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金日成と亡命パイロット

著:ブレイン・ハーデン
訳:高里 ひろ

紙版

内容紹介

脱出計画に5年半、飛行時間は17分
 朝鮮戦争の休戦協定が締結された直後の1953年9月、朝鮮人民軍のパイロット、盧今錫(ノ・クムソク)中尉の操縦するミグ15戦闘機が軍事境界線を越え、突如、韓国の金浦空軍基地に着陸。北朝鮮軍の現役パイロットが亡命したというニュースは、瞬く間に世界中を駆け巡った。
 本書は、のちに渡米し、アメリカの市民権を得る盧今錫の半生と、抗日ゲリラから北朝鮮の最高指導者となり、独裁体制を確立して「偉大なる首領」と呼ばれるようになった金日成の成り上がりぶりを並行して描いたノンフィクションである。本書で主に描かれるのは、金日成が抗日パルチザンとして頭角を現しはじめた1938年から、第二次世界大戦を経て朝鮮戦争休戦に至るまでの間。一人の亡命者の足跡を主眼として、北朝鮮の欺瞞に満ちた成立過程を描いた現代史の記録ともいえる。
 金日成のなりふり構わぬエゴと指導者としての無能ぶりに加え、米中ソのパワーゲームの駒にされながらも、逆にそれを利用して独裁を確立しようとするしぶとさが際立つ。
 新たに公開された資料や証言によって数々のエピソードを積み重ね、冷戦期における巨頭たちの思惑と一亡命者の数奇な運命を重層的に描いた傑作。

著者略歴

著:ブレイン・ハーデン
ジャーナリスト。1952年、米国ワシントン州生まれ。シラキュース大学大学院でジャーナリズムを専攻。『ワシントン・ポスト』の東アジア、東欧、サハラ以南アフリカなどの各支局長を歴任し、現在は米国PBSのドキュメンタリー番組『フロントライン』や英国『エコノミスト』のリポーターとして活躍。著書にEscape from Camp 14 (Viking, 2012)(邦訳『北朝鮮 14号管理所からの脱出』園部哲訳、白水社)、Africa: Dispatches from a Fragile Continent (Norton, 1990) 、A River Lost: The Life and Death of the Columbia (Norton, 1996) がある。
訳:高里 ひろ
翻訳家。上智大学卒業。訳書にトム・リース『ナポレオンに背いた「黒い将軍」』(白水社)ロイ・バレル『絵と物語でたどる古代史』(晶文社)、アラン・ワイズマン『奇跡のエコ集落 ガビオタス』(早川書房)、ジャック・エル=ハイ『ナチスと精神分析官』(角川マガジンズ)など。

ISBN:9784560084847
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:320ページ
定価:2400円(本体)
発行年月日:2016年05月
発売日:2016年05月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DNB