禅と浪漫の哲学者・前田利鎌
大正時代にみる愛と宗教
著:安住 恭子
紙版
内容紹介
荘子をひもとく、新宗教と自由恋愛の時代!
荘子をもひもとく、新宗教と自由恋愛の時代! 夏目漱石の「最後の弟子」が愛したのは、平塚らいてうの姉だった─。自由を欣求した前田利鎌の遺稿をもとに、近代日本の思潮をさぐる評伝。
東工大教授になってまもなく三二歳で夭折した前田利鎌は、東京帝大哲学科卒。スピノザやニーチェなど西洋哲学、荘子や禅などの仏教哲学を幅広く研究した宗教哲学者だった。
〈利鎌は漱石の門に最年少で入り、学び、書き、淪落の恋を識り、座禅に我を忘れ、生に身を焦がし、燃え盛りながら死んでいった。/孝子とらいてうも同様だ。大正の爛熟したデカダンスの徒花というなかれ。三人は旧弊な社会風紀や硬直した倫理、常識に抗った。自らに由って立つ近代人の肖像、自由と解放、照応と合一、天才と超人、各々がそれらを希求した〉(諏訪哲史「推薦者の言」より)。
らいてふの姉・孝子、漱石ら知識人─日本のフェミニズムと近代文学のはじまりとが画されたところで懊悩した人々を、貴重な資料をもとに書き上げたノンフィクション。
禅や大本教をめぐる宗教論であると共に、マインドフルネスについて考えさせられる一冊。