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計測・制御セレクションシリーズ 1

次世代医療AI

生体信号を介した人とAIの融合

編:計測自動制御学会
編著:藤原 幸一
編著:久保 孝富

紙版

内容紹介

本書は生体信号を活用する医療AIに焦点を当て,生体信号の生理学的メカニズムから各種の測定機器,生体信号を解析する機械学習技術までをも網羅することを目指しました。さらに,医療AI開発にあたり研究者,開発者が知っておくべきAIの法律面や倫理面,そして実用化または商用化を目指す際のハードルとなる薬事についても解説を加えました。

【本書の構成】
1章で医療AIを概説後,2章では,生体信号発生のメカニズムに関わる生体の構造や機能についてその概要を述べます。われわれの身体がどのように成り立ち,制御されているか,外部の情報をセンシングしているかを理解しておくことは生体信号を解釈する上で必須です。
3章では,代表的な生体計測方法を紹介します。生体信号を測定するための装置の原理や特徴を理解しておくことは,正しい測定を行う上で必須です。生体信号は一般にS/N比の低いノイズだらけの信号であることが多く,例えばEEGは,被験者の体動やまばたきでも大きなアーチファクトが混入してしまいます。そのため,できるだけ正しい測定を行い,質の高い生体信号を記録しておくことが,生体信号を活用する医療AI開発の最初の壁となります。
4章では,生体信号処理の前処理手法を解説します。生体信号は一般にノイズまみれの信号です。そのため,ノイズまみれの信号からいかに欲しい情報を取り出すかが重要で,目的に応じて様々な統計的手法が活用されます。
生体信号から目的とする信号を前処理によって取り出したら,ようやく機械学習によるAI の学習です。5章では,古典的な回帰・識別から深層学習まで,医療AI開発に用いられる機械学習手法について幅広く触れます。
6章では,実際にAI開発に利用される生体信号とその活用例を,臨床例を含めて紹介します。本章を読むと,生体信号を用いるAIがいかに臨床と深く結び付いているかがわかるでしょう。逆にいえば,工学系の研究者にとって,いかに臨床現場に入り込むかが医療AI開発の鍵となることが理解できるはずです。
生体信号を活用する医療AIは発展途上の分野であり,実用化にはまだ時間がかかると思われるものも多いですが,いくつかすでに実用化・商用化されている製品もあります。7章では,そのような例を紹介し,今後の医療AI開発の展望を述べます。
最後の8章は,医療AIに関わる法律や倫理,薬事についての話です。医療AI開発はさまざまな面で社会と深い関わりがあり,いかに良い技術であっても,これらを無視して開発することはできません。法律面においては,医師法のみならず,個人情報保護や製造物責任などの問題があります。また,法律的には問題がなくても,倫理的に社会に受け入れてもらえない場合も想定されます。なにがどこまで許容されるのかは,医療AI開発においてつねに念頭に置いて考えるべき事柄です。また,そもそも開発しようとしているAIが,医療機器に該当するのかしないのかを考えなければ開発に着手することすらできません。8章では,法律や倫理に詳しくない開発者,研究者に向けて,これらの平易な解説を試みました。

目次

1.序論
1.1 医療AIとは?
1.2 本書の構成

2.生体の構造・機能
2.1 神経系
 2.1.1 神経細胞
 2.1.2 静止膜電位と活動電位
 2.1.3 シナプス伝達
 2.1.4 脳神経回路の構造
 2.1.5 脳の機能
2.2 感覚器系
 2.2.1 視覚
 2.2.2 聴覚と平衡覚
 2.2.3 嗅覚と味覚
2.3 筋骨格系
 2.3.1 骨格
 2.3.2 骨格筋
 2.3.3 筋線維の構造
 2.3.4 筋線維の収縮原理と神経シグナルによる制御
 2.3.5 筋収縮の生理学
2.4 循環器系
 2.4.1 循環器系の構成
 2.4.2 心臓の解剖学的構造
 2.4.3 刺激伝導系と心筋の収縮
 2.4.4 循環器系の役割
 2.4.5 循環の調節

3.生体計測
3.1 脳活動
 3.1.1 電気的活動
 3.1.2 脳血流反応
3.2 心電図
3.3 筋電図
3.4 脈波
 3.4.1 光電式容積脈波記録
 3.4.2 心弾動図

4.生体信号処理
4.1 信号処理の基礎
 4.1.1 フーリエ解析
 4.1.2 ウェーブレット解析
4.2 行列分解
 4.2.1 主成分分析
 4.2.2 独立成分分析
 4.2.3 非負値行列因子分解
4.3 生体信号の特徴量

5.生体信号処理に用いられるAI・機械学習
5.1 異常検知
 5.1.1 多変量統計的プロセス管理(MSPC)
 5.1.2 自己符号化器
5.2 クラスタリング
 5.2.1 階層的クラスタリング
 5.2.2 k平均法
 5.2.3 混合ガウス分布モデル
5.3 分類
 5.3.1 最近傍法とk近傍法
 5.3.2 ベイズの識別規則と線形判別分析法
 5.3.3 ロジスティック回帰
 5.3.4 サポートベクタマシン
 5.3.5 決定木とランダムフォレスト
5.4 回帰
 5.4.1 線形回帰
 5.4.2 サポートベクタ回帰
 5.4.3 k近傍法とカーネル回帰
 5.4.4 ガウス過程回帰
5.5 因果推論
 5.5.1 グレンジャー因果性
 5.5.2 LiNGAM
5.6 深層学習
 5.6.1 フィードフォワードニューラルネットワーク
 5.6.2 普遍性定理
 5.6.3 誤差逆伝搬法
 5.6.4 畳み込みニューラルネットワーク:画像データの処理
 5.6.5 再帰型ニューラルネットワーク:時系列データの処理
 5.6.6 その他の話題

6.生体信号を用いた医療AI技術開発
6.1 脳活動
 6.1.1 脳機能画像を用いた精神疾患の診断と層別化
 6.1.2 ブレイン-マシンインタフェース(BMI)
6.2 心拍変動
 6.2.1 自律神経系
 6.2.2 心拍変動解析
 6.2.3 時間領域指標
 6.2.4 周波数領域指標
 6.2.5 脈波のHRV解析への利用
 6.2.6 自律神経系の機能検査法
 6.2.7 HRVによるてんかん発作予知
 6.2.8 臨床データへの適用結果
6.3 筋電位信号
 6.3.1 運動単位:筋線維群とα運動ニューロン
 6.3.2 筋電位信号とは
 6.3.3 表面筋電図の計測方法
 6.3.4 筋電位信号の応用事例

7.実社会への実装および今後の展望
7.1 社会実装例
 7.1.1 心電図または心音を用いるAIデバイス
 7.1.2 胸部聴診音や呼吸音を用いるAIデバイス
 7.1.3 その他のバイタルサインを用いるデバイス
 7.1.4 画像診断
7.2 今後の展望

8.医療AIの法律・倫理・薬事
8.1 医療AI開発者にとっての法律の意義
 8.1.1 法的規制の大枠
 8.1.2 事例検討
8.2 医療AIの法律と倫理
 8.2.1 AIの倫理
 8.2.2 医療・医学研究の倫理
 8.2.3 倫理にどのように対応すればよいのか
8.3 医療AIと薬事
 8.3.1 医療AIの医療機器該当性について
 8.3.2 薬事規制から見た医療AI開発
 8.3.3 AI医療機器に治験は必要か不要か?

引用・参考文献
索引

ISBN:9784339033816
出版社:コロナ社
判型:A5
ページ数:272ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2021年07月
発売日:2021年06月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MB