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流木記

ある美術館主の80年

著:窪島 誠一郎

紙版

内容紹介

二つの喪失からの再出発

 2022年5月、「無言館」は開館25周年を迎える。戦没画学生の作品を展示するこの私設美術館には毎年多くの見学者が訪れ、館長として活躍する著者の評価も高い。
 しかしながらここ数年、著者は二つの大きな喪失を体現した。
 一つは「無言館」の本家ともいえる「信濃デッサン館」を閉館したことである。このデッサン館は、著者が畏怖する村山槐多など、夭折した画家たちの作品や関係資料などを収蔵・展示してきたが、運営が困難となり、長野県立美術館に多くを売却・譲渡することとなった。
 もう一つは10万人に1人以下という陰茎癌と診断され、手術によってペニスを失ったことである。長年疥癬に苦しんだり、講演中に脳出血で倒れたりと、病気につきまとわれる著者にとって、これは人生を見つめ直すほどの大きな衝撃だった。
 この二つの大きな喪失によって、出生から現在まで、改めて半生を振り返り、自らの存在を確かめようとしたのが本書である。あえて負の部分を晒すことで、逆に傘寿を超えた著者の新たな野望すら見て取れ、不思議な共感を呼び起こす自伝的作品ともいえる。

著者略歴

著:窪島 誠一郎
1941年東京生まれ。印刷工、酒場経営などを経て1964年、小劇場の草分け「キッド・アイラック・アート・ホール」を設立。1979年、長野県上田市に夭折画家の素描を展示する「信濃デッサン館」を創設。1997年、隣接地に戦没画学生慰霊美術館「無言館」を開設。2005年、「無言館」の活動により第53回菊池寛賞受賞。おもな著書に『「無言館」ものがたり』(第46回産経児童出版文化賞)、『鼎と槐多』(第14回地方出版文化功労賞)、『「無言館」への旅』、『粗餐礼讃 私の「戦後」食卓日記』『父 水上勉』『母ふたり』など。

ISBN:9784560098943
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:258ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2022年03月
発売日:2022年03月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ