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多変数の制御・解析・最適化に使える行列論

著:浅井 徹

紙版

内容紹介

多変量解析,最適化,システム制御などの分野では多変数が関わる問題がよく扱われる。そのため,これらの分野では行列が用いられることが多い。これらの分野にはじめて触れたとき,以下のような経験をされたことは無いだろうか?「逆行列や固有値が計算できれば十分だと思っていたため,行列が出てきても特に困難は感じなかった。しかし,内容が進むにつれ,正定行列や特異値,疑似逆行列,行列のノルムなどの聞き慣れないものが次から次へと現れることに戸惑った。これらのことを知ろうと大学初年度に使った線形代数の教科書を見てみたが,該当するものはほとんど扱われていない。仕方なく他の本を探し,ようやく見つけた本を読んでみると,それらの定義や定理,その証明などが書かれていることはわかるが,上記の道具が一体何のためのもので,どのように使われるのかよくわからない。わからないなりに読んでいけばわかっていくのかと思いきや,読んだ分だけわからないことが増えていき,途中で読み進められなくなってしまった。」何を隠そう,私もそうした経験をした者の一人だ。本書は,このような方々に少しでも学習の効率を高めてもらえることを目指して書いたものだ。

本書は,各概念の目的や必要性などを十分に説明することを重視して執筆した。目的や必要性がわかれば動機づけが高まり,そうした動機づけがあれば,多少,内容が難しくなっても独力で読み進められると考えたためである。本書では,動機づけとなるような課題や目的を,例を挙げながら具体的に説明し,そこを出発点として段階的に各概念の内容に進むようにしている。そうすることで新しい概念や枠組みのねらいを自然に理解できるようにしたつもりである。本書によって学習がよりスムーズに進むようになれば幸甚である。

なお,このような説明を可能にするために,本書では数学的概念の順序とは異なる順序で説明を与えている部分がある。さらに,同じことを2回説明している部分もある。これらのことが気になる方は他書で順序をご確認頂きたい。また,既知の内容の確認に時間を割かれないように,逆行列や固有値など,大学初年度に学習した主な内容は既知のものとして説明を与えている。もしこれらの内容について不安を感じるのであれば,まずそれらを復習されてからのほうがよいであろう。

目次

1. ブロック行列PartI
2. 線形方程式PartI
2.1 線形方程式Ax=bの可解性と行列の像空間
2.2 列基本変形と像空間
2.3 線形空間の基底・次元と列フルランクな行列
2.4 線形方程式の解の集合と核空間(零化空間)
3. 正定行列と最小2乗法
3.1 2次形式と行列の正定性
3.2 正定行列の固有値と直交行列による対角化
3.3 2次形式の幾何学的性質
3.4 正定行列を用いた平方完成と最小2乗法
4. 線形方程式PartII
4.1 行の関係に基づく線形方程式Ax=bの可解条件
4.2 線形空間の演算
4.3 補空間
4.4 補空間に基づく線形空間の分解
4.5 直交補空間と線形方程式の可解条件
4.6 行列のランクとランク分解
4.7 ランク分解に基づく線形方程式AXB=Cの解
5. ブロック行列PartII
5.1 ブロック三角行列の行列式とラプラス展開
5.2 ブロック行列の行列式とブロック基本変形
5.3 ブロック行列の逆行列と再帰的最小2乗法
5.4 シュールコンプリメントとシルベスターの判定法
6. ユニタリ行列による対角化と正規行列
6.1 C^n上の内積とユニタリ行列
6.2 数ベクトル空間とシュミットの直交化法
6.3 シュール分解と定理6.1の証明
6.4 正規行列の固有値・固有ベクトル
7. 特異値分解
7.1 ユニタリ行列による対角化・ランク分解から特異値分解へ
7.2 擬似逆行列と線形方程式・最小2乗問題
7.3 1次変換の増幅率と行列の最大特異値
8. ノルム
8.1 行列の「大きさ」とノルム
8.2 行列のノルム
8.3 ノルムに基づく行列の近似・誤差解析
8.4 線形空間上の点列の収束性とノルム
8.5 コーシー列に基づく収束性の判定
8.6 ノルムの幾何学的性質
引用・参考文献
索引

ISBN:9784339061246
出版社:コロナ社
判型:B5
ページ数:286ページ
定価:4600円(本体)
発行年月日:2022年01月
発売日:2022年01月15日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PBF