国民皆保険の時代
一九六〇、七十年代の生活と医療
著:新村 拓
内容紹介
今年、国民皆保険制度は50 周年を迎えた。その意義と問題点を検証すべく、1960 〜70 年代までの高度経済成長期を軸に、医療の普及過程や、人びとの老いと病、そして死に対する意識の変化と、その変化をうながした生活の変容を跡づける。「生きること」の意味を求めて、庶民の暮らしに深く寄り添いつつ、社会史の視点から「老・病・死」を問い続けてきた著者の、医療と介護の未来への提言。
目次
第一章 国民皆保険への途
一 はじめに
二 成熟する医療化社会
三 医療保険を持つ者、持たない者
四 傷病から貧困、そして医療扶助へ
五 民間医療機関が担う国民皆保険
六 一九五〇年代の医療実態
七 国民皆保険前夜の医療課題
第二章 国民皆保険が進める医療の社会化
一 職域から地域に進んだ医療保険
二 出来高払いとした診療報酬
三 地域と職域からなる国民皆保険
第三章 医療を支える仕組みの変化
一 国民皆保険を嫌う医師、差別医療を疑う患者
二 社会の変化に追いつけない医療改革
三 経営の苦しさを訴える開業医
四 保険医総辞退に向けられた世間の目
第四章 変貌する社会のなかでの保健医療
一 安心と不安が交錯した一九六〇、七〇年代
二 景気と家計収入に左右される保健医療費
三 都市近郊農村にみる生活と医療
第五章 薬好きと薬づけ医療のはざま
一 モノと技術を分離する医薬分業
二 薬づけから検査づけ医療への転換とコメディカル
第六章 結核から成人病(生活習慣病)の時代へ
一 結核医療の盛衰
二 高度経済成長と歩んだ成人病(生活習慣病)
三 変わりゆく農村と医療衛生
第七章 医療施設からみた高度経済成長期
一 一九六〇年代の病院での看取り
二 医療法人が中心となった戦後医療体制
三 近づいた病院医療の時代
四 結核病床の時代から精神病床の時代へ
第八章 変化する開業医と患者の関係
第九章 社会的関心が高まった高齢者の医療と介護
一 高齢者の受療率を押し上げた国民皆保険
二 不足する老人福祉施設を補った医療法人
三 低成長がもたらした福祉の見直し
第一〇章 増えつづける医療費の重圧
一 曲折する高齢者医療
二 医療費の削減に向けた動き
第一一章 注視される医療倫理と医師患者関係の転換
あとがき
索 引