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詳解 流れの数値計算

有限要素法による非圧縮性流体解析の基礎

著:河野 晴彦

紙版

内容紹介

本書は,主に移流拡散問題や非圧縮性流れの解法として用いられる差分法と有限要素法の基礎について解説したものである。差分法については1章(拡散方程式,移流方程式,移流拡散方程式),有限要素法については2~4章(移流拡散方程式およびNavier–Stokes方程式)で解説している。有限要素法は,差分法や有限体積法と比べて流れの解法として採用されることは少ないが,複雑な形状を有する物体との連成解析等で有用性が高く,その十分な理解は多くの研究分野で役立つはずである。

上記の内容に沿った書籍は既に数多く出版されているが,本書のこだわりは書名に含まれる「詳解」に集約される。本書では,基礎的な内容に限定するかわりに,250頁程度にわたって,それらの内容について深く詳細に解説した。著者は,他の人が書いた本を読む際に,一つでも説明不足のために腑に落ちない箇所があると先を読みたくない性格なので,せめて自分が書いた本ではそうならないように,すべての式の導出を明確に示した。初学者でも大学の初等数学の知識さえ備わっていれば本書の内容を十分に理解できると思うので,著者と同じような傾向がある読者の方にはぜひおすすめしたい。また,著者は20年以上,有限要素法を使って研究を行っているが,その過程で発見した他書には載っていないような内容や,著者が考案した手法も含めている。そのため本書は,有限要素法に習熟している研究者の方々にも,少なくない「新たな気づき」を提供しうるものとなっていることを期待している。

読者の皆様には,できれば実際に手を動かして,掲載されている式を一つひとつ確かめながら本書をお読みいただきたい。「自分が学生だったときに,こんな本に出会えていたら嬉しかった」と思えるような本を世に送り出すことを目指して本書を執筆したので,読後に「なかなかいい本だったな」と思っていただければ望外の喜びである。

目次

1. 離散化手法の基礎
1.11 次元拡散方程式の差分法による離散化
 1.1.1 離散化式の導出
 1.1.2 陽解法を適用する場合の解の安定性
 1.1.3 陰解法を適用する場合の解の安定性
 1.1.4 陰解法を適用して数値解を求める手順
1.2 1次元移流方程式の差分法による離散化
 1.2.1 離散化式の導出
 1.2.2 中心差分を適用する場合の解の安定性
 1.2.3 風上差分を適用する場合の解の安定性
1.3 1次元移流拡散方程式の差分法による離散化
 1.3.1 離散化式の導出
 1.3.2 陽解法を適用する場合の解の安定性
1.4 高次精度時間進行法
 1.4.1 Crank-Nicolson法による離散化式の導出
 1.4.2 Crank-Nicolson法に基づく陽的反復法
 1.4.3 1次元拡散方程式への適用
 1.4.4 1次元移流方程式への適用
1.5 1章のまとめ
2. 有限要素法による流れ解析の基礎(1次元)
2.1 重み付き残差法に基づく弱形式の導出
2.2 区分線形補間を適用した定式化
 2.2.1 区分線形補間および離散化式の導出
 2.2.2 行列方程式の形成
 2.2.3 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 2.2.4 質量行列の集中化
 2.2.5 節点平均と集中化質量行列を用いる離散化との関係
 2.2.6 差分法と有限要素法により導かれる離散化式の比較
2.3 区分2次補間を適用した定式化
 2.3.1 区分2次補間および離散化式の導出
 2.3.2 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 2.3.3 行列方程式の形成および質量行列の集中化
2.4 Neumann境界条件を含む場合の離散化
 2.4.1 重み付き残差法に基づく離散化式の導出
 2.4.2 偏微分方程式と等価な積分方程式に基づく離散化式の導出
 2.4.3 境界条件を離散化して解く方法
2.5 周期境界条件を適用する場合の離散化
2.6 計算領域が2種類の異なる媒質を含む場合の離散化
2.7 2章のまとめ
3. 有限要素法による流れ解析の基礎(2次元)
3.1 重み付き残差法に基づく弱形式の導出
3.2 双1次補間を適用した定式化
 3.2.1 双1次補間
 3.2.2 離散化式の導出
 3.2.3 計算空間における形状関数の導出
 3.2.4 ヤコビアンの定義および計算
 3.2.5 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 3.2.6 計算速度対メモリ使用量
3.3 双2次補間を適用した定式化
 3.3.1 離散化式の導出
 3.3.2 計算空間における形状関数の導出
 3.3.3 ヤコビアンの導出
 3.3.4 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
3.4 数値積分
3.5 質量行列の集中化
3.6 Neumann境界条件を含む場合の離散化
3.7 3章のまとめ
4. 有限要素法による非圧縮性流れの解法
4.1 基礎方程式
4.2 時間進行法
4.3 有限要素法による運動方程式の離散化
4.4 要素内の積分の簡易計算法
4.5 速度と圧力の同時緩和法
 4.5.1 Jacobi型反復法
 4.5.2 Gauss-Seidel型反復法
 4.5.3 SOR型反復法
4.6 他の計算手法との比較
 4.6.1 SMAC法との比較
 4.6.2 GSMAC法との比較
4.7 数値計算例
 4.7.1 正方形キャビティ内流れ
 4.7.2 2次元円柱まわりの流れ
4.8 4章のまとめ
付録A 離散Fourier変換に関連する諸式の導出
付録B 余弦波の拡散を表す数値解と理論解の比較
付録C 物理空間における4節点四角形要素内の補間について
付録D 9節点四角形要素の形状関数の導出
付録E 非圧縮性流体の基礎方程式の無次元化
付録F 運動方程式の時間に関する離散化式の導出
付録G 運動方程式の離散化に必要な演算法
引用・参考文献
索引

ISBN:9784339046762
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:252ページ
定価:3600円(本体)
発行年月日:2022年01月
発売日:2022年01月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PHD