大をいう」(本文より)
デンマークにおける障がい者支援の変遷と実際、考え方やしくみを具体的にわかりやすく紹介。支援の本質を究明し、誰もが幸せになるための社会的諸条件を提示する。

目次

はじめに

序 章 不寛容な社会を克服する道すじ
 1 「幸せになるために生まれてきた」
   デンマークという国
   不寛容な社会の日本
 2 民主主義の成果としてのノーマライゼーションとソーシャル・インクルージョン
   ノーマライゼーションとは
   ソーシャル・インクルージョンとは
 3 共生社会を幻想の社会としないために
   共生社会!?
   共に生きるための条件づくり
 4 デンマークから何を学ぶのか
 5 諦めてはいけないことを支える社会システム
   要求運動あるところに改革あり
   諦めない:自ら築いてきた社会問題解決のための方法とシステム

第1章 デンマークにおける施設“解体”の現実
 1 北欧における施設解体の現状
   スウェーデンの施設解体
   いち早いノルウェーの施設解体
 2 デンマークにおける施設解体の本当の姿
 3 施設解体の経緯
   1978年:アムト(県)が建設。入所者160名でスタート
   2010年:社会的批判と財政ひっ迫により3分割化
 4 本当に施設はなくなったのか―大規模施設から小規模施設へ
   「施設」解体―地域以降の考え方:スウェーデンとデンマーク
   地域密着型小規模施設
   選択可能な多様な居住形態を
 5 施設か地域かの議論を超えて

第2章 障がいのある人の地域生活を支える3つの拠点―親密な人間関係を公共の取り組みがつむぎだす
 1 地域で豊かな暮らしをつくる条件
   3つの拠点
   公的な生活基盤の支え
 2 暮らしの場―グループホーム
   グループホーム「ターストラップストレイド」の概要
   ラウストさんの1週間
   ラウストさんの生活背景
   ラウストさんの経済生活
   ラウストさんのグループホーム利用契約書
   枠組み法:自由度と地域格差
   グループホームの住まい方
 3 仕事・日中活動の場―学校、デイサービス
 4 趣味・交流の場―アクティビティセンター
   支援員の採用は利用者が決める
   信頼の高い政治システム
   出会いの場
 5 公共の取り組みは親密な人間関係を深め発展させる

第3章 生活施設における暮らしの充実と居住形態
 1 施設対策と地域対策の関係性を考える
 2 スーロン村の歴史的変遷
 3 スーロン村の利用
 4 スーロン村における障がい者支援と専門性
   スーロン村の住民間の交流
   スヌーズレンの取り組み
   STUの提供
   近隣住民との交流
 5 「地域」という名の呪縛からの解放を求めて
   危い「“施設生活”対“地域生活”」の捉え方
   すべての人が地域生活を実現するためには
   「地域」の呪縛を解き放つために
   障がい者施設の問題点と今後の取り組み

第4章 デンマークを知る―行政機構、コムーネ議会、そして行政システム
   デンマークを知るための基礎資料
   政治機構と行政組織
   自治体改革
   コペンハーゲンコムーネの議員、行政職員
   デンマークの労働政策―フレキシキュリティ
   国民の暮らし

第5章 障がい者団体の運動と活動
 1 LEV(全国知的障がい者親の会)思想と要求運動
   LEV(レウ)の結成と思想
   レウの課題と要求運動
   レウのめざすもの
   レウの活動
   前・全国会長シュター・クリステンセンさん
 2 パーソナル・アシスタンス制度と当事者組織「LOBPA」
   パーソナル・アシスタンス制度の成り立ち
   パーソナル・アシスタンス制度の法的根拠
   ヘルパー派遣企業の台頭
   当事者組織「LOBPA(通称:ロパ)」

第6章 人権としての性と平等―障がいのある人の性を支える
 1 国家による性の支配からの解放を求めて
   国家による性の支配
   専門性が問われる現場関係者、専門家
 2 性は平等と社会参加に重点をおいて
   3つの拠点と出会い
   性と生の支援は一体的に
   出産に関する考え方
 3 セックスカウンセラーの養成とその役割
   国家による性的支援
   セックスカウンセラーの資格取得
   セックスカウンセラーの存在と仕事
 4 障がいのある人の性的サービス
   障がいのある人、高齢者対象の売春宿“パイオニアライン”
   多様な支援で充実する日常生活
 5 性の権利を求める要求運動
   LGBTの祭典「コペンハーゲンプライド」
   同性婚法の表と裏
 6 性と結婚に表現されるソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)

第7章 デンマークに学ぶ障がいのある人の自立
 1 自立とは何か(1)
   国家が重用してきた自立概念
   「子どもの虐待対応の手引き」にみる政策が示す自立
 2 自立とは何か(2)―社会保障・社会福祉領域での研究が提示する自立論
   京極高宣氏の「自立」の定義
   目標到達型・課題達成型の自立論
   家族頼みの自立
 3 日本の国が求める自立―その批判的検討
   自立概念の利用
   個を単位とした自立観
   「自立支援」にみる、新たな形の社会防衛
 4 私たちが求める人間的自立
   日本の障がい者福祉政策に通底する自立像
   自立の実現をめぐって:田中昌人・真田是 vs 厚生労働白書
   デンマークの社会制度にみる人間的自立
   自由度の獲得と拡大を支える自立支援
   親密圏と人間関係
   新しい自立観のために
 5 まとめにかえて:「自立を支援する」という政策の欺瞞性

終 章 幸福を創造する社会的条件
   主観的な幸福度を求める政治は社会全体に寄与する
   デンマークにおける幸福研究
   幸せを測る物差し―GDPと主観的幸福
   OECD、WHOの調査が示す幸福の要素
   OECDによる幸福の指標
   所得格差は大きく、自殺率も高い日本社会
   国連、OECDによる幸福研究のススメ
   民主主義の成熟度は幸福度調査には表れない
   民主主義の成熟度はマイノリティを包摂する政策に表現される
   なぜ順法国家が断種法を成立させることができたのか
   優生思想を克服する社会
   健康を義務化する国家と優生思想
   価値ある人間関係を生み出しにくい仕組み
   価値ある人間関係を生み出すために
   生活の質(QOL)の高い暮らしこそが幸せの証

謝 辞

〈資料〉社会サービス法第95条・第96条:改正前/改正後

著者略歴

著:小賀 久
小賀 久(北九州市立大学文学部教授)

ISBN:9784589041128
出版社:法律文化社
判型:A5
ページ数:180ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2020年12月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS