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女性なるものをめぐって

深層心理学と女性のこころ

著:豊田 園子

紙版

内容紹介

「元始、女性は太陽であった」。
これは、明治の終わり頃に創刊された雑誌『青鞜』創刊号の冒頭を飾った、平塚らいてうによる有名な発刊の辞の題名である。家庭や庇護者からの単なる独立を目ざすのではなく、女性の「個」としての「真の自由解放」を高らかにうたったこの文章が綴られてから100年あまり。しかし今なお、多くの女性は「太陽」としての真生の姿を復活させているとは言いがたい。

女性の社会進出が進む一方で、根強く変わっていない何かが足かせとなり、女性はありのままの自由な状態では生きづらくなっているのではないか。「ジェンダーギャップ指数」が主要先進国の中で最下位という日本の現状が、そのことを如実に物語っているだろう。

著者は、ユング派のセラピストとして多くの女性たちの悩みに接する中で、女性が本当にその人らしく、自分自身を肯定して生きるためにはどうしたらいいかを長年考え続けてきた。
そして、深層心理学の視点から、男性とは違う女性の本質、女性の尊厳を支えるものとして、女性のもつスピリチュアリティに注目するようになった。

女性が自らの抱える「生きづらさ」や、自身の生き方への違和感を乗り越えて本来の自分を取り戻してゆくためには、従来の心理学ではなく、女性ならではの視点から説かれた新たな心理学が必要である。
本書は、そうした「女性そのもの」「女性なるもの」について深く考察し、問いかけ追い求め続けた著者の思索の旅の成果であり、その集大成である。

目次

はじめに
序章 わたしのユング心理学 
第1章 女性であることとスピリチュアリティ
  1 心と身体とスピリチュアリティ
  2 女性的なスピリチュアリティと心理療法
     ──ユング派の観点から
第2章 心の内の男性と女性
  1 男性の心の深層──「内なる女性」との不幸な関係
  2 女性的な時──女性の知恵の回復
第3章 不足と充満──食をめぐって
  1 食の病と女性のたましい
  2 時を止めたい少女たち
第4章 聖女か魔女か
  1 癒しの象徴としてのマリア
  2 魔女と心の闇──ヒステリーを通して見えるもの
  3 「母なるもの」のゆくえ
第5章 芸術が教えてくれるもの
  1 映画『ユリイカ』とヌミノースということ
  2 画家フリーダ・カーロの作品が語る心の軌跡
  3 メキシコにフリーダ・カーロを訪ねて
第6章 こころの探求としての心理療法
  1 夢と「内なる自分」との関係
  2 ユングのヴィジョン・セミナーが問いかけるもの
終章 女性がありのままの自分を生きるということ
初出一覧
おわりに

著者略歴

著:豊田 園子
名古屋大学文学部卒業(フランス文学)。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学(臨床心理学)。スイス、チューリヒのユング研究所でユング派分析家資格取得。帰国後心理療法の個人オフィスを開業。京都文教大学専任講師、助教授、天理大学教授を経て、現在は京都と東京の個人オフィスで臨床に当たっている。臨床心理士、公認心理師。日本ユング派分析家協会会長。
著書 Memories of Our Lost Hands: Searching for Feminine Spirituality and Creativity, 2006,Texas A&M University Press, 共著書『心理療法と個性』(2001、 岩波書店)他、 訳書 D. カルシェッド著『トラウマと内なる世界』(2005、新曜社)

ISBN:9784422117799
出版社:創元社
判型:A5
ページ数:312ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2022年10月
発売日:2022年10月26日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSP