関係を育てる心理臨床
どのようにこころをかよわせあうのか 専門家への手びき
著:田中 千穂子
内容紹介
心理臨床の現場に出て40年。みずからを育ててくれた3つのケースを丹念に描き出し、心理臨床の真髄を示した渾身の書き下ろし。
目次
刊行に寄せて……………神田橋條治
はじめに
待合室からはじまる「はじめまして」
子どもはからだの感覚でキャッチする
からだを介した共感
「生きた発達」に出会う
こころを動かし、自分の気持ちをつかうこと
心理臨床家の仕事
なぜ私は専門用語をつかわないようにしているのか
第1章 発達相談という心理臨床
発達相談って?!
発達相談の様相
1 子どもの側の視点から
赤い輪の魔法
三人で一緒の空間を
からだの張りと精神発達との関係
発達課題で母子をつなぐ
読みとってくれる他者がいることで
より細やかにモノと関われるように
母子の間にかけるかけ橋
2 お母さんの側の視点から
穏やかさという不思議な出会い
インタビューから見えてきた世界
わが子をひきうけるための知恵として―強い響きをもつふたつのことば
気持ちのかたまりが溶けてゆくように
過剰にいれこむ時期もきて
自分に期待したりがっかりしたりをくり返し……
3 ミカちゃんとお母さんのケースから
はじめて会った時のお母さん
はじめて会ったときのミカちゃん―弱々しくだけど笑ったよ
二回目以降一歳まで―子どもの発達に希望が持てるということ
一歳をすぎて二歳まで―モノを投げる、かんしゃくをおこす
お母さんが子育ての協力者をふやしていく
二歳をすぎて―ミカちゃん、ふたたび落ち着く
三歳以降―プレイルームでの関わりで
お母さんとまわりの関係がやわらかくなる
四歳以降学齢期まで―家族の関係もより豊かに
あらためてケースから感じ、考えたこと
第2章 ひとりぼっちの世界から関係性の世界への旅
――抱える関係に支えられて
なぜこのケースを書くのか
1 彼女が病院にきて、ここで相談をすることにきめるまで
初回の関わり
以降五回目までの関わり
2 最初の一年目が終わる頃までの面接
〝あれ〟と〝これ〟がごっちゃになる
話したいことを話せるようにメモをとる
なじりあいのけんか面接とそこから得た気づき
これまで自分を支えてきたもの
3 二年目(翌年の一月~一二月) の面接のなかから
前の治療者のメッセージの翻訳を
一度つながった関係は続いてゆく
自分の不安に気づいてゆく
押し込めてきた自分の気持ちが蘇ってくる
おっさんと大おっさんの関係をたとえとして
どう生きてゆくかの迷い
4 三年目の面接のなかから
バラバラだったものがつながってゆく
雰囲気の世界が彼女を支える
肝心なところは〝横並び〟の関係で
手紙をめぐって
5 四年目の面接のなかから
ひとのせいにする
余裕がでてきて素直になって
先生抱きついてもいいですか
一生懸命考えて
セラピーがふつうの雰囲気になってきた
6 五年目の面接のなかから
留学の話と関係を育てること
思わずでた捨てゼリフ
危機を何とかのりこえて
自分の足で歩いている感覚
頼れる人や助けてくれる人がふえてきて
仕事という現実的な問題をめぐって
次の危機とたちなおり
なまなましく言う、は彼女の工夫
キャッチボールがうまくなる
7 留学中と戻ってから
あらためてケースから感じ、考えたこと
第3章 私の話を聞いてください――重度に近い中度知的障碍のある女性が自
分につながってゆく旅
なぜこのケースを書くのか
1 カナさんとの出会い
相談がはじまるまでの経過
2 相談の経過をたどりながら
第一期(半年がすぎる頃まで)―関わり方の模索がはじまる
第二期(二年半がすぎる頃まで)―自分の思いをことばでつかむ
第三期(四年半がたつ頃まで)―内面をかたることばがふえてゆく
てくる
第四期(五年半がたってくる)―自分で自分を励まして
第五期(七年目がすぎる頃まで)―人としての厚みと幅がふえてくる
第六期(九年目になる頃まで)―母と娘が別々にくるようになる
第七期(一 年目がすぎるまで)―人との関係性のなかで生きる
その後の経過
3 あらためてケースから感じ、考えたこと
見えにくい知的障碍の人たちのこころの世界
ことばにいのちを吹き込ませるこころの通いあい
たっぷりとした時間とこころの育ち
Aさんとは何だったのか?―空想の世界の友という支えをもって
わかろうとするこころが相手とつながる
文 献
おわりに
ISBN:9784535564008
。出版社:日本評論社
。判型:4-6
。ページ数:288ページ
。定価:2200円(本体)
。発行年月日:2021年03月
。発売日:2021年03月24日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MKM。