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三島の子どもたち

三島由紀夫の「革命」と日本の戦後演劇

著:日比野 啓

紙版

内容紹介

劇作におけるフォルマリストの系譜

 歌舞伎を「旧劇」とした新劇は、1960年代後半〜70年代前半にアングラ演劇によって乗り越えられたのだ──といった歴史観が、今も大勢を占めている。新劇とアングラには巷間言われるほど断絶はなく、明治期以来の非伝統的な演劇はみな小劇場というカテゴリで括られうる──といった見方もあるが、それはまだ少数派だ。本書は、この2つの史観を包含する視座を提示し、その鍵は三島由紀夫であると主張する。
 アングラ以後の世代の劇作家たちを「三島の子どもたち」と見なそう。アングラとその後の小劇場は、三島の開き直りの上に開花した運動だ。原型的モチーフを織りなおす三島の「意匠」は井上ひさしと寺山修司を後押しし、「本物/贋物の対立」という三島のテーマは、別役実、つかこうへい、野田秀樹や平田オリザまでもが駆使するツールとなった。
 三島由紀夫の「遺伝子」は、演劇においてどのように継承されたか? 岸田國士や福田恆存を皮切りに、アングラからメタシアター、アンドロイド演劇まで、50年間の劇作家たちによる「様々なる趣向」を検証! 松尾スズキやケラリーノ・サンドロヴィッチ、岡田利規や藤田貴大ら現代演劇の旗手も視野に収め、索引も完備した、正統なる現代演劇史。

著者略歴

著:日比野 啓
1967年福岡県生まれ。演劇史・演劇理論。成蹊大学文学部教授。東京大学大学院人文科学研究科(文学修士)、The Graduate School of The City of New York (M. Phil)。東京大学大学院総合文化研究科助手、成蹊大学専任講師、助教授、准教授を経て、現職。著書に『アメリカン・ミュージカルとその時代』(2020)。編著書に『戦後ミュージカルの展開』(森話社、2017年)、『アメリカン・レイバー 合衆国における労働の文化表象』(彩流社、2017年)ほか。共著に『演劇とメディアの20世紀』(森話社、2020年)、『アメリカ文化事典』(丸善出版、2018年)、『日本戯曲大事典』(白水社、2016年)ほか。訳書にマイク・デイヴィス『要塞都市LA増補新版』(青土社、2008年)ほか。

ISBN:9784560098103
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:280ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2020年12月
発売日:2020年12月24日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AT