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J・M・クッツェー 少年時代の写真

著:J・M・クッツェー
編:ハーマン・ウィッテンバーグ
訳:くぼた のぞみ

紙版

内容紹介

写真とフィクションの関係をひもとく

「真実があらわになる瞬間に立ち会うこと、それに興味があったんだと思う。半分は発見されるが、もう半分は創造される瞬間に。」――J・M・クッツェー
アパルトヘイトが強化されていく1950年代、クッツェー自身がケープタウンのカレッジ時代(12歳~16歳頃)に撮影した貴重な写真が2014年に見つかった。作家が10代のころ、写真家になりたいと思っていたということは最近まであまり知られていなかった。『少年時代』の世界が目の前に立ち現れたような131点の写真をクッツェー研究者のハーマン・ウィッテンバーグが分析し、編んだのが本書である。写真とフィクションがどう結びついているのかを考察する最良の資料だ。
学校の友人や教師をスパイカメラで盗み撮りした写真、スポーツイベントの様子、ケープタウンの自然環境や建物、受け継がれてきたカルーの農場と労働者など生活の様子を撮影した写真だけでなく、人種隔離政策が浸透していった50年代の南アフリカの政治状況を記録する写真もある。そこから、自身が身を置く特権的な白人世界の境界を押し広げようとする作家の姿が見えてくる。また、初めて公開される16歳の蔵書の写真からは、作家の自己形成期への影響が見て取れる。クッツェーのインタビューも収録!

目次

Ⅰ これまでの経緯について
Ⅱ 作家になる前
Ⅲ 『少年時代』の写真
    家族と家
    フューエルフォンテイン
    聖ジョゼフ・マリスト・カレッジ
    動きと光の実験
    ケープタウンの風景 
Ⅳ 写真のことを思い出すと
──ハーマン・ウィッテンバーグによるJ・M・クッツェーへのインタビュー
Ⅴ 最初のライブラリー

原註
訳者あとがき

著者略歴

著:J・M・クッツェー
1940年、南アフリカ・ケープタウン生まれの作家。74年『ダスクランズ』でデビュー。『マイケル・K』(83年)、『恥辱』(99年)で英ブッカー賞を史上初の二度受賞し、2003年にノーベル文学賞を受賞、現代の最重要作家の1人と評される。著書に、自伝的三部作『サマータイム、青年時代、少年時代』、『鉄の時代』、『モラルの話』、『夷狄を待ちながら』、『イエスの幼子時代』、『イエスの学校時代』などがある。
編:ハーマン・ウィッテンバーグ
ウェスタンケープ大学の英語文学准教授。クッツェーをはじめとする南アフリカの作家を広く歴史的視野に置いて研究。本書写真集のほか、クッツェーの初期作品のシナリオ2篇を編集出版し、この作家とともに多様なプロジェクトを展開している。
訳:くぼた のぞみ
北海道生まれ。翻訳家・詩人。
訳書に、J・M・クッツェー『マイケル・K』、『鉄の時代』、『サマータイム、青年時代、少年時代』、『ダスクランズ』、『モラルの話』、J・M・クッツェー&ポール・オースター『ヒア・アンド・ナウ』(共訳)、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『なにかが首のまわりに』、『アメリカーナ』、『半分のぼった黄色い太陽』、『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』、『イジェアウェレヘ フェニミスト宣言、15の提案』、サンドラ・シスネロス『マンゴー通り、ときどきさよなら』、『サンアントニオの青い月』ほか多数。
著書に『J・M・クッツェーと真実』、『山羊と水葬』、『鏡のなかのボードレール』など。詩集に『風のなかの記憶』、『山羊にひかれて』、『愛のスクラップブック』、『記憶のゆきを踏んで』がある。

ISBN:9784560098691
出版社:白水社
判型:A5
ページ数:198ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2021年10月
発売日:2021年10月19日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB