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ちくま文庫 お-18-3

「14歳」少女の構造

大塚英志まんが評論選集80’s-90’s

著:大塚 英志

紙版

内容紹介

あらゆるものが記号と化し消費されていく時代に、まんがは内面と身体の表現を花開かせた。まんがが消費される現場で書かれた同時代的評論の集大成。

「pink」「ホットロード」「いちご物語」「14歳」――
記号と消費の時代に、まんがは内面と身体を描いた。

ニューアカとバブルの80年代、そしてコンピュータゲームの時代だった90年代初頭。あらゆるものが記号と化し、消費されていく社会に抗うように、まんがは「身体」と「内面」の表現を花開かせた。消費されるためのまんがをつくる現場で書かれた同時代的評論に、まんがが真に有害だった時代を描く書き下ろし補論「三島由紀夫の「首」と「1970年」の蜂起する少年まんが」を加えた傑作評論選。

目次

第1章 物語と構造
言葉の位相――少女まんがにおける〈固有の論理〉について
内面の発見と喪失――少女まんがにおける「ことば」の変容
〈学バン狩り〉のフォークロア――紡木たく「これからもずっと」
〈枠組〉としてのフォークロア――佐藤史生「馬祀祭」
〈境界〉をめぐって――花郁悠紀子「フェネラ」
〈マレビト〉の構造――吉田秋生「カリフォルニア物語」
〈無縁〉としての下宿――高橋留美子「めぞん一刻」
二つの「ナウシカ」 主題の〈ズレ〉をめぐって――宮崎駿「風の谷のナウシカ」
虚実の遊戯者――梶原一騎「四角いジャングル」
私小説家ごっこ
まんがの無国籍性をめぐって
シミュラークルの荒野からの始まり
大友克洋――あらかじめ失われた〈物語〉
〈まんが〉の形態学
〈ファミコンまんが〉の方法
ゲームの追体験としてのまんが
『リボン』のふろくと消費する〈少女〉たち
「乙女ちっく」の力
〈変体少女文字〉――消費社会を呑み込むかわいいカルチャー
〈学校〉――束の間の無縁の場

第2章 成熟とジェンダー
〈14歳少女〉の構造
〈産む性〉としての少年――〈性差の少女まんが史〉のために
〈少女殺し〉という主題――大島弓子『いちご物語』をめぐって
〈男の子〉――飛べない少女と空を飛ぶ神々
人身御供の時代のために――岡崎京子『pink』の読み方
少女まんがの困難さ
「部屋」を失った後に
「ここ」で生きる覚悟
凡庸さの中への着地
庇護者としての猫
女性まんが家にとって母性とは何か
双子物語論
聖霊の通路
語学留学の「気分」
フェミニズムはモラトリアム思想である
「ちびまる子ちゃん」とノスタルジーの技術
まんがにとって〈子供〉とは何か――捨て子のまんが史
子供論にとっての楳図かずお
ニワトリ男は14歳で大人になる
隠れ里と母体回帰願望

第3章 性表現と身体
記号的身体の呪縛――手塚治虫「まんが記号説」批判
手塚治虫は「有害」だった
美少女症候群――不在の〈強姦者〉
性的コミックという枠組――あるいは山本直樹『Blue』の読み方
性的身体をいかに描くか
「有害コミック」騒動のための覚え書き
「有害コミック騒動」と戦後民主主義という装置
手塚治虫という禁忌
戦後まんがの表現空間

補論 三島由紀夫の「首」と「1970年」の蜂起する少年まんが

著者略歴

著:大塚 英志
大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

ISBN:9784480438997
出版社:筑摩書房
判型:文庫
ページ数:560ページ
定価:1300円(本体)
発行年月日:2023年08月
発売日:2023年08月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:DSK