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第三帝国を旅した人々

外国人旅行者が見たファシズムの勃興

著:ジュリア・ボイド
訳:園部 哲

紙版

内容紹介

有名無名の180人が「呟いた」ナチスの台頭

 第一次大戦後まもない1918年から第二次大戦終結の45年まで、とりわけナチスの勃興から隆盛時のドイツ社会と歴史的事件や出来事について、第三帝国を訪れた各国からの旅行者、外交官、政治家、ジャーナリスト、学者、ベルリン・オリンピックに参加した外国人選手らの残した日記、手記、記事、回想録などを集め、その肉声を再現する歴史書。
 著者は、戦後の知恵や常識に汚されていない、その時その場で書き記された一次資料を蒐集し、第三帝国に対する直接的で、正直な「呟き」をタイムカプセルのなかに閉じこめた。歴史的、客観的判断とは無縁かつ自然体で記録された、有名無名の180人の率直な反応や意見は、現代社会のSNSに相当するだろう。逆説的な言い方をすれば、むしろ井蛙の見であるからこそ興味深いとも言える。
 一般人が旅行者や生活者の立場で、街路・宿舎・自宅で感じ、考えた、手垢のつかぬ生々しい記録を基に、「ファシズムの勃興」を再構築してみせた画期的な作品。統制と迫害、侵略と戦争へ徐々に歩み始める第三帝国と現代社会を重ねてみるのは、考えすぎだろうか。地図・口絵写真・旅行者人名録収録。

著者略歴

著:ジュリア・ボイド
ロンドン在住の歴史作家。夫君の故サー・ジョン・ボイドは外交官で、一九九二年から九六年までは在日英国大使として夫婦共々東京で暮らしていた。東京滞在の成果として、明治の日本にやってきてハンセン病患者の救済に努めた英国婦人、ハンナ・リデルの伝記をものにしている(邦訳『ハンナ・リデル―ハンセン病救済に捧げた一生』日本経済新聞出版)。また、北京滞在時に着想を得た、清朝末期から毛沢東の時代、義和団の乱から中国共産党の勝利までの時代に北京に住んでいた外国人たちの暮らしを描くA Dance with the Dragon: The Vanished World of Peking's Foreign Colony(2012)を刊行している。本書では、世界五十二個所の図書館・公文書館で資料にあたり、著作・日記・書簡の書き手とした引用された「旅行者」の数は一八〇人に及ぶ。
訳:園部 哲
翻訳家。一橋大学法学部卒業。訳書に『北朝鮮 14号管理所からの脱出』『アジア再興』『アメリカの汚名』『ニュルンベルク合流』『エリ・ヴィーゼルの教室から』『上海フリータクシー』(以上、白水社)ほか多数。ロンドン在住。

ISBN:9784560097854
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:474ページ
定価:4400円(本体)
発行年月日:2020年09月
発売日:2020年09月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1DFG