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世界がわかる資源の話

著:鎌田 浩毅

紙版

内容紹介

 資源が私たちの生活に不可欠であるにもかかわらず、その地球科学的な知識を備えている人は多くありません。それはなぜでしょうか? 考えてみるうち、3つの理由がわたしの頭に浮かびました。

 1番目は、そもそもテーマとして大きすぎて、自分に身近なことと思えないから。2番目は、それゆえに「知ったところでその知識を生活でどう活用すればよいかわからない」から、です。3番目の理由は、資源に関する学校教育にあります。実は、ここ20年ほどのあいだ、高校生の大半は地学についてほとんど学んでいません。高校の理科教科である「地学」を履修した生徒は、全国でわずか5パーセントくらいしかいないのです。
 つまり、我が国の9割以上の若者がエネルギーや地球環境について持つ知識は、中学生レベルにとどまっている、という非常に困った状況なのです。しかも残念ながら、こうした事実はまったくといってよいほど認識されていません。

 ですが、主要な地下資源のほとんどを海外からの輸入に頼り、かつ地震国・火山国の日本に暮らすうえで、地学のリテラシーがないのはとても危険な状態ではないかと私は思います。地球に関する乏しい知識で、エネルギーや地球環境にかかわる重要な判断を下さざるを得ないからです。

 ところで、もし「石油があと○年で枯渇する」と言われたら、国民生活に関わるきわめて重要な資源問題であることはすぐ理解できます。だからといって、個人に何ができるかというと、ちょっと思いつきません。その点が、政治や経済や社会問題と違って「判断が難しい」ポイントであるように思います。資源に関しては投票や投資や善悪といった具体的な判断に結び付く手がかりのようなものが、なかなかイメージしづらいのです。

 しかし昨今、資源や環境の世界規模のトピックスがたびたび世間を賑わせていることもまた事実です。電気代の高騰、石油不足、世界的な半導体不足、ロシアのウクライナ侵攻と天然ガスの関係、レアメタルの争奪戦、SDGsにエコテロリスト……。現在進行中の世界を正しく理解するため、もっと資源についてくわしく知りたいというニーズがいつになく高まっているのは本当でしょう。

 よって本書では、エネルギーと環境の問題の根底にある自然現象について、地球科学の観点からわかりやすく解説しました。とくに、多忙な毎日を送っているビジネスパーソンや学生・院生、さらに行政機関やマスメディアで正確で最新の情報を切望している人々に向けて、最も重要な最先端の事実に絞って取り上げました。

 本書は全部で4章から成りますが、各章を構成する項目の左ページには本文を、右ページには図版で要点をまとめてあります。ここでは資源の知識紹介にとどまらず現代社会で進行中の課題まで踏み込んで記述しました。本を手に取った読者が知識と思想の両面から資源について学んでいただければ幸いです。

(「はじめに」より)

目次

第1章 水・森林 生命をつかさどる原初の資源
第2章 エネルギー資源 文明の発展をつかさどる資源
第3章 鉱物資源 最先端のテックを左右する資源
第4章 資源の未来 環境保護の取り組みと私たちがすべきこと

著者略歴

著:鎌田 浩毅
1955年、東京生まれ。京都大学名誉教授、京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授。筑波大学附属駒場中学・高校を経て、1979年東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)主任研究官、1997年より京都大学大学院人間・環境学研究科教授。2021年から現職。日本地質学会論文賞受賞。理学博士(東京大学)。専門は火山学・地球科学・科学コミュニケーション。テレビや講演会で科学を明快に解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気で教養科目1位の評価。著書に『知っておきたい地球科学』(岩波新書)、『資源がわかればエネルギー問題が見える』(PHP新書)、『揺れる大地を賢く生きる』 (角川新書)、『富士山噴火と南海トラフ』(ブルーバックス)、『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)、『火山噴火』(岩波新書)、『地球の歴史』(中公新書)、『地学ノススメ』(ブルーバックス)、『やりなおし高校地学』(ちくま新書)。

ISBN:9784479394068
出版社:大和書房
判型:A5
ページ数:176ページ
定価:1600円(本体)
発行年月日:2023年06月
発売日:2023年06月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC