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The Frontiers in Life Sciences

オートファジー 分子メカニズムの理解から病態の解明まで

監:大隅 良典
他編:吉森 保
他編:水島 昇

紙版

内容紹介

オートファジーの分解/リサイクルの分子機序,神経変性疾患・がん・2型糖尿病・心不全・感染症などとの関わりが明らかにされ,2016年ノーベル賞受賞を契機に着実な基礎研究の重要性が注目されている.オートファジー研究の最新知見について第一線で活躍する研究者がわかりやすく解説した待望のレビュー集.

目次

総 論   吉森 保
 1 オートファジーとは何か
 2 オートファジー関連因子と基本メカニズム
  1.オートファジーを駆動・制御するタンパク質
  2.オートファゴソーム膜の起源
 3 オートファジーが関連する疾患


第Ⅰ部 オートファジー研究のこれまでの歩み
第1章 オートファジー研究の歴史(ATG以前)   上野 隆
 1-1 リソソームの発見からオートファジーの概念の確立まで
 1-2 プレATG時代のオートファジー研究の成果
  1.オートファジーの飢餓誘導と非選択性
  2.グルカゴンとインスリンによるオートファジーの調節
  3.アミノ酸によるオートファジーの調節
  4.培養細胞によるオートファジー研究
  5.オートファゴソーム膜の起源を巡って

第2章 酵母が切り開いたオートファジー研究の曙   野田 健司
 2-1 酵母のオートファジー研究の源流
 2-2 酵母におけるオートファジーの発見
 2-3 apg変異株の単離
 2-4 APG遺伝子の同定
 2-5 ATGへの統合
 2-6 Atg間の関係性の氷解


第Ⅱ部 オートファジーの分子機構
第3章 オートファジーの誘導と抑制をつかさどる2つのキナーゼAtg1/Ulk1とTORC1   荒木 保弘・野田 健司
 3-1 富栄養下でオートファジーが抑制される仕組み
  1.哺乳類TORC1のアミノ酸感知機構
  2.出芽酵母のTORC1活性化経路
  3.Rag-Ragulatorに依存しないTORC1活性化経路
  4.TORC1の基質
 3-2 飢餓でオートファジーが誘導される仕組み
  1.ATG遺伝子の発現誘導
  2.Atg1/Ulk1キナーゼの活性化
  3.Atg1/Ulk1キナーゼの基質

第4章 オートファゴソームの形成における膜動態のメカニズム   中戸川 仁
 4-1 Atgタンパク質の分子機能
 4-2 Atgタンパク質のオートファゴソーム形成部位への集積
 4-3 オートファゴソームの膜の源:小胞体のオートファゴソーム形成への関与

第5章 哺乳類細胞におけるオートファゴソーム成熟の分子機構   小山-本田 郁子・水島 昇
 5-1 幕開け:オートファゴソーム成熟の分子機構解明へ
 5-2 オートファゴソームの閉鎖
 5-3 オートファゴソームの輸送
 5-4 リソソームとの融合
 5-5 リソソーム酵素による分解
  Column オートファゴソーム内膜の分解をとらえた!  5-6 オートファゴソームの成熟機構に残された課題

第6章 オートファゴソームの内膜分解と分解産物の再利用に機能する分子装置   関藤 孝之
 6-1 オートファゴソーム内膜小胞の分解
 6-2 液胞/リソソームからの分解産物の排出・再利用
  1.リソソームにおけるアミノ酸トランスポーターの発見
  2.AAAPトランスポータ
  3.Atg22
  4.PQループタンパク質
  5 オートファジー分解産物の再利用に関する研究の展望
  Column 液胞を巡る研究

第7章ATG分子群の構造と機能   野田 展生
 7-1 Atg1/ULK複合体
 7-2 オートファジー特異的PI3K複合体
 7-3 Atg結合系

第8章 ミクロオートファジー   奥 公秀・阪井 康能
 8-1 ミクロオートファジー研究の流れ
 8-2 ミクロオートファジーの分子機構
 8-3 ミクロオートファジー研究の課題と展望

第9章 出芽酵母の選択的オートファジー   鈴木 邦律
 9-1 選択的オートファジーの足場タンパク質:Atg11
 9-2 Atg11依存的選択的オートファジー
 9-3 Atg11非依存的な選択的オートファジー

第10章 哺乳類選択的オートファジー概論   一村 義信・小松 雅明
 10-1 選択的オートファジー発見の歴史
 10-2 選択的オートファジーとは
 10-3 ユビキチンシグナルとコアATGタンパク質
 10-4 レセプタータンパク質
 10-5 選択的オートファジー各論
 10-6 選択的オートファジーと連動したシグナル伝達

第11章 ミトコンドリア分別・除去システムの基本原理   岡本 浩二
 11-1 歴史的背景と意義
 11-2 マイトファジーをどうとらえるか
 11-3 分別標識タンパク質:レセプター
 11-4 分別標識タンパク質:ユビキチン
 11-5 多細胞生物の初期発生とミトコンドリア分解
 11-6 今後の展望:未解決の根本問題と新たな可能性
  Column 酵母が導く現象から分子理解への冒険

第12章 ゼノファジー:病原体の排除システム   阿部 章夫
 12-1 病原細菌とゼノファジー
 12-2 ゼノファジーによる病原細菌の選択的排除
 12-3 病原細菌におけるゼノファジーの対抗戦略
  Column 細菌学者から見たゼノファジー


第Ⅲ部 オートファジーの生理機能
第13章 マウスでのATG の意義   吉井 紗織・水島 昇
 13-1 マウスにおけるオートファジーの生理的意義
  1.胚発生
  2.全身でオートファジー関連因子を欠損するマウスの表現型
  3.組織特異的オートファジー不全マウスの表現型
 13-2 マウスにおけるATGのオートファジー以外のはたらき
  1.感染・炎症制御
  2.網膜色素上皮細胞でのレチノイドのリサイクル
  3.破骨細胞の波状縁形成と骨吸収

第14章 植物のさまざまな局面におけるオートファジーの生理機能   吉本 光希
 14-1 非生物的ストレス適応
  1.栄養素のリサイクル
  2.高塩・乾燥・高温・低酸素ストレス適応
 14-2 植物免疫
 14-3 オルガネラ品質管理
  1.クロロファジー
  2.ペキソファジー
  3.レティキュロファジー
  4.マイトファジー

第15章 オートファジーと核酸代謝   川俣 朋子
 15-1 非選択的オートファジーによるRNA分解と選択的なリボソーム分解(リボファジー)  15-2 細胞内凝集体,RNA顆粒の分解(グラニュロファジー,アグリファジー)  15-3 核および核小体の分解(ヌクレオファジー,PMN)  15-4 病原体の分解(ゼノファジー),ウイルス分解とミトコンドリア分解
 15-5 RNautophagy/DNautophagy
 15-6 RNaseとDNase
 15-7 RNA/DNAの分解後の運命:細胞内輸送と細胞内の核酸代謝系との接点

第16章 栄養飢餓とオートファジー   久万 亜紀子
 16-1 飢餓応答
 16-2 オートファジーと栄養供給
  1.タンパク質分解
  2.脂質分解
  3.グリコーゲン分解
 16-3 栄養によるオートファジーの制御
  1.ホルモン
  2.アミノ酸
  3.栄養応答性転写因子
  Column 新生仔マウスのオートファジー


第Ⅳ部 オートファジーと疾患・臨床応用
第17章 パーキンソン病の分子病態とオートファジー-リソソーム系の破綻   佐藤 栄人・服部 信孝
 17-1 孤発性パーキンソン病とミトコンドリア研究
 17-2 遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子とタンパク質分解異常
 17-3 遺伝性パーキンソン病とミトコンドリア品質管理の破綻
 17-4 パーキンソン病とLewy小体
 17-5 オートファジー-リソソーム系と封入体形成
 17-6 遺伝性パーキンソン病とリソソームの破綻

第18章 オートファジーと癌   川端 剛・吉森 保
 18-1 癌抑制遺伝子としてのオートファジー遺伝子
 18-2 癌の進行とオートファジー
 18-3 抗癌剤としてのオートファジー阻害剤
 18-4 オートファジー阻害剤の応用と問題点

第19章 オートファジーと代謝性疾患   藤谷 与士夫・福中 彩子
 19-1 膵β細胞におけるオートファジー
 19-2 脂肪細胞とオートファジー
 19-3 脂肪細胞のベージュ化とオートファジー
 19-4 肝細胞とオートファジー

第20章 オートファジーと老化 中村 修平・吉森 保
 20-1 寿命制御経路で共通して必要なオートファジーの活性化
 20-2 インスリン/IGF-1シグナル
 20-3 TORシグナル
 20-4 カロリー制限
 20-5 生殖腺からのシグナル:生殖細胞除去
 20-6 ミトコンドリア機能抑制
 20-7 オートファジーの誘導による抗老化と寿命延長
 20-8 寿命制御におけるオートファジー制御因子
 20-9 オートファジー活性化による抗老化と寿命延長のメカニズム

第21章 オートファジーと心疾患   種池 学・大津 欣也
 21-1 非ストレス下の心臓におけるオートファジー
 21-2 ストレス下の心臓におけるオートファジー
 21-3 炎症とオートファジー
 21-4 老化とオートファジー
 21-5 マイトファジー
  Column 筆者らの研究とオートファジー

第22章 オートファジーと腎疾患   高橋 篤史・猪阪 善隆
 22-1 定常状態でのオートファジー
  Column1 腎臓におけるオートファジーの歴史は古い!
 22-2 腎疾患におけるオートファジー
  Column2 リソソームの主要制御因子TFEB
 22-3 腎臓におけるオートファジー研究の展望
 22-4 腎臓におけるシャペロン介在性オートファジー(CMA)

日本語索引
外国語索引

ISBN:9784525134815
出版社:南山堂
判型:B5
ページ数:241ページ
定価:5600円(本体)
発行年月日:2017年12月
発売日:2017年12月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PSF