文庫クセジュ
フランスの宗教戦争
著:ニコラ・ル・ルー
訳:久保田 剛史
内容紹介
1562年から1598年のあいだ、フランスで八度にわたる宗教戦争が繰り広げられた。これは宗教間の対立であるとともに、貴族間の派閥闘争でもあった。
16世紀初頭、ルターの思想がフランスにも広まりはじめた。この時代は、印刷術が目覚ましく発展した時期であり、フランス語に翻訳された聖書によって、人びとは神の言葉を直接読むことが可能になった。このキリスト教の原初的純正への回帰は、旧教会への「抗議」となる。一方で、印刷術は風刺や誹謗文書にも使用され、人びとの政治意識は高まり、前例のない戦争へと発展していった。陰謀、暗殺、檄文……。貴族たちはつねに剣を身につけ、ためらうことなく刀を抜くようになり、かつての騎士道精神は失われていった。
本書は、フランス社会が著しく政治化されていくなかで、宗教戦争が果たした役割を描き出す。
目次
はじめに
第一章 神とその民
一 福音の呼びかけ
二 火刑と殉教者
三 改革派の集い
四 信教の自由を求めて
五 ユグノーたちの熱狂
第二章 君主が子供の国
一 結集と緊迫
二 陰謀の時期
三 会合の時期
四 世俗的寛容という窮策
五 女性による統治―カトリーヌ・ド・メディシス
第三章 戦争と平和
一 武装蜂起の理由
二 暴力――信仰の表現?
三 ヨーロッパの政治舞台
四 和平回復の方法
五 統一の再形成
第四章 恐怖の席巻
一 一つの転換期――モーの奇襲
二 差し迫る敵
三 聖戦の精神
四 戦いの年
五 不信の中で生きること
第五章 闇の奥
一 聖バルテルミーの虐殺
二 クーデターの誕生
三 暴政に対抗して――基本法と契約主義
四 ユグノーの抵抗
五 党派的境界と宗派的境界の曖昧化
第六章 国家か宗教か
一 カトリックの共謀――旧教同盟
二 国王の暗殺
三 統治のための交渉――アンリ四世
四 共生――ナント王令の体制
おわりに
訳者あとがき/地図/関連家系図/フランス宗教戦争略年表/参考文献