日本の美意識で世界初に挑む
著:細尾 真孝
内容紹介
★著者は、創業333年の「西陣織」の老舗12代目経営者。西陣織で海外マーケット、ラグジュアリーブランド市場をいち早く開拓した元ミュージシャンという異色の経歴。
★京都で1200年続く伝統産業に新風を吹き込む注目の若手経営者の初の著書。
★美や美意識が、なぜ今経営に必要なのか?
この30年間でマーケットが10分の1に縮小してしまった西陣織。そんな衰退業界にあって、現代人の生活スタイルにも溶け込む伝統文化の変革に成功した細尾氏。
きっかけは、細尾の帯を見た建築家ピーター・マリノ氏から店舗の壁紙制作の依頼があったこと。伝統的に西陣織の布幅は32センチだが依頼されたのはもっと幅広の布。そこで職人たちと1年をかけて織機を開発し、150センチ幅の布を作ることに成功。その布が世界100都市でディオールをはじめ、シャネル、エルメス、カルティエなどの店舗で使われている。
また、デビッド・リンチをはじめ多くの一流アーティストたちとのコラボやMITメディアラボ・ディレクターズフェロー、東大大学院との共同研究など伝統産業の枠をはみ出して活動の幅を広げている。ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど世界から注目されている若手経営者の仕事論・経営論。
新しい価値観が求められる時代に、本来、一人ひとりが持っている「美しいものをつくり出したい」という欲求や欲望、そこに回帰することが創造や革新の原動力になるというのが根底に流れるメッセージ。
目次
はじめに
衰退する西陣織マーケット;10分の1からの起死回生
第1章 なぜ今;工芸に注目が集まるのか
創造性の原点は〝織物〟にあり
究極の美を追求し;何度も危機を乗り越えてきた西陣織
前例や慣習にとらわれていては;未来はない
「手で物をつくる」ことこそ人間の創造性の原点
妄想がきっかけで;MITの「ディレクターズフェロー」に
手の中に脳がある
第2章 固定観念を打破せよ
固定観念の打破が革新のカギとなる
プロデュースによってクリエイターを支えたい
ブランドの立ち上げと解散
「西陣織」は;なぜ海外で売れなかったのか
有名建築家から予想外の依頼が届く
世界初150センチ幅の織機を開発する
人間の持つ美意識がビジネスの「ビジョン」にな
現代アートから;世界初の新素材が生まれる
「常識」では革新的な製品は生まれない
逆転の発想で勝機を見出す
工業と工芸の垣根を壊すトヨタ「レクサスLS」
第3章 妄想がイノベーションを生む
未来の風呂敷;妄想を現実へと手繰り寄せる
言葉にすれば;波紋は必ず広がっていく
自分の軸と掛け合わせることで妄想に価値が生まれる
トヨタもエルメスも「似た仕事」から成功をつかんだ
大麻布を現代に蘇らせる
江戸時代の蚕を復活させる
妄想を現実化する仕組みをつくる
スケールの大きな妄想ほど実現する
失敗は実現までのプロセスととらえる
第4章 美意識は育つ
美意識を磨き合う;西陣の仕組み
ブランド価値を下げないため;苦渋の決断をすることも
新しい時代の組織論
美しい環境は人を変える HOSOO FLAGSHIP STORE
美への投資がもたらすリターン
物を通してつくり手の美意識を感じる
どういう物をつくるかが;どういう人をつくり;どういう社会をつくるかを決める
「本物に触れさせなさい」――フェラガモの哲学
触覚は育てることができる
千利休の「守破離」
未体験のことにどんどんチャレンジする
「美」を忘れた現代アート
美しいものを創造している人は幸せになれる
西陣の着物で世界を変えたい
「美への投資」を行なうポーラ
第5章 工芸が時代を紡ぐ
創造の根幹は工芸にある
GO ON「伝統工芸」の枠を打ち壊す
「前例のあることはやらない」がルール
美意識を磨き合う仲間
職人=クリエーターの時代
工業が直面する壁
松下幸之助「伝統工芸は日本のものづくりの原点」
ミラノで話題をさらった「Electronics Meets Crafts」
工業メーカーが工芸性を重視する方向へ舵を切る
工芸による「新しいルネサンス」