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叢書・ウニベルシタス 978

根源悪の系譜

カントからアーレントまで

著:リチャード・J・バーンスタイン
訳:阿部 ふく子
訳:後藤 正英

紙版

内容紹介

二十世紀の歴史に癒しえぬ傷を残した数々の大量虐殺のあとで、哲学は「悪」をどう語りうるのか。カントが創出した「根源悪」の概念を軸に、人間が罪悪を犯す生来の可能性や必然性を熟考した思想家の系譜──ヘーゲル、シェリング、ニーチェ、フロイト、レヴィナス、ヨーナス、アーレント──を鋭く一望する。弁神論による「悪」の正当化が困難な今日、倫理の根源を問い質す碩学の労作。

目次


緒論

第一部 悪、意志、自由

 第一章 根源悪──自分自身と戦うカント
  悪しき格率
  根源悪
  悪魔的な悪
  無制約的な道徳的責任

 第二章 ヘーゲル──〈精神〉の治癒?
  有限者と無限者
  悪と有限性
  アダムの堕罪
  悪の必然性と正当化?
  ヘーゲル対ヘーゲル

 第三章 シェリング──悪の形而上学
  実在的な悪
  根拠と実存
  我意と闇の原理
  悪の道徳心理学

 間奏曲

第二部 悪の道徳心理学

 第四章 ニーチェ──善悪の彼岸
  「よいとわるい」対「善と悪」
  弁証法的アイロニスト
  悪とルサンチマン
  善悪の彼岸
  悪についてニーチェから学ぶもの

 第五章 フロイト──根絶不可能な悪と両価性
  一群の兄弟たちが経験する両価性
  欲動論
  ニーチェとフロイト
  悪に対する責任

第三部 アウシュヴィッツ以後
 プロローグ

 第六章 レヴィナス──悪と弁神論の誘惑
  弁神論の終焉
  悪の現象学
  無限の責任

 第七章 ヨーナス──新しい責任の倫理
  ニヒリズムに対する応答
  悪とわれわれの黙示録的状況
  ヨーナスの神話を「脱神話化する」
  ヨーナスとレヴィナス

 第八章 アーレント──根源悪と悪の陳腐さ
  余計さ、自発性、複数性
  悪の意図と動機?
  アイヒマン──人間的な、あまりに人間的な

結論

原注
訳者あとがき
文献一覧
人名索引

著者略歴

訳:阿部 ふく子
1981年生まれ。日本学術振興会特別研究員(新潟大学)。共著書に『ヘーゲル体系の見直し』(理想社)、論文に「哲学と人間形成──ニートハンマーとシェリングの教養形成論をめぐって」(『シェリング年報』第19号)ほか。
訳:後藤 正英
1974年生まれ。佐賀大学准教授。共著書に『ユダヤ人と国民国家──「政教分離」を再考する』(岩波書店)、『ドイツ観念論を学ぶ人のために』(世界思想社)、共訳書に『シェリング著作集 (1b) 自然哲学』(燈影舎)ほか。

ISBN:9784588009877
出版社:法政大学出版局
判型:4-6
ページ数:438ページ
定価:4500円(本体)
発行年月日:2013年01月
発売日:2013年01月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDX