出版社を探す

白水Uブックス

義とされた罪人の手記と告白

著:ジェイムズ・ホッグ
訳:高橋 和久

紙版

内容紹介

17世紀末のスコットランド、地方領主コルウァンの二人の息子は、両親の不和により別々に育てられた。明朗快活で誰にでも愛される兄ジョージと、厳格な信仰をもつ母親のもとで陰鬱な宗教的狂熱の虜となった弟ロバート。自分が神に義認されあらゆる罪を免れていると信じるロバートは、17歳の誕生日に出会った不思議な力を持つ人物に唆されるまま、恐ろしい行為を重ねていく。変幻自在にその姿を変える〝謎の友人〟の正体は? そして政治的対立に揺れる議会開催中のエディンバラで、兄弟の宿命的な確執はついに衝撃の結末へ……。奇怪な事件の顚末が異なる視点から語られ、重層するテクストが読者を解釈の迷宮へと誘う。小説の可能性を極限まで追求し、アラスター・グレイらの現代作家にも多大な影響を与える、ゴシック小説隆盛の掉尾を飾る傑作にして早過ぎたポストモダン小説。(『悪の誘惑』改題)

著者略歴

著:ジェイムズ・ホッグ
スコットランドの詩人・小説家。1770年、スコットランド南部エトリック近郊の借地農家に生まれ、農場の使用人、羊飼いとして働きながら独学で読み書きを覚え、詩や戯曲の創作を始めた。1800年作の「ドナルド・マクドナルド」は国民的愛誦歌となり、『スコットランド辺境歌謡集』編纂中のウォルター・スコットと古謡の提供を契機に親交を結ぶ。詩集『山の吟詠詩人』(1807)が評価され、1810年にエディンバラで本格的な文学活動に入る。詩集『女王の夜祭』(13)、『詩鏡』(16)を刊行、1817年創刊の『ブラックウッズ・マガジン』に寄稿した諷刺的な記事で有名となるが、自身も「エトリックの羊飼い」としてパロディの対象となる。その後小説に転じて、スコットランドの歴史に取材した『ボズベックのブラウニー』(18)、『男の三つの危険』(22)、『女の三つの危険』(23)などを発表。ゴシック小説『義とされた罪人の手記と告白』(24)は20世紀に再評価され、現在では最も重要なスコットランド文学/英文学作品の一つと目されている。1835年死去。
訳:高橋 和久
英文学者。1950年東京都生まれ。京都大学文学部卒業。東京大学名誉教授。著書に『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック』(研究社)、『19世紀「英国」小説の展開』(共編著)、『別の地図 英文学的小旅行のために』(以上松柏社)、訳書にジョージ・オーウェル『1984年』、アラスター・グレイ『哀れなるものたち』(以上ハヤカワ文庫)、同『ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど』(白水社)、ジョゼフ・コンラッド『シークレット・エージェント』(光文社古典新訳文庫)など。

ISBN:9784560072523
出版社:白水社
判型:新書
ページ数:392ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年03月29日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB