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アレクシス――あるいは空しい戦いについて/とどめの一撃

著:マルグリット・ユルスナール
訳:岩崎 力

紙版

内容紹介

ユルスナール没後30年記念
 ユルスナール(1903-87)が「自作」と認めた最初の作品である『アレクシス』と、36歳のときに刊行された『とどめの一撃』。作家が『ハドリアヌス帝の回想』で世界的な名声を得る以前の、初期の代表作2篇をセレクトした。
 ボヘミアの若い音楽家であるアレクシスが、「せめて自分自身の道徳には悖らぬよう」生きるべく、妻モニックのもとを去るために書き残した手紙の形をとった『アレクシス』。ユルスナールはこの中篇について後年のインタビューで、リルケの強い影響のもとで書かれたと語っている。いっぽうの『とどめの一撃』は、ロシア革命と大戦によって孤立したバルト海沿岸の片田舎を舞台に、三つ子のような三者による愛の悲劇を描いたものだが、実際に起こった出来事に着想を得たという。
 物語はいずれも主人公の声で語られるが、その「意志的に抑制した語調とほとんど抽象的な文体」は微妙なほのめかしに満ちており、須賀敦子氏はこれを『ユルスナールの靴』のなかで、「木陰のような、深い陰翳の気配がある」と評した。
 ユルスナール・セレクション3に収められた堀江敏幸氏のエッセイを巻末に再録。略年譜付き。

著者略歴

著:マルグリット・ユルスナール
1903年ベルギーのブリュッセルで、フランス貴族の末裔である父とベルギー名門出身の母とのあいだに生まれる。本名マルグリット・ド・クレイヤンクール。生後まもなく母を失い、博識な父の指導のもと、もっぱら個人教授によって深い古典の素養を身につける。1939年、第二次世界大戦を機にアメリカに渡る。51年にフランスで発表した『ハドリアヌス帝の回想』で、内外の批評家の絶賛をうけ国際的な名声を得た。68年、『黒の過程』でフェミナ賞受賞。80年、女性初のアカデミー・フランセーズ会員となる。母・父・私をめぐる自伝的三部作〈世界の迷路〉――『追悼のしおり』(1974)、『北の古文書』(1977)、『何が? 永遠が』(1988)――は、著者のライフワークとなった。主な著書は他に『東方綺譚』(1938)、『三島あるいは空虚のビジョン』(1981)など。87年、アメリカ・メイン州のマウント・デザート島にて死去。
訳:岩崎 力
1931-2015。フランス文学者、翻訳家、東京外国語大学名誉教授。東京大学教養学部大学院人文科学研究科比較文学比較文化修士課程修了。1971-72年パリ第七大学講師。1986-88年パリ国際大学都市日本館館長。著書に『ヴァルボワまで 現代文学へのオベリスク』。訳書にマルグリット・ユルスナール『黒の過程』『流れる水のように』『目を見開いて』『世界の迷路Ⅰ 追悼のしおり』、クロード・シモン『歴史』、フィリップ・ソレルス『公園』『ドラマ』『黄金の百合』『ゆるぎなき心』、ジョージ・D・ペインター『マルセル・プルースト――伝記』、ヴァレリー・ラルボー『罰せられざる悪徳・読書』『幼なごころ』、ロラン・バルト『作家ソレルス』(共訳)、スーザン・ソンタグ『アルトーへのアプローチ』ほか多数。

ISBN:9784560095928
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:254ページ
定価:3400円(本体)
発行年月日:2017年12月
発売日:2017年12月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB