平凡社新書 796
真珠湾の真実
歴史修正主義は何を隠したか
著:柴山 哲也
内容紹介
日本はなぜ真珠湾を奇襲したのか。〈真珠湾〉の論点を整理。ルーズベルト陰謀論などの史実の誤謬と神話化の構造にメスを入れる。
目次
プロローグ
日本への国際的不信感の原点/安倍首相の弁明/「呪われた太平洋戦争の開幕」
第一章 真珠湾奇襲とは何だったか
ハワイ併合をめぐる日米の確執/繰り返された奇襲のシミュレーション
「我奇襲に成功せり」/淵田の日本海軍への失望/九人の「軍神」のすり替え
開戦初日に大本営がついた嘘/ミッドウェー海戦での貧弱なインテリジェンス
真珠湾のスパイの顛末
第二章 日系ハワイ人たちの真珠湾
敵と味方に分かれて戦った兄弟/日系初の米上院議員ダニエル・イノウエ
祖国をめぐる断絶/沖縄出身者の二重の差別/米軍兵士として沖縄戦に参加
捕虜となった友人と再会/知られざる「ニイハウの戦い」
戦後にニイハウ島を訪れた淵田/アイリーン夫人の戦後
邦字新聞の社説を書いた米軍/一世の間に広がった「勝った組」運動
第三章 「宣戦布告」の遅れは作為だったのか
「アメリカの汚辱の日」/神話化した大使館員怠慢説
「通告時の怠慢は、万死に値する」/なぜ「大至急マーク」がなかったか
トカゲの尻尾切りという悪しき慣例/郵便箱の電報の山の怪/証言における時間の食い違い
東郷外相の責任を軽減するための配慮/東京裁判対策のための問答マニュアル
軍部は事後通告を画策していた/幻の「宣戦布告」文書/敵を欺くには味方から
一五時間遅延の謎/瀬島龍三はルーズベルト親電差し止めに関与したか
誰が差し止めたのか/まるで他人事のような筆致/陸海軍による内乱の怖れ
加瀬の戦時と戦後の断絶
第四章 ルーズベルト陰謀論はなぜ流布したか
「日本を赤ん坊にしておけ」/陰謀論の心理的融和作用/歴史修正主義者の野望
スティネット書に見られる新説の展開/結果的に陰謀がなかったことを立証
ルーズベルト戦争責任論/共和党重鎮によるルーズベルト責任論
「開戦の罠にはめられた被害者」/ハル・ノートの意味
「ハル・ノートは最後通牒ではなかった」
第五章 開戦は避けられなかったか
アメリカが重要視した日本の中国侵略/ハル・ノートか暫定協定案か
日本の四つの選択肢/中国に肩入れした米メディア/アメリカ世論の日本への怒り
「中国を日本の魔手から救え」/反感を買ったルーズベルト夫人の対日姿勢
南北戦争以来のアメリカの危機/なぜハワイに警戒態勢を敷かなかったのか
最後の和平のチャンス
第六章 チャーチル陰謀論の正体
チャーチルの米議会演説/ウインド・メッセージを解読?/駐日大使グルーの報告
根拠となる情報は/盟友ルーズベルトへの裏切り/イギリスの暗号解読能力
暗号解読万能主義の罠/鍵をかけられたままのチャーチル機密情報
石油枯渇の背景から見える真珠湾
第七章 歴史修正主義の罠
キンメル名誉回復運動の顛末/日本の経済力に対する敗者意識
「歴史を書き直す」とはどういうことか/米国から出てきた日本の「修正主義批判」
東京裁判への丸投げと戦争責任総括の不在/「国体」から「肉体」へ
ゴール一周遅れのランナー/日本人の人格分裂
あとがき