21.5世紀の社会と空間のデザイン
変容するビルディングタイプ
他著:中村 陽一
他著:高宮 知数
他著:槻橋 修
内容紹介
激動の予感に満ちた21世紀中葉(21.5世紀)に向けて、考古、建築、舞台芸術、社会デザイン等20名の論客たちが提示する社会と空間の見取り図。佐藤信と伊東豊雄の特別対談では、百年、千年単位で考える公共圏のための空間を明らかにする。
アメリカ同時多発テロで幕を開けた21世紀は、激動の予感から始まった。そして現在、世界は新型コロナウイルスによるパンデミックという未曽有の危機に直面し、その予感が実感として目前に迫る。コロナ禍によって、経済活動、公衆衛生、そしてライフスタイルに至るまで様々な変容が余儀なくされたが、それは果たして「ニューノーマル」として定着するのか? それともコロナ以前へと回帰していくのか? 本書は、21世紀の折り返し地点、いわば「21.5世紀」に向けて変容し続ける私たちの生活、街、そして社会のあり方について多角的な視点から考察を重ねた。
本書では、多くの人が日常的に親しんでいる住宅やオフィスなどの建築、そして劇場という施設=空間を、ビルディングタイプというその使い方やしつらえから多面的に眺めた。そして、社会とともに変化してゆくこれからの建築や空間における重要かつ注目すべき点を、百年、千年単位で考える公共圏のための空間をはじめ、社会デザイン、考古、建築、舞台芸術等、20名の論客たちが鮮やかに示した。
これは、前著『ビルディングタイプ学入門―新しい空間と社会のデザインがわかる』(誠文堂新光社、2020)企画時点から編者たちが抱いていた問題意識でもあった。「短期的な変化」ではなく、「中長期的な社会の変容によるものである」という点から、前著では、主要なビルディングタイプの起源や変遷を丁寧に追いかけ、現在抱える課題や先進事例を紹介することで、ビルディングタイプの変容までを紹介した。しかしその分、読者層を狭めたきらいがあったことは否めない。
その点を受け、本書では、コロナ禍で見直された人と人との距離感や空間コントロールに対する意識の変容は、社会そして空間という概念をどのように変化させるのかという問いと、その変化との立ち向かい方のヒントを指し示す。具体的には、コロナ禍を挟んで編者・著者が学生たちと取り組んできた、街づくりやポストコロナ空間の設計競技の紹介とともに、それらの取り組みによって明らかになった、これからのリアル/デジタル両方の社会と空間におけるキーワードである「公共性」についての考察である。それは決して、コロナ禍による一時的、一過性のものではない、都市誕生以来の歴史や文化も踏まえた、説得力のある応えである。今、そしてこれからを生きる人々の期待に応える一冊となる。
■目次
第1部 日常から積み重ねるデザインアプローチ
第2部 公共圏のための空間──百年、千年単位で考える
キーノートセッション対論 佐藤信+伊東豊雄
1.広場――公共圏としてのオープンスペース
2.劇場――文化芸術の居場所というビルディングタイプの行方
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目次
■総論
ビルディングタイプと社会デザインはどこへ向かうのか
21.5 世紀の社会と空間のデザインへ向けて──文明社会の危機管理と木の葉のざわめきを意識しつつ 中村陽一
ビルディングタイプのゆくえを考える 五十嵐太郎
タイプとしての「未来都市」 磯達雄
■第1部 日常から積み重ねるデザインアプローチ
プレスメイキングの現場で生まれるささやかな気づき 西田司
トピックス(1) Design Camp2020ワークショップ「ポストコロナの街づくり」
タクティカルアプローチが21.5 世紀のビルディングタイプを拓く 槻橋修+神戸大学槻橋研究室
トピックス(2) 「ポストコロナの社会と暮らしに応えるデザイン」
■第2部 公共圏のための空間──百年、千年単位で考える
キーノートセッション対論 佐藤信+伊東豊雄
1.広場――公共圏としてのオープンスペース
日本における先史から古代の広場・再論─人々が集う場(広場)の考古学 橋本裕行
中国都市における市 小澤正人
インダス文明の広場(庭) 宗䑓秀明
古代メソポタミアの都市景観―古代都市における広場のあり方について 小泉龍人
古代エジプトの広場的空間 遠藤孝治
近現代の広場 市川紘司+東北大学大学院五十嵐太郎研究室
これからの都市公園の公共性について 山﨑誠子
2.劇場――文化芸術の居場所というビルディングタイプの行方
劇場の歴史を公共性から振り返る 坂口大洋
小劇場と〈公共〉―〈 脱植民地状態〉を再び意識するために 内野儀
劇場の公共について―これから起こることの先憂として 伊藤裕夫
舞台技術の大変革は劇場の公共性に何をもたらすのか
インタビュー#1 舞台技術全般 創作発信型劇場の新しいモデルを目指して 堀内真人
インタビュー#2 照明 機能を最大限に生かす人材育成を 黒尾芳昭
インタビュー#3 映像 映像と舞台技術の共存と調和へ 飯名尚人
COVID-19とこれからの劇場 佐藤信
■おわりに 21.5世紀の社会と空間デザインのために
21.5 世紀のデザインに、公共を実装する 高宮知数
■付録 大和ハウス工業株式会社寄付講座「文化の居場所を考える」全記録
ISBN:9784416521014
。出版社:誠文堂新光社
。判型:A5
。ページ数:256ページ
。定価:3200円(本体)
。発行年月日:2022年09月
。発売日:2022年09月12日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TNKP。