北魏史 洛陽遷都の前と後
著:窪添 慶文
内容紹介
3世紀初めからの約400年、中国は巨大な分裂期であった。その中で鮮卑族拓跋氏の建てた北魏王朝は、前身と後継政権を含めるとほぼ同じに近い長い期間、国を維持する。その間、①草原の部族連合国家→②華北を支配するものの胡族支配の色彩を濃厚に残す帝国→③胡漢を一体化して中華の地を統治する帝国と、大きくそのあり方を変える。②から③への劇的な転換の舵を切ったのが孝文帝である。本書は改革を象徴する洛陽遷都を序章に置き、五章に分けて、改革の内実、それに至る①②、改革の結果という順序で叙述する。そして終章として、秦漢と隋唐という二つの統一帝国の間にあって北魏という「異民族」政権がいかなる意義をもっていたかを考察する。
目次
まえがき
序章
一 洛陽遷都
二 五胡時代――北魏史理解の前提
第一章 孝文帝親政期の諸改革
一 孝文帝の即位と文明太后
二 土徳の王朝から水徳の王朝へ
三 儀礼の改革
第二章 遷都後の諸改革
一 「代人」から「河南の人」へ
二 墓誌
三 胡服・胡語の禁止
四 胡姓を漢姓に
五 官制改革(1)――消えた内朝官
六 官制改革(2)――九品官制の整備
七 姓族分定
八 官制改革(3)――門閥制の導入
九 考課の改革
一〇 国家意思決定のシステム
一一 南朝斉への攻撃
第三章 建国から華北統一まで――濃厚な鮮卑色の時期
一 代国時代
二 代国の復活
三 華北統一へ――道武帝~太武帝の時期
◆帝国への脱皮
◆皇帝位の継承
◆帝国の拡大―華北の統一―
◆北魏包囲網とそれへの対処
四 北魏政権下の諸族
◆征服された諸族と旧来の諸族
◆部族解散
◆部族解散された人々のあり方(1)
◆部族解散された人々のあり方(2)
五 北魏政権下の漢族
六 可汗とも称した北魏皇帝
第四章 変化のきざし
一 鎮にみられる変化
二 鎮軍と州軍への「代人」の分出
三 文成帝と献文帝
四 文明太后称制期
五 均田制と三長制
六 仏教に現れた変化
七 洛陽遷都のもつ意味
第五章 繁栄、そして暗転
一 改革の継承
二 洛陽の繁栄
三 北魏の文化
四 「代人」や鎮民の不満
五 六鎮の乱から東西分裂まで
六 東魏・北斉
七 西魏・北周
終章
一 制度
二 支配階層
三 女性の活躍・世界帝国
四 北魏史の位置づけ
あとがき
北魏関係年表
参考文献