裁判官の書架
著:大竹 たかし
内容紹介
前東京高裁裁判長の読書術
しかつめらしいイメージのつきまとう裁判官が、ふだんは法律書以外にどんな本を読んでいるのだろうか。前東京高裁の裁判長が、そうした読者の好奇心に応えたのが本書で、約40年にわたる日々の中で、印象に残った20冊の本を紹介していく。
採り上げられているのは、坂口謹一郎『君知るや名酒泡盛』、司馬遼太郎『愛蘭土紀行』、萩原延壽『遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄』、足立巻一『やちまた』、須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』など多種多様。いずれも任地での日々と関連が深く、いうなれば書評を通じての自伝風読み物としての趣もある。
どれも深い読み込みを基に、裁判官としての日常と対比させながら、作者に敬意を払い、テーマを掘り下げていく態度に共鳴される。
なかでも、法律の専門家ならではの指摘にはっとさせられることも多い。ジョン・モーティマー『壊れた舟にすがりついて』では英国の法廷弁護士の役割など、日本と異なる裁判制度を具体的に説明したり、カズオ・イシグロ『日の名残り』で、英国の民事裁判制度に言及しながら、戦争に対する貴族社会の反応を述べるあたりは、よくある書評とは異なる新しい発見があって、読書の楽しみをより深化させてくれる。
目次
Ⅰ
中野好夫『アラビアのロレンス』
吉田満『戦艦大和ノ最期』
坂口謹一郎「君知るや名酒泡盛」
尚順『松山王子尚順遺稿』
ジョン・モーティマー『壊れた舟にすがりついて』
司馬遼太郎『愛蘭土紀行』
萩原延壽『遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄』
Ⅱ
足立巻一『やちまた』
杉浦明平『小説渡辺崋山』
子母澤寛『新選組始末記』
カズオ・イシグロ『日の名残り』
須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』
藤木久志『雑兵たちの戦場』
千松信也『ぼくは猟師になった』
平山優『検証 長篠合戦』
Ⅲ
矢野誠一『落語食譜』
アーザル・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』
渡辺京二『逝きし世の面影』
イアン・マキューアン『甘美なる作戦』
我妻榮『民法講義』
あとがき