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土木・環境系コアテキストシリーズ F-1

水環境工学

著:長岡 裕

紙版

内容紹介

都市を含めた水循環系は、自然の水循環に加えて、水道、下水道をはじめとする都市インフラにより形づけられた人工的な循環系を重ね合わせて形づけられています。その本質的な理解のためには、水環境化学、水処理工学、水道工学、下水道工学、河川工学、水文学など、様々な分野にまたがる知見をバラバラに理解するのではなく、それらを相互に関連付けて総合的に考えるとともに、現象の本質の理解に必要となる基礎的な事項についても深く掘り下げて理解することが求められます。

そのため、本書では水道システムと下水道システムを一つの連続した水循環システムとしてとらえ、これらを並列させながらその本質的な事項を解説するようにしていますし、環境基準、水道水質基準をはじめとする様々な水質基準についても、相互の関連付けを意識しながら解説しています。これはこれまでの類書ではなかった取り組みと思います。

また、水質変換や水処理に関してもその本質を理解する目的で、一見、細かすぎるともみえるような事項、例えば凝集剤や分離膜などの分子構造などについても記載し、なぜそのようになるのかという疑問にも応えられるよう配慮しています。

本書を学生などが学習用として用いるとき、演習問題を解いたり考えたりすることで、理解が格段に深まります。そのため、本書では、章末の演習問題に加えて、本文中にも多くの例題と解答を載せています。

本書はコンパクトな体裁にもかかわらず、多くの水環境や上下水道に関する類書と異なって、本質の理解を妨げるような複雑な設計図面などは排除し、基本的な事項のみを理解できるようなオリジナルな図のみを掲載しているので、含まれている内容は決してコンパクトではないと思っています。これから水環境や上下水道を学ぼうとしている学生だけでなく、実務者や技術者の方々にもぜひ本書を手に取ってもらいたいと願っています。

目次

1. 水環境工学のための基礎
1.1 水の物理化学的性質
 1.1.1 水の化学的性質
 1.1.2 水の物理的性質
 1.1.3 水の流れに関する基礎
1.2 水質指標の概要
 1.2.1 水質指標の種類と体系
 1.2.2 外観や固形物などにかかわる指標
 1.2.3 無機イオンに関連する指標
 1.2.4 有機物関連指標
 1.2.5 栄養塩類
 1.2.6 微生物指標
 1.2.7 有害物質・重金属類
1.3 微生物の種類と反応
 1.3.1 微生物の種類と水系における存在
 1.3.2 微生物による反応式
1.4 水域における水質変換機構
 1.4.1 河川における自浄作用の式
 1.4.2 湖沼など閉鎖性水域における反応とモデル化
 1.4.3 地下水汚染
演習問題
2. 都市における水循環系
2.1 流域における水循環系
 2.1.1 自然の水循環系
 2.1.2 流域とは
 2.1.3 流域内の水収支
 2.1.4 わが国における水資源の概況
 2.1.5 水資源開発・水源・水利権の考え方
2.2 都市における水循環系の概要
 2.2.1 都市における水循環系
 2.2.2 水供給システムの種類
 2.2.3 下排水処理システムの種類
2.3 水環境にかかわる法制度
 2.3.1 水にかかわる法制度の体系
 2.3.2 水質環境基準
 2.3.3 排水基準
 2.3.4 水道水質基準
 2.3.5 下水排除基準
 2.3.6 水質総量規制
2.4 流域単位での水環境保全計画の考え方
 2.4.1 基礎調査
 2.4.2 汚濁負荷量の予測
―原単位を用いた水需要および負荷量の算出―
 2.4.3 汚濁解析
 2.4.4 汚濁負荷削減計画
2.5 水質環境基準の達成状況
演習問題
3. 上下水道システムの概要と基本計画
3.1 上下水道システムの概要
 3.1.1 水道システムの概要
 3.1.2 下水道システムの概要
3.2 上下水道システムの基本計画
 3.2.1 水道の基本計画
 3.2.2 下水道の基本計画
演習問題
4. 上下水道における水輸送系の設計
4.1 水輸送系の概要
4.2 管路の材質
 4.2.1 上下水道システムに用いられる管種
 4.2.2 鉄系管
 4.2.3 コンクリート管
 4.2.4 樹脂管
4.3 管の施工方法
 4.3.1 開削工法
 4.3.2 推進工法
 4.3.3 シールド工法
 4.3.4 更生工法
4.4 水道システムの水輸送系
 4.4.1 貯水施設
 4.4.2 取水施設
 4.4.3 導水施設
 4.4.4 送配水施設
 4.4.5 給水装置
4.5 下水道システムの水輸送系
 4.5.1 下水道の水輸送系の概要
 4.5.2 管きょ
 4.5.3 ポンプ場施設
演習問題
5. 水処理システム
5.1 水処理システムの基礎
 5.1.1 水処理システムの基本構成
 5.1.2 水処理単位操作の基礎
5.2 物理化学的プロセスの基礎
 5.2.1 沈殿
 5.2.2 凝集
 5.2.3 ろ材ろ過
 5.2.4 塩素処理
 5.2.5 オゾン処理
 5.2.6 活性炭吸着
 5.2.7 膜ろ過
 5.2.8 脱水
5.3 生物反応装置の基礎
 5.3.1 微生物反応装置の設計
 5.3.2 浮遊微生物法の基礎
 5.3.3 生物膜法の概要
演習問題
6. 水処理のシステム構成
6.1 浄水処理
 6.1.1 浄水方法の種類
 6.1.2 着水井と浄水池
 6.1.3 緩速ろ過方式
 6.1.4 急速ろ過方式
 6.1.5 高度浄水処理(オゾン+粒状活性炭)
 6.1.6 膜ろ過方式
 6.1.7 紫外線処理
 6.1.8 海水淡水化
6.2 下水処理
 6.2.1 下水処理の基本的な仕組み
 6.2.2 下水処理法の種類と概要
 6.2.3 活性汚泥法
 6.2.4 生物膜法
6.3 汚泥処理
 6.3.1 汚泥の分類と発生量
 6.3.2 汚泥処理の代表的フロー
 6.3.3 汚泥濃縮
 6.3.4 嫌気性消化
 6.3.5 汚泥脱水
 6.3.6 汚泥焼却
 6.3.7 汚泥の有効利用
6.4 水再利用
 6.4.1 水再利用の概要
 6.4.2 再生水の水質基準
 6.4.3 水再利用の処理システム
6.5 分散型排水処理システム(浄化槽)
 6.5.1 分散型排水処理システムの概要
 6.5.2 浄化槽の種類
 6.5.3 浄化槽の処理システム
6.6 工場排水処理
 6.6.1 工場排水の質と処理対象物質
 6.6.2 重金属排水の処理の概要
演習問題
引用・参考文献
演習問題解答
索引

ISBN:9784339056440
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:232ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TQ