創元こころ文庫
心の病気
著:西丸 四方
内容紹介
本書の初版が《創元医学新書》の一冊として刊行されたのは1975年。その後、精神医学の動向は症状論が中心となり、ますますそれに拍車がかかっていった。しかし本書では、症状を患者から切り離して見るのではなく、心の病を患者という一人の人間全体から理解しようとする姿勢が貫かれている。病気の原因も、対応の仕方も、あくまでも患者その人に寄り添って考えようとする人間的な理解のありようは、精神医学のみならず今日の科学一般への鋭い批判ともなることだろう。解説は、精神科医の原田憲一氏。
目次
はじめに
一 心の病気
心が病むとは
昔の狂気
カントの精神医学
心の病気の種類
昔の病人
人道化
身体主義と精神主義
脳と心
精神病
仮定による精神病
動機
治癒の絶望
治癒の希望
無意識の中のトラブル
治癒の絶望の克服
人間学
精神分裂病〔統合失調症〕
精神障害の組み立て
二 愚か
愚か
老い
環境汚染
三 夢幻
意識を失う
新出現病とその消失
発作病
四 地獄と極楽
来世
何が病気か
極楽
天上と地下
五 無
精神分裂病〔統合失調症〕
一つのケース
精神の分裂とは
幻覚と妄想
早発性痴呆
孤独
なぜ孤独に
治癒の絶望と希望
精神分裂病〔統合失調症〕の診断
連続、不連続
姿
六 苦悩
トラブル
変わり者
天才と変わり者
医学的変わり者
変わり者を防ぐ
ノイローゼ
変わり者とノイローゼ
力の作用と逃げ道
もっともらしい意味
体の病気と心
軽い神経症
変わり者やノイローゼの治療
七 治療の問題
精神主義と身体主義
脳を切る
くすり
気絶
心には心で
心と体
つき合い
ひそかに
修業
告白
発散
精神的風土
遺伝
八 病院と医者
座敷牢
病院
一世紀前の病人の扱い
古い痴呆的分裂病〔統合失調症〕
一つの試み─行動分析療法
動物の狂気
自分の入れる病院を
九 症例研究
幼い無
坊やの悩み学校へ行かぬ子
夜尿症
無の影
娘の悩み
我思う、故に、我あり
強情な失恋
よみがえる春
気で病む男
デウス・エクス・マキナ
娘哀れ
娘に妬やい
瞼(まぶた)の母
不思議な天才
大発見
天国と地獄
忘却もまたよし
町の狼
夢かうつつか
もう一人の私
誠実
人生無情
真の天才
二重人格
おわりに─今後の見通し
解説 原田憲一