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機械システムの状態監視と診断技術

編:日本機械学会
編著:井上 剛志
編著:兵藤 行志

紙版

内容紹介

IoT時代が到来し,各種センサが非常に安価になり,大量のデータを取得して扱うことが当たり前となりつつ現在,「機械システムの状態監視と診断技術」に対するニーズや関心,期待が急激に高まってきた。また,状態監視と診断技術は「機械システムを資産として管理する」ための有力なツールとしてもその適用範囲を今後急速かつ広範囲に拡大・発展させていくことがほぼ確実である。

このような背景を踏まえて,本書は「機械システムの状態監視と診断技術」の現時点の主要項目を網羅している。1章では,「機械システムの状態監視と診断のISO概論」を述べ,2章以降では,「振動を用いた大型・高速回転機械の状態監視と診断」「風車発電装置を例にとった軸受の状態監視と診断」,「潤滑剤分析による状態監視と診断」,「赤外線サーモグラフィーを用いた機械の状態監視と診断」,「アコースティック・エミッションを用いた機械の状態監視と診断」,「電動機の電流兆候解析による状態監視と診断」を説明している。どの章においても,特に実用的側面に重点をおき,かつ国内外の規格も参照しつつまとめたものである。

本書は,現時点において機械システムの状態監視と診断技術に対して全く知識や経験がない方や,これから同技術を用いて業務を行う新人・若手技術者の方々にとっては,その技術的な概要を網羅的に学ぶことができる入門書である。そして同時に,機械システムを資産管理する立場の技術者・経営者にとっては,「機械システムの状態監視と診断技術」の概要を俯瞰して押さえ,資産管理的な観点で視野を広げ,適用を考えるのに適した実用書でもある。

本書を通して,国内のさまざまな立場の技術者・経営者の方々が「機械システムの状態監視と診断技術」を身近な技術として慣れ親しみ,このIoT 時代において本書がこれらの技術の活用・普及のさらなる一助となることを期待する。

目次

1.機械システムの状態監視と診断に関するISO概論
1.1 はじめに
1.2 ISO組織
1.3 日本におけるISOの対応・検討
1.4 機械の状態監視と診断とは
1.5 機械システムの状態監視と診断に関するISO規格
 1.5.1 性能データによる機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.2 振動を用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.3 トライボロジーを用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.4 赤外線熱画像を用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.5 AEを用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.6 超音波を用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
 1.5.7 電気兆候解析を用いた機械の状態監視と診断のISO規格概要
1.6 機械システムの診断と予測技術に関するISO規格
 1.6.1 診断技術に関するISO規格概要
 1.6.2 予測に関するISO規格概要
1.7 特定機器の診断技術のISO規格
 1.7.1 風力発電設備の診断技術のISO規格概要
 1.7.2 水力発電設備の診断技術のISO規格概要
1.8 機械の状態監視と診断技術者認証
 1.8.1 機械の状態監視と診断技術者認証に関するISO規格概要
 1.8.2 日本における機械の状態監視と診断技術者認証
1.9 おわりに
引用・参考文献

2.大型高速回転系の状態監視と振動診断
2.1 はじめに
2.2 振動測定パラメータ(変位,速度,加速度)
2.3 アメリカ石油協会(API)規格と変位センサの原理
 2.3.1 アメリカ石油協会(API)規格
 2.3.2 渦電流式変位センサ
2.4 ISO規格
 2.4.1 機械振動の測定と評価に関するISO規格
 2.4.2 ISO7919(軸振動の測定と評価)
 2.4.3 ISO10816(ケーシング振動の測定と評価)
 2.4.4 振動測定方法の選定
2.5 代表的な振動解析法
 2.5.1 時間領域と周波数領域の解析
 2.5.2 空間領域の解析
 2.5.3 位相解析
2.6 グラフ表示
 2.6.1 トレンドグラフ
 2.6.2 オービット
 2.6.3 ポーラ線図
 2.6.4 ボード線図
 2.6.5 スペクトル線図
 2.6.6 ウォーターフォール図とカスケード図
 2.6.7 フルスペクトル線図
 2.6.8 S-V線図
 2.6.9 キャンベル線図
2.7 事例紹介
 2.7.1 オイルホワール(ロータキット事例)
 2.7.2 オイルホワール(実際の蒸気タービン事例)
 2.7.3 ラビング(実際の蒸気タービン事例)
 2.7.4 熱曲がり(実際の蒸気タービン事例)
 2.7.5 ミスアライメント(ロータキット事例)
2.8 おわりに
引用・参考文献

3.軸受の状態監視と振動診断(風力発電装置の事例)
3.1 はじめに
3.2 風力発電装置と軸受
 3.2.1 風力発電装置の基本構造
 3.2.2 主軸受
 3.2.3 増速機用軸受
 3.2.4 発電機用軸受
3.3 風力発電装置の状態監視
 3.3.1 風力発電装置用軸受の特徴
 3.3.2 状態監視の導入効果
 3.3.3 状態監視の目的
 3.3.4 振動診断
3.4 軸受の損傷形態
 3.4.1 ピーリング
 3.4.2 フレーキング
 3.4.3 スミアリング
 3.4.4 圧こん
 3.4.5 フレッチング,フォールスブリネリング
 3.4.6 クリープ
 3.4.7 電食
 3.4.8 保持器破損
3.5 転がり軸受の振動と診断技術
 3.5.1 軸受の音響診断
 3.5.2 軸受の損傷と振動進展
 3.5.3 振動の周波数分析による診断
 3.5.4 軸受の特徴周波数
3.6 風力発電装置での状態監視
 3.6.1 風力発電装置の状態監視の難しさと重要性
 3.6.2 発電機の軸受の損傷事例
 3.6.3 状態監視による検出と人間の感覚との比較
3.7 おわりに
引用・参考文献

4.潤滑剤分析による状態監視と診断
4.1 はじめに
 4.1.1 潤滑剤分析の特徴
 4.1.2 潤滑剤分析法の分類
4.2 摩耗粉分析による診断法:フェログラフィ
 4.2.1 フェログラフィの原理
 4.2.2 摩耗粉の形態と潤滑状態
 4.2.3 摩耗粉濃度と状態監視
 4.2.4 フェログラフィの適用事例
4.3 発光分光分析による診断法:SOAP
 4.3.1 SOAPの原理と特徴
 4.3.2 SOAPの適用事例
4.4 コンタミナントの計測による診断法
 4.4.1 コンタミネーション管理の必要性
 4.4.2 コンタミナントの計測方法と汚染度の評価法
 4.4.3 コンタミネーション管理の事例
4.5 潤滑管理の一般的な流れと油サンプリングの留意点
4.6 おわりに
引用・参考文献

5.赤外線サーモグラフィによる状態監視と診断
5.1 はじめに
5.2 赤外線サーモグラフィの原理
5.3 赤外線サーモグラフィ計測の特徴
 5.3.1 赤外線サーモグラフィ計測のメリット
 5.3.2 伝導,対流,放射
 5.3.3 反射,放射,透過
 5.3.4 見かけの温度
5.4 赤外線サーモグラフィを用いた機械システムの状態監視
 5.4.1 効果的な運用のための視点
 5.4.2 劣化モード(発熱モード)
 5.4.3 評価方法
 5.4.4 判読方法
 5.4.5 零負荷時温度と温度上昇分の測定
 5.4.6 管理基準の設定
5.5 状態監視の評価
 5.5.1 絶対評価
 5.5.2 相互評価
 5.5.3 相対評価
5.6 データ取得上の注意点
 5.6.1 測定時の留意点一覧
 5.6.2 測定時の留意点(フォーカス設定)
 5.6.3 測定時の留意点(温度設定)
 5.6.4 判定・評価できるデータ取得(熱画像取得)
 5.6.5 判定・評価できるデータ取得(画像以外の情報)
5.7 事例紹介
 5.7.1 電気系の事例
 5.7.2 機械系の事例
5.8 おわりに
引用・参考文献

6.アコースティックエミッション(AE)による状態監視と診断
6.1 はじめに
6.2 AEの基礎知識
 6.2.1 き裂の進展によるAE
 6.2.2 摩耗の進展によるAE
 6.2.3 AE検査によるき裂発生位置の特定
6.3 AE検査
 6.3.1 AEセンサ
 6.3.2 AE装置
 6.3.3 IoTへの対応
 6.3.4 AEの伝播と減衰
 6.3.5 高温部のAE検査
6.4 転がり軸受の故障診断
6.5 歯車機構の故障診断
6.6 設備の簡易診断例
 6.6.1 エスカレータの診断
 6.6.2 プレス機の診断
 6.6.3 メカニカルシールの診断
 6.6.4 ロボットの診断
 6.6.5 発電用風車の診断
 6.6.6 加工工具の診断
 6.6.7 射出成型機の診断
 6.6.8 製品のき裂有無の診断
 6.6.9 研削加工の診断
 6.6.10 溶接加工の診断
 6.6.11 設備の簡易診断のまとめ
6.7 静止物の簡易診断例
 6.7.1 タンクや配管のき裂診断
 6.7.2 腐食の診断
 6.7.3 放電による破壊の診断
6.8 おわりに
引用・参考文献

7.電動機の電流兆候解析による状態監視と診断
7.1 はじめに
7.2 誘導電動機
 7.2.1 誘導電動機の種類
 7.2.2 誘導電動機の原理
7.3 誘導電動機の基本量と電流信号
 7.3.1 誘導電動機の回転速度とすべり
 7.3.2 極通過周波数
 7.3.3 固定子のスロット通過周波数
 7.3.4 電流信号のスペクトル解析と対数表示
 7.3.5 電流信号の相互作用
7.4 電動機の損傷・故障箇所とMCSA
 7.4.1 回転子バーの損傷
 7.4.2 軸系ミスアライメント
 7.4.3 回転子の静的偏心
 7.4.4 回転子の動的偏心
 7.4.5 固定子の異常
 7.4.6 転がり軸受の異常
 7.4.7 異常の判断基準
7.5 復調電流スペクトルによる異常診断
7.6 電流信号の高調波解析
7.7 おわりに
引用・参考文献

索引

ISBN:9784339046717
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:264ページ
定価:3900円(本体)
発行年月日:2021年06月
発売日:2021年06月03日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:TBC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:KC