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平凡社新書 921

黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル

「反イラン枢軸」の暗部

著:宮田 律

紙版

内容紹介

地域の覇権を獲得しようとするサウジアラビアの
他国への干渉や国内における人権問題を、
米国が非難することはない。
また、パレスチナ問題においても、
「イスラムの盟主」を任ずるサウジアラビアが、
米国に異を唱えることもない──。
「反イラン」を軸に形成される“黒い同盟”。
その特殊な関係性の内実を読み解く。

目次

はじめに
他者への干渉を戒めるイスラム/人権危機をもたらすサウジのイエメン空爆
「向こう見ず」のムハンマド皇太子/サウジがイランを疎んじる背景
米国にとってのサウジの戦略的重要性/トランプ政権とサウジの蜜月
『ゴルゴ13』が見た米国・サウジの特殊関係

第一章 サウジ人記者殺害事件から露呈した闇
「カショギを何とかしろ」/「ごろつき国家」と同じ/ハディースが戒める「世界一の石油輸出国」
「百万人の死はもはや統計である」/外務省より予算が多いサウジ情報機関
サウジへの武器輸出を凍結したドイツ/連帯意識が崩壊したサウジ王政
カショギ記者が殺害される直前に語ったこと
「ムスリム同胞団のスパイ」呼ばわりされたショーン・ペン
アマゾンCEOを脅迫した親サウジの米国メディア/ムハンマド皇太子の奢侈
アルカイダの誕生をもたらしたもの/大義がないイエメン空爆

第二章 米国、サウジの特殊関係はいつから始まったか
欧米諸国の歓心を買うための武器購入/第一次石油危機と米国、サウジ
冷戦時代の記憶/反ソの冷戦戦略を担ったサファリ・クラブ
サウジ政府と密接だったビンラディン・ファミリー/サウジの国教、ワッハーブ派
アラブ・イスラムの大義とシーア派革命の脅威/軍事費の増加
メッカ大モスク占拠事件の衝撃/ニカラグア内戦にも関与したサウジ
「死の商人」アドナン・カショギ/湾岸戦争で強化された関係
国内で増幅された王政への不満

第三章 過激派を生んだ同盟関係
普及される「ワッハービー」/タリバンへのワッハーブ派の影響
急進的なデーオバンド派/ムジャヒディンへの支援/ヒズボラ指導者暗殺未遂事件
最大の「テロ支援国家」/サウジアラビアの鬼子/ビンラディンの師匠
王政は米国にだまされている?/米国とその同盟国へのジハード

第四章 九・一一をめぐる奇妙な関係
サウジ政府と九・一一の関連性/バンダル王子のロビー活動
バンダル王子に明かされた米国の戦争計画/米国防総省と武器商人カショギの癒着
黒い送金と賄賂/イラクの反政府シーア派組織
ブッシュ政権からスンニ派武装組織への資金提供/イスラエルとサウジの極秘関係
サウジのIS支援でシリア内戦が激化/クリントン国務長官の懸念
ムハンマド皇太子による外交政策の転換/サウジの黒いバンカー、マフフーズ
ブッシュ・ファミリーの闇/BCCIという共通項/ビンラディン一族と親しかったブッシュ・ファミリータリバンをめぐるサウジとチェイニー

第五章 「自由と民主主義」に反する同盟
バーレーンの「アラブの春」への弾圧/イランとの亀裂を深めたバーレーン危機
民主化要求運動という、もう一つの脅威/エジプトのムスリム同胞団への警戒
サウジがカタールの内政に干渉する理由/カショギ記者の警告
サウジによるカタール包囲網/カタール問題で湾岸アラブ諸国は分裂
急進的なパキスタンの神学校/サラフへの回帰を目指すアフレ・ハディース
パキスタンの過激派と共鳴するサウジ/米国の対アフガン政策の綻び
「ペルシア人はアラブの出来事に口出しすべきではない」
スーダン革命に介入するサウジ/リビア内戦におけるトランプの無責任
サウジとUAEは反動勢力を支持

第六章 反イラン枢軸──米国、サウジ、イスラエルの非神聖同盟
イランが暴発することを期待?/トランプ米大統領の思い込み
ご都合主義で変容する米国の中東での同盟国/パレスチナ問題で問われる王政の正統性
米軍のシリア撤収がもたらす中東地域の不安/支離滅裂なトランプ政権の対シリア政策
サウジへの核技術移転計画/限定的な核戦争を想定
イスラエルへの軍事援助で潤う米国の軍需産業/ゴラン高原をめぐる米国の無法
「『妄想男』の妄想」/国際社会が許容できないヨルダン川西岸併合
パレスチナ問題でも米国側につくサウジ/イランとの緊張を煽る枢軸

第七章 戦争を望む同盟
民意より兵器産業の利益を重視するトランプ
日本人の生活に直結する米国の対イラン制裁強化/強硬な対イラン政策の中心人物
戦争への夢想を語るボルトン補佐官/イラクの人々はポンペオの噓にだまされない
「シーア派の脅威」を強調/イランによる「イスラエル解体」は本気か
軍事的圧力は「自殺行為」/好戦的なサウジのメディア/噓で始まった戦争は噓で終わる

おわりに
トランプ米大統領の不合理な中東政策/「ペルシア人」が記録に残る最初
胆力が試される日本の中東外交/「黒い同盟」の不合理なからくり

著者略歴

著:宮田 律
1955年山梨県生まれ。現代イスラム研究センター理事長。83年慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院修士課程(歴史学)修了。専攻はイスラム地域研究、国際政治。著書に『黒い同盟 米国、サウジアラビア、イスラエル』『アメリカのイスラーム観』(以上、平凡社新書)、『武器ではなく命の水をおくりたい 中村哲医師の生き方』(平凡社)、『イスラムの人はなぜ日本を尊敬するのか』(新潮新書)、『石油・武器・麻薬』(講談社現代新書)など。

ISBN:9784582859218
出版社:平凡社
判型:新書
ページ数:272ページ
定価:900円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年09月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS