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簡帛文献からみる初期道家思想の新展開

著:王 中江
訳:吉田 薫

紙版

内容紹介

20世紀に入り70年代、特に90年代以来大量の簡帛が出土し、公開された。このことは古代中国の文明や歴史、文化、および思想などの多くを理解するうえで大きな活力と作用をもたらした。本書は積極的に考古学の成果を取り入れ、出土文献に拠って道家思想の再検討を進めることにより、初期の道家が、老子から荘子へ、老子から黄老思想へと、実に多元的でそれぞれ異なる変化・発展の道をたどっていったことを明らかにする。さらに道家が、宇宙や自然の事物について非常に強い好奇心を持って追究を深めていたことも実証。道家が様々な方法で「道」の秩序から人間社会の秩序を構築していったことを浮き彫りにする、画期的な研究成果。

目次

序論 出土文献、ならびに道家の宇宙観と人間社会観についての再検討
 一 出土簡帛文献の年代と自然の宇宙観
 二 宇宙のはじまりと状態、および生成の過程について
 三 万物の内面性と活力について――「物性」はいかに獲得できるか
 四 「道」の「弱作用力」と万物の「自発性」
 五 自然の連続性:宇宙から人間の世界へ
 結語

第一章 道と事物の自然――老子「道法自然」の意義について
 一 「道法自然」の一般的解釈の原点と問題
 二 「自然」と「万物」および「百姓」
 三 「無為」と「道」および「聖王」
 四 「道法自然」と老子思想の構造

第二章 『太一生水』における宇宙生成モデルと天道観
 一 宇宙の原初状態――「太一」と「一」
 二 「主輔」の生成メカニズム――「水」から「天」と「地」に至るまで
 三 「相輔」の生成機能――「神明」から「歳」に至るまで
 四 原理としての「太一」と「天道観」

第三章 『恒先』の宇宙観、ならびに人間社会観の構造
 一 「恒先」――宇宙の「原初」およびその「状態」
 二 「域」から「気」に至るまで――宇宙の進化と天地の生成
 三 「始」と「往」――「万物」の生成、存在、および活動
 四 「天下之事」と人間社会における行動の尺度
 結語

第四章 『凡物流形』の生成、および自然と聖人――「一」をめぐる考察と帰属学派について
 一 生成の根源としての「一」
 二 「物」としての「自然」 
 三 「聖人」と「執一」
 結語 帰属学派

第五章 黄老学の法哲学の原理と公共性、および法律共同体の理想――なぜ「道」と「法」の統治なのか
 一 「道法」――「実在法」における「自然法」の基盤
 二 「人情論」と「因循論」――法律による統治と人性、および合目的性
 三 「法律」による統治と「公共性」、および「客観化」
 四 「法律共同体」の理想、およびその「徳治」と「法治」

著者略歴

著:王 中江
1957年生まれ。哲学博士(北京大学)。中国社会科学院歴史研究所研究員、清華大学人文学院教授を経て、現在北京大学哲学系教授。中華孔子学会会長兼任。主な著作に『近代中国思惟方式演変的趨勢』(四川人民出版社)、『進化主義在中国的興起――一 個新的全能式的世界観』(中国人民大学出版社)、『簡帛文明与古代思想世界』(北京大学出版社)、『儒家的精神之道和社会角色』(中華書局)、『道家学説的観念史研究』(中華書局)、Daoism Excavated:Cosmos and Humanity in Early Manuscripts. Three Pines Press,2015. Order in Early Chinese Excavated Texsts, Palgrave Macmillan,2016等がある。
訳:吉田 薫
1972年生まれ。文学博士(北京大学)。日本女子大学文学部、 中央大学経済学部、法政大学経済学部の非常勤講師を経て、現在日本女子大学文学部准教授。主な業績として 、「梁啓超対日本近代志士精神的探究与消化」(『中国現代文学研究叢刊』)、「“新民”与“死生観”的糾纏――梁啓超従“宗教”到本土文化的関注」(『東岳論叢』)、「康孟卿の翻訳作業とその周辺――戊戌政変から『清議報』刊行 までを中心に」(『中国研究月報』)、「清末変法運動における何樹齢の活動について」(『中国研究月報』)、「跨時代、跨国界的“立人”意義 ――在日本講授魯迅記」(『魯迅研究月刊』)、「章太炎与“夏音”」(『中国現代文学研究叢刊』)等がある。

ISBN:9784490209891
出版社:東京堂出版
判型:A5
ページ数:320ページ
定価:6500円(本体)
発行年月日:2018年07月
発売日:2018年07月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDHC