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「自傳」をあるく

著:窪島 誠一郎

紙版

内容紹介

自伝を読み解く魅力を探る
 本書は「無言館」館主が、自らの「生」と「性」とを重ね合わせながら、先人たちの自伝を読み解く、一風変わった読書案内である。
 数ある自伝の中から採り上げられているのは、大岡昇平『幼年』『少年』、室生犀星『性に眼覺める頃』、相馬黒光『黙移』、山口瞳『血族』の五作品。
 『幼年』『少年』は作家の「自意識」と「性」の生長過程を入念に掘りおこした作品で、全体に流れるストイシズムとも自己抑制ともつかぬ文章の諧調に魅了されるという。
 『性に眼覺める頃』に著者は、生母を知らぬまま育った生いたちと重ね合わせ、この作家にある倒錯的な性向や嗜虐的な生活に奇妙なシンパシーを感じとっていく。
 『黙移』の魅力は、大正、昭和という時代に自由を求めて生きた一人の女性烈士の言葉一つ一つが、少女の手紙のようにまっすぐに届くところにあるという。
 『血族』では、作家が血の真実に向かって歩く業の悲しみがあると著者は指摘し、「自伝中の自伝」と絶賛している。
 総じて「自伝」ほど、読み手にとって作家の余罪を追及する楽しみの与えられている読みものはないと、その魅力に迫っていく。

目次

大岡昇平『幼年』『少年』
室生犀星『性に眼覺める頃』
相馬黒光『黙移』
山口瞳『血族』

著者略歴

著:窪島 誠一郎
1941年東京生まれ。印刷工、酒場経営などを経て1964年、小劇場の草分け「キッド・アイラック・アート・ホール」を設立。1979年、長野県上田市に夭折画家の素描を展示する「信濃デッサン館」を創設。1997年、隣接地に戦没画学生慰霊美術館「無言館」を開設。2005年、「無言館」の活動により第53回菊池寛賞受賞。おもな著書に『「無言館」ものがたり』(第46回産経児童出版文化賞)、『鼎と槐多』(第14回地方出版文化功労賞)、『「無言館」への旅』、『粗餐礼讃 私の「戦後」食卓日記』『父 水上勉』『母ふたり』など。

ISBN:9784560084724
出版社:白水社
判型:4-6
ページ数:292ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2015年11月
発売日:2015年11月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ